第32話キラービー②


「へぇ、シルスナさんシルバーランクなんだ・・・俺らとあんまり変わらないのにすげぇ・・・」

「だねぇ。俺たちも頑張らないと」

「ゴブリン達にやられそうになった私たちとは、雲泥の差よねぇ・・・」


「「・・・うっ!」」


「まぁまぁ、アンバーもそうイジメてやるなよ」


「だってぇ!私はこの森はまだ実力的に無理って何度も言ったのに・・・お金になるからって無理やり・・・」


「「・・・うぅっ!!」」


「ははは、そりゃ責められても仕方ないわなぁ」


「「そんなぁ~」」


「当たり前よっ!」


ご立腹のアンバーに、項垂れるダーツとロケ。

結局、俺はこの三人組の冒険者パーティー『揺るぎない光』と一緒に行くことにした。

これも何かの縁だし、一期一会って言うしね。


「それにしても、シルスナさん。どうやってシルバーランクに昇格したんですか?」

「しかもソロで!」


「あー、ずっとデカ兎・・・キングサヴァナラビットだっけ?あれを納品してたら、いつの間にか昇格したなぁ」


「「「キングサヴァナラビットっ!?」」」


いちいちリアクションがデカいなこいつら。

でも、不思議と嫌な気分はしないんだよなぁ。

・・・よくよく考えると国を追放されてから、こんな大人数で和気あいあいとお喋りした記憶がないな。


あー、俺楽しんでるのか。そっかそっか。


「・・・おい、キングサヴァナラビットってあの幻の魔物だよな?」

「ゴールドランク対象だぞ・・・」

「・・・シルスナさん、実は私たちが思っている以上にすごい・・・?」


このヒソヒソと会話してる三人組は、俺よりも二つ年下の十六歳だった。

何でも幼馴染同士でアルド付近の寂れた農村に住んでたけど、一念発起して冒険者デビューしたそうな。

喜び勇んで冒険者になったものの上手くいかず、低報酬の依頼をこなして細々と暮らしてるのが現状らしい。

世の中って世知辛いね。




・・・ブゥゥゥゥウン、ブゥゥゥウンッ




んん?遠くから微かに虫の羽音が聞こえるな。

果物よりも蜂の方を先に引いたか?何によ、音がする方に行ってみるかな。




「なぁ、キラービーってあれのことか?」


音のする方へ行った結果、三十センチ大の蜂が無数に羽ばたいている場所に着いた。

・・・これがキラービーなのか?キラーなんて御大層な名前が着いてる割には、小さい気がする。


「き、きき、キラービーだぁ・・・でっかい・・・」


「えっ!?」


えっ?デカい・・・あれが・・・?

あんなサイズの虫なんて、神話の森だと極小サイズも良いとこだよ。


「しかもキラービーの巣まで・・・逃げようぜシルスナさん!数が多すぎるっ!!」


「・・・えぇっ?」


・・・そんなに多いか?たかが四、五十匹くらいじゃん。


「・・・ブクブクブク」


「・・・えぇぇ~」


アンバーに至っては、泡吹いて気絶してしまった。

まぁ、女の子は虫が苦手だからね・・・俺も女の子に虫の肉食べさせて、怒らせたことあるから・・・女の子に虫は厳禁、ダメ、絶対。


それにしても、あのサイズがでかいのか・・・

神話の森って、もしかして結構ヤバいとこだったりするのか・・・?


「まっ、とりあえず狩るか。お前らは、その辺で適当に隠れてな。エイス、ボーズ。三人を守ってやってくれ」


「「そ、そんなシルスナさんっ!」」


俺は二人の制止を無視して、蜂の巣に向かって歩き出す。

なぜなら、もう既に俺の目は蜂の巣にロックオンしているからだ。

蜂の巣ってことは・・・蜂蜜があるってことだろ・・・?


普通の蜂蜜でさえ高級品なのに・・・魔物の蜂蜜って・・・どれだけ美味いんだ・・・ジュルリッ。あっ、やべ。ヨダレでた。


「「「「カチカチカチカチカチ」」」」


俺が蜂の巣に近づくにしたがって、蜂どもがアゴをカチカチ言わせてくる。

多分あれだ、これ以上近付くな的な警告みたいなもんなんだろうな。

まっ、それでも進むんですけどねー。


「「キシャー!!」」


「よっ!ほっ!」


「「キシャッ!?」」


「んー、ゴブリン以上オーク未満ってとこかなぁ・・・?」


襲い掛かってくる蜂を次々に打ち落とす。

ははっ、向こうから来てくれるから、こりゃ倒しやすいな。


「キシャー!」


「ほっ!」


「キシャー!」


「ほいっ!」


・・・何だかリズムゲームやってるみたいで楽しくなってきたぞ。


「す、すげぇ・・・」

「あのキラービーがあんなに簡単に・・・」


木陰からダーツとロケの声が聞こえてくる。

そんなに驚くことなのかな?シルバーランクレベルの魔物だし、他のシルバーやゴールドの冒険者でも普通に狩れるんじゃないか?


「ギジャアアアアッ!!」


「おぉっ?」


向かってくる蜂をあらかた叩き落したら、一回り・・・いや二回りほど大きい蜂がやってきた。それでも一メートル程度の大きななんだけどね。

しかし、何かめちゃくちゃ怒ってる。この蜂の群れのボスかな?


「き、キラークィーンビーだっ!」

「し、しし、シルスナさん逃げ・・・」


「ギジョァァァアアアアッ!!!?」


俺は瞬時に蜂の懐へと入り込み、その腹へボディブロウをかます。

蜂は絶叫を上げながら吹き飛び、木に激突した後動かなくなった。


「・・・えっ?何か言った?」


「「・・・はぇっ?」」


俺は蜂を殴り終えた後、二人の方へと振り返る。

・・・さっき声かけられたような気がしたけど、気のせいか?


「今ので倒したみたいだな・・・さって、お目当ての巣はどうかな?」


でっかい蜂を指輪で収納し、俺は意気揚々と蜂の巣へと向かう。

大本命の蜂の巣、蜂蜜あるといいなぁ・・・


「・・・えっ?キラークィーンビー・・・えっ?」

「あれってゴールドランク対象の魔物じゃ・・・えっ?」


さっきからダーツとロケが呆けた顔してるけど、大丈夫か?

見た感じケガはしてなさそうだけど・・・まぁ、いいや。今は蜂蜜だ蜂蜜。


「それじゃ、御開帳っと・・・おおおおおっ!」


蜂の巣を無理やり真っ二つにこじ開けると、そこには黄金色の蜜と幼虫が・・・


「やったあああああ!蜂蜜だぁぁぁああっ!!」


「クルックルッ♪」

「ボァッ♪」

「ウホッ♪ウホッ♪」


俺はあまりの嬉しさに、歓喜の舞を踊る。

エイスとボーズにも俺の喜びが伝わったのか、一緒になって踊ってくれる。

後ゴリラ、お前は引っ込んでろ!今出てくると紛らわしいことになるだろっ!!


「・・・ウホッ」


シュンッとした表情で、籠手に戻るゴリラ。

・・・ちゃんと後で蜂蜜あげるから、そうしょげるなよ。甘党なゴリラが、一番喜んでるのはちゃんと分かってるからさ。


「よし、蜂蜜は回収だ・・・幼虫も・・・回収だっ!」


俺は蜂蜜を指輪で一滴残らず回収する。こういう時、アイテムボックスって便利よな。瓶とかなくても回収できちゃうんだもん。


ついでに、蜂の巣の中にいた幼虫も回収する。俺の経験上、ワーム系は・・・美味い!きっとこの真っ白でプヨプヨした幼虫も、美味いに違いない!


「あー、この小さい蜂は・・・一応、回収するか」


小さいけど食べれるとこあるかもしれないしな。うん。一応、回収するだけしとくか。ギルドに提出しないといけない部位もわからんし。


「さて、後はリンゴと梨だな!案内頼めるか?」


「は、はいっ!」

「お、俺たちでよろしければっ!」


「 ?まぁ、よろしく頼むわ」


ダーツはともかく、ロケが敬語になってる。それに二人とも神妙な顔してるけど、どうしたんだ?



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