第22話お金をゲット
「ここがアルドか・・・賑わってるなぁ」
「クルゥッ!」
「ボァッ!」
穀物都市アルドに着いた俺は、街を行き交う人の多さに思わず感嘆の声が漏れる。
さすがエスバーの食糧庫って言われるだけのことはあるな。うちの領地より栄えてるわ。
だが今は、そんなことはどうでもいい!
「くぅぅ、この匂いたまらん!」
さすが食糧庫!食事処が多いな!店舗所か屋台もいっぱいあるわ。
どこもかしこも全方向から、食欲をそそる良い匂いがしやがる!今すぐにでも食べたいけど、金がないっ!
「くっ、行くぞエイス、ボーズ」
「・・・クルル」
「・・・ボァボァ」
こんなに良い匂いがしてるのに食べれなくて、心なしかエイスもボーズもしょんぼりしてる。
・・・待ってろよ。すぐに腹いっぱい食わせてやるからな。
「ここが冒険者ギルドか」
うん。看板にエスバー冒険者ギルドアルド支部って書かれてる。
はぇ~、冒険者ギルドって儲かるのかね?中々良い造りしてるわ。子爵邸くらいはあるんじゃないか?とりあえず、中に入ってみるか。おっと、エイスとボーズは一応お外で待っててもらおうかな。
「へぇ、意外と清潔なんだなぁ~」
俺の中の冒険者ギルドって何かこう・・・小汚い酒場みたいで荒くれものが飲んだくれてるってイメージだったんだけどな。ちょっと意外だったわ。
絡まれるのも覚悟してたけど、どうやら俺の偏見だったみたいだな。百聞は一見に如かずってやつだね。
「そこの君。冒険者ギルドに何か用かい?」
「ん?あぁ、冒険者登録しようと思ってな」
何か爽やかそうな冒険者に声をかけられた。・・・歳は俺より少し年上って感じかな?
「なるほどね・・・でも、今は辞めといたほうが良いかな」
「・・・どういう意味だ?」
「まぁまぁ。巻き込まれないようにあっちに行こうか」
「お、おう・・・?」
冒険者に促されるままに、隅のテーブル席に移動する。
とりあえず、流されるまま席に着いたけど・・・全く訳がわからん。
「それで、一体どういうことなんだ?」
「この時間帯は、ちょっと面倒な連中が来るんだよ・・・ほらっ、来た来た」
「面倒なのって・・・あの軍服みたいなの来た連中のことか?ただの領兵じゃん」
五、六人の集団がギルド内に入ってきた。全員同じ制服を着て、統率の取れた行動をしてる。
どこからどう見ても真面目に勤務してる領兵だ。とてもじゃないけど別に面倒そうには見えない。
「いやー、それがアレって冒険者なんだよね」
「へっ?領兵じゃないの?」
「まごうことなき冒険者だよ。ただこの街って少し特殊でな。・・・街に入る時に検問がなかっただろ?」
「あぁ、それは俺も気になってたわ」
俺は街に入る際に、検問どころか門番すらいなかったのを思い出す。
エスバーの食糧庫って言われるくらい重要な拠点なのに、検問がないのってやっぱりおかしいよな。
「おかしいって顔してるな。でもこれには理由があるんだよ。アルドは毎日万単位で出入りしている。そんな人数を、一人一人検問するなんて無理だろ?」
「まぁ、確かにな」
「オマケに検問で時間が掛かれば掛かるほど、経済的に損失が出るときたもんだ。なんでアルドの代表は、検問を廃止したんだよ」
「はぁっ!?それはまた・・・思い切ったな」
「俺もそう思うわ。そこでな、検問を廃止した代わりに都市内の見回りを強化したってわけ」
「・・・それがさっきの連中か?」
「ご名答。さっきの奴らは、通称冒険者警察って言ってな。都市から雇われた冒険者さ。冒険者警察の仕事は、都市内の見回りと不審者・犯罪者の検挙。さっきギルドに来たのは、定期報告ってわけさ」
「なんか聞いてるだけで面倒くさそうだな」
「実際、面倒くさいぞ?アイツら自分の仕事に酔ってるからな。自分の立場を笠に偉ぶってるやつと、ウザいくらいに正義感の強いやつが多くてさ。基本的に関わらない方がいいぜ」
「・・・マジかよ」
何それ、超メンドクサイ。どっちも関わり合いになりたくないな。
あの軍服見かけたら、すぐ逃げるようにするか。イチャモンつけられてもたまんないしね。
「まぁ、そういうこと。おっ、アイツら行ったな。それじゃ、俺も行くわ」
「色々とありがとうな。助かったわ」
「良いってことよ。それじゃあな」
冒険者は冒険者警察がギルドを出ていくのを見届けると、クエストボードの方へ去っていった。
って、名前聞くの忘れてたな。ありがとう名もなき冒険者!
はぁ、冒険者も色々いるんだなぁ。冒険者ってもっとサバサバしてるもんだと思ってたけど、案外貴族みたいにドロドロしてるのかもね。
調味料に釣られて森から降りてきたけど、森でゴリラとエイスにボーズのみんなと暮らしてた方が一番幸せなのかもな。
「・・・今更だな。さっさと登録済ませて、売るもん売るかね」
ついつい憂鬱な気持ちになっちゃったけど、こういう時は気分転換に美味いものを食べるに限るわ。
さっさと受付に行くかね。
「すいませーん。冒険者登録をしたいんですけどー」
「ようこそ、冒険者ギルドアルド支部へ。冒険者登録ですね。ではこちらの書類へ署名をお願いします」
「はいはーい」
俺は受付嬢さんから貰った書類に軽く目を通す。ふむふむ、なるほどね。
要約すると、冒険者稼業は全てが自己責任で依頼中に死んでも知らないよってことね。・・・後は犯罪を犯したら冒険者資格剥奪と、依頼失敗したら罰金ってとこか。
よし、特におかしいことは書いてないな。貴族時代に嫌ってくらい書類を読んだ経験が、ここに活きてるわ。うれしくないけど。
「はい。どうぞ」
「お預かりします・・・シルスナ様ですね。それではギルドカードを発行致しますね。ギルドカードを無くすと、再発行に審査と手数料がかかりますのでお気を付けください」
「わかりました。へぇ、これがギルドカードか」
案外、冒険者登録って簡単なんだな。書類に署名しただけで、終わっちゃったよ。
俺は受け取ったギルドカードをマジマジと眺める。ブロンズに輝くカードには、シルスナって書かれてるだけだ。めっちゃ、シンプル。
「最初は階級が、ブロンズから始まります。一定数の依頼または魔物の討伐をこなすことで、シルバー・ゴールド・プラチナと昇格していきますので、是非とも頑張ってください」
「説明ありがとうね。所でさ、魔物の素材ってもう売れる?」
「えっ?あ、はい。可能ですが・・・何も持っていないようですが・・・」
「あ、本当?それなら買い取ってもらって良いかな?アイテムボックス持ってるから、そこから出すよ」
「わ、わかりました。こちらにご提出お願いします」
「はーい」
よし、売れる!これで、今日の宿代と飯代くらいは何とかなれそうだな。
さて、問題は何を売るかだな。魔物のだったら何でも売れるのかな?とりあえず、適当に少しずつ出してみるか。
「コレとコレで」
「かしこまり・・・ヒッ!こ、これはっ、キングボアの牙っ!?それにこっちはスナイバードの羽っ!?」
「どうかしました?」
「おい、今キングボアって言わなかったか!?」
「一匹だけで村を滅ぼせるっていうあの・・・」
「スナイバードも聞こえたぞ」
「おいおい、ウソだろ。あの音速の殺し屋に勝てるやつなんて」
受付嬢さんの大きな声が聞こえたのか、周りにいた冒険者たちが何やら騒いでる。
キングボアって・・・あの森深部の最底辺のあのクマのことか?あいつ、そんな御大層な名前だったんか・・・。細長い鳥は、なんとなく分かる気がするな。あの鳥、絶好のタイミングで突っ込んでくるしな。まさにスナイパーだわ。
「さ、査定しますので、少々お待ちを」
「あ、はい」
受付嬢さん、奥に引っ込んで行っちゃった。何か震えてたけど風邪かな?
「おい、あのモジャモジャそんなに強いならうちのパーティーに・・・」
「まだ辞めとけ。アイツが狩ったと決まったわけじゃないだろ?」
「あの指輪ってアイテムボックスだよな。しかも高価な・・・あのモジャモジャ何者だ?」
「あのモジャモジャは、今後要チェックだな」
・・・もしかしてモジャモジャって俺のことか?
アイツら失礼だなって思ったけど、確かに俺モジャモジャだわ。髪のことを言ってるのか、眉なのか髭なのかどれのことを言ってるか分からんくらいモジャモジャだったわ・・・
流石にあだ名がモジャモジャは嫌だし、宿取れたら身だしなみを整えるかな。あっ、受付嬢さん戻ってきたな。
「お待たせ致しました。キングボアの爪が五点で金貨十枚、スナイバードの羽が金貨五枚。合計金貨十五枚で買い取らせて頂きます」
「えっ、そんなにっ!?」
めっちゃ高く売れた!金貨十五枚ってうちの領だと、平民一家が一ヶ月過ごすのに必要なお金が銀貨十枚なんだが・・・
思わぬ高値に、周囲の冒険者も俺もざわつく。
「こちらが金貨十五枚ですね。どうぞお受け取りください」
「あっ、はい」
うわー、本当に金貨十五枚貰っちゃったよ。冒険者って儲かるんだなぁ。あんな弱いクマの爪一本が、金貨二枚だよ?
そもそも爪なんて何に使うんだ?硬いだけで武器にも防具にも使えないと思うけど・・・
まぁ、売れるなら何でもいっか。っていうか、まだまだ在庫一杯あるんだけどそれも買い取ってくれるのかな?いや、いきなりたくさん売っても値崩れしそうだしな、ちょい出しで売っていくか。
何にせよこれで念願の金が手に入ったな。
これだけあれば、俺もみんなもいっぱい食べれるな。・・・うへへ。ヨダレが。
「あのギルドマスターが是非お会いしたい・・・」
「ありがとうございましたっー!」
「あっ、ちょっとあのっ!?」
受付嬢さんが何か言いかけてたけど、まぁいいか。今は飯だっ!
俺らで、アルドの屋台全制覇してやんよっ!!
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