北川 舞 先輩からの依頼その3

 Side 北川 舞


 余裕淡々なキャラクターを演じていたけれど、本音はいっぱいいっぱいだった。


 谷村 亮太郎は外見通りなところもあってまだマシだが、藤崎 シノブはキャラクターが掴めない。


 最近、あの闇乃 影司と一緒に助手として行動を共にし、切り裂きジャックの逮捕をしてから推理小説を嗜みはじめたぐらい。

 さらにライブラの幹部格を返り討ちにした実績もある。


 最近は安藤 マキと言う女子生徒の姿も見られるが、彼女も同類の化け物だろうか。


 まるで最高難易度の爆弾解体処理をしているようだ。


 ディフェンダーのエージェントとして周囲から私も怪物呼ばわりされてるが、谷村 亮太郎や藤崎 シノブはまだ底が知れない、はかれない。


 恐らくだが、世間を騒がせたサカキ高校もこの二人か、三人の仕業だろう。

 

 ディフェンダーのエージェントの何人かに同じ事が出来るかどうか尋ねたが、口を揃えて「不可能だ」と言っていた。


 誰にも気づかれず、救出された人間にも正体を悟られず、痕跡を無くして徹底的な破壊工作を行う。


 ディフェンダーのエージェントでも不可能なミッションをやり遂げた正体不明の人間。


 琴乃学園に通う生徒の噂では谷村 亮太郎と藤崎 シノブが何かをやったと噂されている程度だが、存外こう言う噂話はアテになるらしい。

 他にも問題のある教師を秘密裏に、見事な手際絵処理して、それも二人の仕業と言われている。

 

 二人は学園のヒーローとも言うべき存在だった。

  

 そして日本の魔境、大阪日本橋とその主に認められた存在でもあり、上層部のとある計画絡みでマークした、日本政府や闇乃家の負の遺産、闇乃 影司とも交友関係を持っている。


 これをただの高校生と言える筈がない。


 私は考えた。


 私を付き纏う厄介なストーカーを始末すると同時に、二人の力量をはかるために、二人に依頼と言う形で出来る限りの好条件をつけて依頼した。

 

 敵の詳細も少ないながらも教えてある。

 敵はロボットを主力商品とする組織、「DーTEC」。

 その戦闘ロボット。

 ディフェンダーのエージェントを返り討ちにしてきたツワモノであり、ただの普通の高校生二人が相手にするには荷が重すぎる相手である。


 本来は。


 私はファミレスから出て、キャンピングカーに偽装した作戦指揮車両に乗る。

 当然防弾仕様。

 内部は照明があって明るいが機材の関係で息苦しさを感じる。

 前後を挟むように護衛の車が到着してドライブ。

    

 手筈通りのルートをとる。

 I市に突入するルートは今回避けている。

 I市はI市で日本橋と同じぐらいに危険地帯だ。


 T市へのルートもアウト。

 奴達の組織規模は分からないし、そこで闇乃 影司とウチのエージェントが一戦やらかしたばかりだ。

 ここは人気のいないところへ誘い込むのがベストだろう。



 Side 藤崎 シノブ


 谷村さんの御陰で敵味方の色分けも楽に済む。

 僕達は隠密スキルをフル活用して北川先輩の後をつける。

 生身で隠密中でも走行中の車に辿り着くのは楽勝だった。

 

 そして辿り着いた先は特撮物に出て来そうな採石場。

 そこの広場に止まる。


 同時に追いかけてきた車とバイクの列。

 敵は羽振が良さそうだ。

 鑑定の結果、DーTECのアンドロイド兵士と出ている。

 中にはDーTECの特注の戦闘アンドロイドがいた。

 

 まんま昔の特撮物の世界だ。

 違うのは戦闘員役のアンドロイド兵士がガチの銃器で武装しているぐらいだが問題ない。

 両者の間で銃撃戦が始まろうとした瞬間に谷村さんが双剣を持って飛び込み、アンドロイド兵士の首と胴体を跳ね飛ばす。

 僕もそれにならい、遠慮なく剣で胴体を切断する。

 

『何事だ!? 何が起きた!?』


 人間から変身した。

 リーダー格と思わしき——ロボコッ〇だかメタルヒーローみたいな奴が現れた。

 ところどころ青いカラーリングをしている。

 人間臭い反応をするが一応ロボットだ。

 手には光線銃を持って、此方を視認しているのか発砲してくる。

 油断なんない奴だ。

 

 傍には昭和のヒーロー物から飛び出して来たような奴。

 此方も人間から変身した。

 黒いカラーリング。

 二つのハサミにサソリのような大きな尻尾。

 昆虫を思わせる頭部。 


 それを皮切りに次々と戦闘員がホッケーマスクの仮面を晒す。

 

 まるで昭和の特撮の世界に迷い込んでしまったようだ。

 これが件のストーカーだろうか。


 ぞろぞろとまあ雁首揃えて来たもんである。



 Side 北川 舞


 キャンピングカーに偽装した指揮通信車両。

 モニターには二人の様子が分かった。

 私服姿で銃で武装した相手に大立ち回りしている。 

 

 谷村 亮太郎はファンタジー物の暗殺者が使いそうな、猛獣の爪を連想させる黒い双剣。

 

 藤崎 シノブは神々しさを感じる聖剣とも言うべき剣だった。

 

 次に目を惹いたのがスピード。

 スロー再生しないと補足が困難な程だ。

銃もあのスピードの前では同士討ちが起きかねず、やくにたたない。

 

 続いて二人が持つ獲物の切断力。

 材質は何なのかは分からないが鉄だろうか?

 末端の雑兵扱いである敵のアンドロイドロボットは銃弾すら弾くボディを持っているのに、容易く切り裂いている。


 巨額の費用を投じたVFXのアクション映画のワンシーン染みているが現実の光景であり、彼達の実力である。


 雑兵を狩り終えて、二人は幹部格のロボットと対峙する。

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