第19話神話の森最深部 旅立ちの準備


「そろそろエスバー共和国に行こうと思う」


「クルゥ?」

「ボァ?」

「ウホホ?」


夕食中、俺は森を出る提案をする。

ちなみに俺の夕飯は、オークの丸焼きだ。もちろん、タダの丸焼きじゃない。塩で味付けされたオークの丸焼きだ!


ゴリラを倒してから更に半年、俺は三匹と共にこの森で悠々自適に過ごした。

その中でレーヤ達見たいな冒険者を数人助けては、そのお礼代わりに調味料を分けてもらっていた。久しぶりの調味料の美味さは・・・破壊力充分だった。

そして初めての味付けした肉に、猪も鹿も衝撃を受けていた。ゴリラは・・・あいつあんな筋肉モリモリの癖に木の実や果物しか食べないんだよね。なんで木の実に貰ったシロップをかけてやったら、その甘さに涙を流して喜んでた。


「実は・・・調味料がもうない」


「クルルッ!?」

「ボアッ!?」

「ウホッ!?」


絶望したような表情を見せる三匹。そう、俺らはもう戻れないんだよ。調味料なしの生活にな。

現状、俺らが調味料をゲットするには、森で困ってる冒険者を助けてお礼として分けてもらうしかない。しかも、その冒険者が調味料を持ってるとも限らない。

それなら、いっそのこと街に行って買った方が良くね?という結論に達した。


「みんなには、神器か小さくなってもらうことになるけど大丈夫か?」


「クルル!」

「ボア!」

「ウホッ!」


良かった。三匹とも問題なさそうだ。ちなみになんとエイスとボーズも神獣だった。神獣だったというよりも、成ったと言ったほうが正しいのかな?

ビックリしたよ。力比べ中にいきなり変身するんだもん。エイスはサファイヤのピアスで、ボーズはルビーのネックレスだった。最近のことだからエイスとボーズの神器に、どのような能力があるのかは全くわからない。


そして神獣に成った影響か、エイスとボーズは体の大きさを自由に変えることが出来るようになった。

最小で子犬サイズまで小さくなれる。これは正直ありがたい。あの二匹でかいからね。あの大きさで街に行ったら・・・考えただけで恐ろしいわ。


ちなみにゴリラは、あのサイズで最小らしい。興味本位で元のサイズを見せてくれと、せがんで見たけどあれはすごかった。もうね。エイスとボーズが子犬に見えるくらい大きかったわ。

・・・あいつもしかして格の高い神獣なんじゃ?いや、それはないか。格の高い神獣は、ケツを掻きながらバナナ食べない。俺の気のせいだろうな。


「そうと決まったら、明日は当分の食糧を確保しないとな。俺は魔物の巣を漁るから、お前らは肉の確保を任せたわ」


「ウホッ!」

「クルルゥ!」

「ボァ!」


森を出る以上、当分は戻ってこないだろうし、悔いのないようにしとかないとな。食べ物の回収はあいつらに任せて、俺は物資方面の補充に回ることにした。

それに魔物の巣も、割と掘り出し物があったりするから侮れない。魔剣やミスリルを見つけた時は、変な声でたよ。まぁ、ゴリラ籠手があるから魔剣なんて使わないし、ミスリルに至っては使い方すらわからないんだけどね。街に着いたら売り払って、腹の足しにでもしようかな。


「問題は俺の身なりなんだよなぁ」


顔が隠れる程伸びたボサボサの髪に、これまた口が隠れるほど生えた髭。おまけにノーパンで熊皮の腰巻と羽織りと来たもんだ。完全に山賊ですわ。

これで神器を装備したら・・・うん。山賊が奪った貴金属付けてるみたいになるな。

うーん。こればっかりはな~、街で買うしかないもんなぁ。


「まぁ、なるようになるか。明日から頑張るぞ!エイス、ボーズ、ゴリラ!」


「クルルルッ!」

「ボァッ!」

「ウホウホッ!」





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る