今の自分とこれからの自分
Side 藤崎 シノブ
=放課後・近所のスーパー=
ふと谷村さんとお付き合いして近所のスーパーに行く事にした。
親へのプレゼントを買うためだ。
この世界に帰ってから頻繁にならない程度に、無理のない範囲で食べ物を購入して親にプレゼントする。
最初は気恥ずかしかったが回数を重ねるうちに慣れた。
異世界の旅路で色々な事を学んだが、親への恋しさとありがたさを学んだ旅でもあった。
谷村さんは異世界にいた時から女神さまの計らいで転移直後に戻してくれるのを分っていたが、それでも自分達は一年以上の時間を異世界で過ごしている。
なので家族を観た時は思わず家族の前で泣きだしそうになって、慌てて部屋で泣いたと思う。
そして谷村さんの習慣に倣う感じで、定期的に両親に食べ物の差し入れをするようになった。
どうして食べ物かと言うと定期的に贈っても、食べて捨てるだけになるから邪魔にならない。
間を空けて谷村さんと相談しながらアレコレと食べ物を購入してはプレゼントしている。
日本橋で肉まんとか餃子とか購入した時もあった。
まあそう言うワケで今、谷村さんと食品売り場で何を買おうかなと悩む。
「谷村さん本当に親子想いですね」
「まあこれでも色々と振り回して迷惑かけてるからね。これぐらいはしないと」
「でも凄いですよ谷村さんは。異世界でもそうでしたけど、地球に戻ってもプラモバトル流行らせて—―」
「まあ経営は長谷川君とかに丸投げして特許料とか頂いて確定申告とかどうこうの世界だけどね」
「それが凄いんですよ。WEB小説の異世界の返りの勇者まんまじゃないですか」
ぶっちゃけ異世界では谷村さんの方が重要視されてたし、地球でもその能力はいかんなく発揮されている。
もしも谷村さんがいなければ魔王の正体にも気づけず、今頃異世界で未だに魔王討伐を頑張って命を散らしていたかもしれない。
俺にとって谷村さんとはそれ程までの人物だった。
「うーん。まあなってみると面倒事多いよ? それに金はあり過ぎても考え物だけど—―無さすぎるのも考え物だね」
「金か」
金は偉大な発明だと誰か偉い人が言ってたが、地球の場合は複雑化し過ぎているようにも思える。
いや、異世界が単純過ぎるのか?
うーむ。
「金の話はここまでにして親のプレゼントをどうしようか?」
「あまり同じのばっかなのはいけませんよね」
「まあね—―だから気を利かせて今回は—―」
悩む悩む。
そうして購入したスイーツ系の食べ物を母親にプレゼントする。
=放課後・自宅の部屋=
母親にプレゼントを贈ると、最初は変な顔をされたが、今では優しく「ありがとう」と感謝される。
(両親を安心させないとな~谷村さんみたいに成り上がれなくてもいいから、一人前の社会人として一歩を踏み出す事かな?)
そのためには勉強が大事だ。
学歴社会は崩壊してるとか、個性が大事とか言われているが、何だかんだで世の中は学歴と言う奴が重要である。
そのためには沢山勉強して、大学に入学して、勉強して卒業して、就職活動を頑張って――と考えると、大学がゴールではないんだなと思い知らされる。
いっそ異世界で出戻りして勇者ライフを満喫~なんて考えも過ったが、それを谷村さんと二人揃って否定したので、その考えも取り辛い。
それに異世界は逃げ場所じゃない。
異世界に行けば何かが変わるかもしれないと言う期待を抱いた人は多いかもしれないけど、実際異世界に行った後からすると、異世界に行かないで変われるのなら異世界に行かず変われた方が偉い。
だけど異世界の厳しさに揉まれなければ自分の浅はかさや愚かさに気づきもしなかったと考えると何だか虚しく感じる。
(地道に頑張れるのなら頑張るのが一番か)
と、考えて自室の机で教科書を開く。
異世界に行ったせいか、学力も何気に向上している――知能指数のパラーメーターでも向上したのだろうか—―ともかく、勉強が捗り、物覚えも格段に良くなっている。
(何時までも谷村さんとベッタリってワケにも行かないし、自分で自分の道を模索しないとな)
などと考えたりもした。
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