第24話依頼をこなそう


「・・・モジャモジャ」


「クルルッ」

「ボァッ」


「あぁ、ありがとうな。・・・ちょっと嫌なことがあってな」


モジャモジャというあだ名を回避しようと、身だしなみを整えたけど既にあだ名が定着していた。

エイスとボーズが、俺を慰めようと頭を押し付けてくる・・・二匹の優しさが染みる。

そして、籠手のゴリラの彫刻が呆れた顔してるのが小憎たらしい。お前も慰めろよ!

ていうか、たまには籠手から出てこいよ。寂しいじゃんか。


「・・・はぁ。とりあえず、依頼やっていくか」


「クルッ!」

「ボァッ!」


今俺たちは、依頼の為にアルド付近の草原に出ている。

とりあえずブロンズでも受けれて、尚且つ食べれそうな魔物の討伐依頼を受けてきた。

今回は、サヴァナウルフとサヴァナラビットだね。

兎はまだ食べたことないし、狼は神話の森の狼を食べ比べが楽しみだ。森と草原じゃ食べてるものが違うだろうし、味にもその変化が出てるんだろうなぁ。


「おっ、気配を感じるな。エイス、ボーズ。気をつけろよ」


「クルルゥ!」

「ボッ!」


腰元まで草が生えてるエリアはまで進むと、ようやく魔物の気配を感じ取ることができた。

なるほどな。気配で大体どこに潜んでるか分かるけど、草が茂み過ぎて姿はまったく視認できない。


・・・おっ。数匹、こっちに向かってきてるな。


「ガァッ!!」


「遅いっ!」


「キャゥンッ!?」


茂みから飛びかかってきた狼を避け、その横っ腹を殴り飛ばす。


「エイス、ボーズ。誰が一番多く狩れるか競争な!」


「クルルッ!」

「ボァッ!」


大変元気な返事でよろしい。

さて、ここの狼はどうやら小振りみたいだから、いっぱい狩らないと腹の足しにならないな。頑張るかー。




「ふっ!ほっ!ハッ!」


「ギャウンッ!」

「キャィンッ!」

「ギャッン!」


「ふぅ、こんなもんかな?」


倒した狼を指輪に収納しつつ、俺は一息つく。

大体、一時間くらい狩ったかな?三十匹くらいは肉を確保出来たし・・・まぁまぁかな?

最初の方は、向こうから威勢良く襲い掛かってきてくれたから楽だったんだけど、途中から狼が逃げるようになって追いかけっこに苦労したわ。


「ボァァァァア!」


「「ギャゥンッ!!」」


「クルルゥッ!」


「ギャッ・・・!」


「おお、やってんねぇ」


少し離れた位置でボーズが狼を突進で弾き飛ばし、エイスが後ろ蹴りで狼の腹の風穴を開けてる。

・・・はしゃいでるねぇ。ストレス溜まってたのかな?定期的に討伐依頼受けて、走り回れる機会を作ってやらないとな。


「おーい、そろそろ切り上げるぞー!狼持ってこーい」


「クルッ!」

「ボァッ!」


ウチの子たちは、今日も素直だわ。




・・・




「それでは・・・結果発表しまぁーっす!」


「クルックルッ!」

「ボッボッ!」


「エイス十八匹!ボーズ二十三匹!俺五十伍匹!俺の優勝っ!!」


「・・・クルルゥ!」

「・・・ボァァ!」


両腕を上げて勝ち誇る俺に対して、エイスとボーズが不満の声をあげる。

二匹の言い分は分かる。小さい状態じゃ、本来の実力出せないもんな。


「だが、しかし!俺の勝ちだぁー!」


「クルルルル!」

「ボァァァァ!」


二匹が俺の脛に体当たりして抗議してくる。はっはっはっ、効かぬわ!

っておまっ、通常サイズに戻るのはんそ・・・ヌワァーッ!!




「さて、次は兎だな」


「クルッ!」

「ボァッ!」


次はお待ちかねの兎だ。俺的には、兎が一番楽しみだったりする。

やっぱり食べたことない種類ってさ、食欲そそられるよね。


「・・・あの兎で合ってんのか?」


兎自体は、すぐに見つけることが出来た。・・・出来たんだけど。


「ピッ?」


「・・・で、でけぇ!」


エイスやボーズ程じゃないけど、三メートルはあるんじゃないか・・・?

てっきり少し大きいぐらいの兎を想像してた分、その衝撃は大きいわ。


「とりあえず、狩るか」


「ピッ!?」


「あっ、逃げた!」


くそっ、アイツ耳が良いな。結構距離があったのに、俺らの声が聞こえてたみたいだ。

そして、デカい割には速い。どんどん遠くに行ってる。


「エイス、ボーズ!通常サイズに戻って良いぞ!誰があの兎を仕留めるか競争だっ!」


「クルルッ!」

「ボァッ!」


「ピアッ!?ピィィッ!?」


待ってましたとばかりに、巨大化するエイスとボーズ。

うん。やっぱりデカいな。あの兎が豆粒に見えるわ。そして、そんな二匹を見た瞬間、兎の逃げ足がスピードアップしたわ。必死の形相で、逃げる姿が痛々しい・・・

まっ、食べるんですけどね。


「よっしゃ!行くぞ!よーい・・・ドンっ!!」


「クルァァアッ!!」

「ボァァァア!!」


全力疾走で兎を追いかける俺とエイスにボーズ。

うぉぉ、やっぱり本来の姿だと二匹とも速いなー!着いて行くのがやっとだわ。

だが、俺も易々とは負けん!


「うおおおおおっ!!」


「クルルルルルル!!」

「ボアアアアア!!」


「「ギャィンッ!?」」


くっ!ここにきて更にスピードを上げるだと!

なんか数匹、魔物を跳ねた気がするけど気にしない。負けられない戦いが、ここにはあるんだ。燃やせ!命を燃やすんだっ!!


「ふんぬぁぁああああっ!!」


「クゥルゥァァアアアアッ!!」

「ボボボボァァァアア!!」


「ピャアアアアアアア・・・・ヒピャッ!?」


エイスとボーズの体当たりを受けて、天高く舞う兎。

くそっ、負けた。惜しいところまではいったんだが、走りだとあの二匹には分が悪いな。

でも悔しい・・・次は負けん・・・


「クルルッ♪クルルッ♪」

「ボッ♪ボッ♪」


エイスとボーズは俺に勝てたのが嬉しいのか、天に召された哀れな兎の周りをご機嫌にクルクルと回っている。

くそっ、次は絶対負けん!


「他に兎いなさそうだし、帰るか。エイス、ボーズ。帰るぞー」


「クルッ!」

「ボァッ!」


小型化し俺の元へ戻ってくる二匹・・・うん。素直で大変よろしい。


「よし、戻ったら肉を料理してもらおうなー」


宿の女将さんに、頼み込んで今日取れた肉を使ってもらおう。

女将さん料理上手だし、きっと美味く作ってくれそうだ・・・じゅるり。おっと、ヨダレが・・・


戻ろう。早急に戻ろう・・・あっ、その前にギルドに報告か・・・


「よーし、お前ら!アルドまで競争だー!」


「クルルッ♪」

「ボァッ♪」


ふふっ、小型化したお前らには負けぬわっ!








冒険者ギルドにて


「シルスナさんっ!これキングサヴァナラビットですよっ!?」


「・・・はぇっ?」


「ゴールドランクの冒険者が狩るような魔物ですよっ!?」


・・・どうやら、違う魔物を討伐したっぽい。


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