相談

 Side 藤崎 シノブ


 =放課後・大阪日本橋・雑居ビル2階、メイド喫茶ストレンジ=


 大阪日本橋で待ち合わしている。

 相手は闇乃 影司。

 内容は相談だ。


 議題は谷村さんについてだ。

 

「谷村さんならシノブ君の判断を尊重してくれると思いますよ?」


「そうかなぁ?」


「僕の場合は—―まあ自分の今後のためとかもあったりもしたんでしょうけど」


「今後のためか—―」


 影司君は、コンビで活動していたらしい。

 大宮 優と言う俺や谷村さんと同い年ぐらいの少年で、闇乃 影司とは別方向で可愛らしい男の娘だったと聞く。

 

「僕は学校通ってませんし—―今の生活をずっと続けたいかと思うとそうでもないだろうし—―今の平穏が続くなら高卒認定でもとろうかなとか考えてもいます」


「ふーん」


 影司君は影司君で将来を考えているようだ。

 自分の将来か。

 別に名を残せなくても、成り上がらなくてもいいから立派な社会人にはなりたいかなと思う。

 だけど立派な社会人ってなんだろな? とも思ってしまう。


「将来って何なんだろうな」


 そんな事を、ふと呟いてしまう。


「将来ですか?」

 

 影司君が尋ねて来る。


「うん将来。まだ高校一年だけど、あっと言う間に受験戦争に突入して、大学は言ったら入ったらで勉強しながらキャンパスライフ送って、次は就職のために頑張らないと—―そもそも大学だっていい大学行けるかどうかも分からないし、これじゃあ取らぬ狸の皮算用だな」


「自分が言うのも何ですけど、あれこれと将来の事を考え始めたらキリがないですよ?」


「分かってても、なんだか考えちまうんだよな~」


「一先ずそれは置いといて本題に戻りましょう」


 影司君の言う事ももっともだ。


「谷村さんとだけど—―」


「幾ら相談しても、誰に話を持ち掛けても、突き詰めるところは—―藤崎さんが決めるべきだと思います」

 

「俺が?」


「はい」


 俺が決めて良いのかな?

 ちょっと戸惑ってしまう。 


「うーん――そう言われるとなぁ」


「まあ、よく考えてみてください」


「はあ……」


 そう言って影司君は立ち去った。

 自分でか—―


 そういや異世界で谷村さんとケンカした事あったっけ。

 

 怒ってる怒ってないで言い争いになって。

 んで俺が意地になってしまって、谷村さんが謝り倒して助け舟出してくれて。

 今にして考えると俺馬鹿じゃね? と思う反面、谷村さん聖人なんじゃね? とも思ってしまう。

 

 あの時が考えればコンビ解散の危機だったな。

 

(でも何だかんだで今も関係続いちゃってるしな……)


 などとふと考える。

 

 そして思った。

 場当たり的な考えだが、コンビ解消は時が来たら自然とそうなるだろうと言う考えだ。

 

 別にコンビ解消したら世界が破滅するわけでもないし。

 

 あまり深く考えずに、気楽に考えた方がいいのかもしれない。

 保留して今の関係を続けると言うのも選択肢の一つなのだろう。


 そう考えると頭や胸のモヤモヤがとれた。

 

 平和とか平穏と言うのは無駄なことが出来る世の中を言うのかもしれない。

 自分はいつも通りに過ごせばいいだけなのだ。


 ちょっと人よりトラブルとか多いだけ。

 世の中は想像以上に不可思議や危険に隣り合わせである。

 ただそれだけなのだ。 


 そこまでらしくない事を考えて俺は帰路についた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

召喚勇者の現代帰還~勇者は現代社会を謳歌する~ MrR @mrr

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ