北川 舞 先輩からの依頼その5
Side 谷村 亮太郎
=翌日・朝・日本関東某所・DーTECの本拠地=
大分長い距離を移動した。
場所は関東の首都圏の近く。
山中。
そこに巨大な悪の秘密基地を見つけた。
文字通り軍隊を引っ張り出さないと手に負えない規模のだ。
施設全体を薄い膜で覆われており、その膜が基地の全貌を隠す光学迷彩として機能している。
現代日本で、まさかこれ程までに巨大な悪の組織が活動している事に僕は驚きを隠せなかった。
☆
Side 藤崎 シノブ
=朝・D・TEC基地=
現在自分達はDーTEC本部の周辺で待機している。
遠目から見れば何の変哲もない山中。
そこで谷村さんから情報を共有している最中だ。
DーTEC。
想像以上の大規模組織らしい。
北川さんは一旦上の方に指示を仰ぎに席を外している。
傍には闇乃 影司がいた。
今迄ミサキ・ブレーデルと言う金髪爆乳のディフェンダーのエージェントの相手をしていたらしい。
「昨日みたいに戦闘ロボットが沢山出て来る感じかな?」
と、影司が言う。
「そう考えるのが普通かな?」
俺はそう返した。
D-TECの主戦力は戦闘ロボット軍団だ。
一体一体は大したことないが、時間を掛ければ手が付けられなくなる規模になる恐れがある。
それに戦闘ロボットを有するだけのテクノロジーを持つ相手だ。
核爆弾を密造している可能性も視野に入れてておいた方がいいだろう。
核兵器は地球最強最悪の兵器だが、原理その物は半世紀以上前のものだ。
暴論すれば材料と金と頭脳さえあればどんな国でも作れる代物である。
「まあ、放っておくわけにも行かないし――何かやらかす前に叩き潰すのがベストかな?」
谷村さん――の分身体からそう言われる。
本物の谷村さんは現在、施設の内部に潜入している頃だろう。
妨害電波が出てスマホなどは使えないが、魔力的な妨害はないので、内部に突入した谷村さんと念話でやり取りしている最中だ。
「それにここまで来たんだ。早くしないと、何かしらの報復が来る可能性もある」
「その報復を仕掛けられる前にかたをつけろと――」
谷村さんの言葉に俺はそう返した。
などと思っていると複数の気配が。
どうやら気づかれたらしい。
周囲を警戒していたディフェンダーの人間も察知したのか戦闘配置につき始めた。
すると出る出るわ。
警備用のドローンや重火器で武装したロボット兵士。
空から、地上から昭和の特撮物に出て来そうなロボット戦士軍団。
闇乃 影司と谷村さん、俺とで斬り込む。
激しい乱闘が幕を開けた。
☆
Side 谷村 亮太郎
=DーTEC・本拠地内部・格納庫=
施設内が騒がしい。
外にいる藤崎君達は見つかったようだ。
格納庫には多数の戦闘ロボットが配備されていた。
デザインが昭和の悪の組織の怪人染みているのもポイントだ。
ふと飛行型の黒いエイのようなロボット達に目が行った。
興味を持った僕は鑑定を行い、どう言う用途で使われるのかを探る。
(なになに? 飛行能力にステルス能力? 首都爆撃用ロボット?)
戦闘ロボットで首都を爆撃するために製造したらしい。
昭和の悪の組織って感じだ。
ともかく放置するワケにもいかない。
サクッと破壊しよう。
☆
=D-TEC・本拠地内部=
ディフェンダーの戦闘要員や影司君と一緒に内部へ突入。
影司君は徒手空拳でロボットを破壊し、谷村さん――偽物だが――は双剣で斬り倒し、俺も剣で次々と敵ロボットを破壊していく。
谷村さんは現在、格納庫でひと暴れしているらしい。
なんでも首都爆撃用の戦闘ロボットを破壊するためだとかなんとか。
『順調に進んでいるようだね――』
通信機から北川さんの声がした。
『出来ればD-TECの総帥は生きたまま捕えたい』
「それがディフェンダーの方針ですか?」
『正確にはより上の方の方針だけど。ロボット工学は欲しいらしい』
との事だ。
ディフェンダー基準でもD-TECのロボット工学は貴重だそうだ。
(まあ出来たらでいいか)
などと考えていたら最深部に到達した。
そこで何時の間にか本物と入れ替わっていた谷村さんと合流する。
「いや~とうとう最深部だね」
「まあ駆け足でしたけど」
「うん。そうだね」
そして俺達は最深部。
D-TECの総統と対面する。
いたのは玉座に座る黒いロボットだった。
脳みそが頭の上半分を占めていて、赤い大きな双眼が光っている。
胴体は昭和のヒーローのように感じた。
白いグローブにブーツ、銀色のバックルベルト、赤いマントを羽織っている。
『ほう、ここまでよく来たものだ』
「君がD-TECの親玉かい? 昭和のアンチヒーローみたいな背格好してるね」
DーTECの総統相手に谷村さんが駆る口を飛ばす。
『いかにも。私がプロフェッサーダーク。DーTECの総統だ』
そう言って玉座から立ち上がる。
同時に物凄い速さで移動する。
☆
DーTECの総統。
プロフェッサーダーク。
スピード、パワーともに今迄の戦闘ロボットとは桁違いの強さだ。
こっちは実質、谷村さんと影司君、そして俺と三人相手に大立ち回りしている。
スピード勝負に持ち込んできて、光線を乱射してくる。
「アナタ達は一旦下がって!!」
「ッ! すまない!!」
谷村さんと俺とで一緒に突入してきたディフェンダーの職員を守り、この場から退散させた。
影司君は相手の超スピードに食らいついている。
ならばとダーク総統もスピードを上げる。
俺も、谷村さんもそのスピードの暴風の中に飛び込んだ。
超スピードの世界。
何度かプロフェッサーダークに激突する。
この攻防を北川さんは見ているだろうか。
それを見てどう思っただろうか。
などと考えているウチに、ダーク総統は片膝をついて動かなくなった。
体中から火花を引き起こし、煙をあげている。
「限界以上のスピードを出してオーバーヒートをしたんだね」
と、谷村さんは言った。
限界以上の力を出して戦って、ついにガタが来た感じか。
『私は滅びん――私は何時かまた蘇る――』
そう言って、その場に倒れ、大爆発した。
『この施設は後――以内に自爆します』
続いて施設からそんなアナウンスが入り、急いで退避する。
その後、DーTECの本拠地は吹き飛んだ。
☆
=数日後・放課後、大阪日本橋・メイド喫茶ストレンジにて=
DーTECは結論から言って壊滅した。
残党は残っているが、後はディフェンダーの戦力でどうにかなるらしい。(ほんとうかなぁ?)
北川先輩は相変わらず学園に残ったまま。
また厄介事を依頼するつもりなんだろう。
お礼はたんまりくれた。
影司君も厄介事が片付いて何でも屋を再会できたと喜んでるらしい。
そして現在、仕事で得た金で、メイド喫茶で打ち上げ会の最中である。
「まあこんな日常を望んでたんだよな」
異世界から帰ってことさら、面倒事――それも物騒なことが多い。
日常系漫画みたいな感じなのを意識して過ごしせたらいいなぁと思う。
☆
Side 北川 舞
=某所・ディフェンダーの施設=
藤崎 シノブ。
谷村 亮太郎。
二名はディフェンダーのとある計画のためにリストアップされる事になった。
とある計画は本来であれば発動しない方が良い。
分かり易く言えばアメリカの大作映画に出て来るヒーローチームのディフェンダー版と言ったところだ。
ディフェンダー版アベ〇ジャーズと言った方が分かり易いだろう。
私は眼帯のおじさんではなく、妙に人気があるキャップのファンのおじさんの役回りだ。
ようするにスカウトマンの役回りである。
他にも大阪日本橋やI市にも幾つか候補がいる。
日本は大豊作だなと思う。
闇乃 影司も候補の一人だ。
ミサキ・ブレーデルに任せてよい物かどうか悩むが、ミサキも計画にリストアップされる程の人物だ。それに闇乃 影司の最近の人柄を考えれば上手くやるだろう。
世界の平和を守る。
分かってはいたが、楽な仕事ではないな。
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