決着

 Side 御門 ジュンヤ


 タワーマンションの某所にて。


「あの役立たずども!? あれだけの人数で俺と同い年ぐらいの子供二人も始末できないのか!?」


 御門 ジュンヤはタワーマンションの一室で怒鳴り散らしながらも内心では(ヤバイ、ヤバイ)と思っていた。 


 自分もかなり悪辣で強引な手段を使ったと思ったが、あの緑谷 千歳は自分の想像を超えるような連中を雇っていた。


 いっそ殺し屋でも雇うか? 


 それとも逃げるか?


 親に泣きつくか?


 様々な考えが頭を過ぎる。


(落ち着け落ち着け。まだ手はある――アレだけの人数を相手にしたんだ。相手も消耗している筈。伝手で入手した此奴を叩き込めば――)

 

 などと言って拳銃を取り出す。

 トカレフ――黒星とも呼ばれる護身用に手に入れた銃だ。

 海外の犯罪組織の資金源ともなっている有名な銃である。


(後は殺し屋を雇うか――もしくは懸賞金の額をあげて――このマンションに集めればいい)


 などと考えたその時だった。


「ひぃ!?」


 窓ガラスからぶち破るように誰かが入ってきた。

 ここはタワーマンションの最上階。

 普通の人間が昇ってくるなどありえない高さだ。


 慌てて銃弾をデタラメに発砲する。


 しかしマヌケな事に反動で銃弾は何処か飛んで行ってしまう。


 現れた黒服のスーツを着た少年――


 名前は確か谷村 亮太郎とか言ったか。


 が、自分の前に立つ。


「まさか銃まで持っていたなんてね」


「どどど、どうやってここに来た!? 五十階はあるんだぞ!? いや、それよりもどうしてここに」


「うん? まあ頑張って昇ったよ。この場所も調べた」


「ぼぼぼ、僕をどうするつもりだ!? 何かあれば君の家族や友人が――」


「その言葉を聞いたからには此方には引き下がれなくなったかな」


 そう言って一発ぶん殴られた。


「いたいいたいたいたいたいいたいいたい!?」


 そしてさらに何発か殴られた。


 しばらく喚いた後、僕は「殺さないでください!! もうなにもしません!!」と懇願したが「その言葉をはいそうですかと信じる程、優しくはないんでね」と言われた。


「かかかか、金は払う!! 幾らでも払う!? それとも女が欲しいのか!?」 


「なあに――殺しはしないさ。殺しはね」


 谷村 亮太郎と言う男は笑みを浮かべてそう言った。


 

 Side 藤崎 シノブ


 少しの時間が経過した。

 

 今回の事件の発端である御門グループの御曹司である御門 ジュンヤ。


 僕と谷村さんに懸けた懸賞金を取り消し、さらに狙っていたアイドルグループ「Twinkle」に対して強い暗示をかけて近付けないように工作しておいた。


 この一件を緑谷 千歳を報告――


 そして御門グループと緑谷 千歳は「今回の一件を無かったことにするために色々と工作」すると同時に御門 ジュンヤの一族はグループの反対派閥から実質的な追放処分を受けた。


 御門グループは名前を変え、さらに芸能事務所に賠償金まで支払った。

 僕達にも多額な報酬が来た。谷村さんと相談した結果、確定申告や税のアレコレの勉強をすることになった。


 そうして事件は決着したかに見えたが――


 =大阪日本橋 メイド喫茶ストレンジがある雑居ビル三階 谷村 亮太郎の事務所にて=


「で? 天川さん? どうして正体隠してこんなところにいるんだい? つか僕、相手いるって言ったよね? ハーレムルートはお断りだよ?」


「いいじゃない別に! あんたの正体何時か暴いてやるんだから!」


「正体も何も自分は――」


「普通の人間は大人数相手にして無傷で無力化できないの! あの事件もなんか有耶無耶になったし! それと彼女絶対私に紹介しなさいよ!?」


「本当にしつこいな君も――」


 なんかTwinkleの天川 マリネさんが変装してこの事務所に定期的に来るようになった。

 暇さえあればあーだこーだと谷村さんに食ってかかっている。


「いいんですかアレ?」


「アレはヘタにほったらかしにするとよけいに面倒になるパターンだね。本当は魔法使って力寄らないようにしておくのもいいけど、先日の事件で事態悪化させてしまった謝礼の意味もあるし、プロデューサーさんからも頭を下げられてるからね」


「はあ・・・・・・」 


 谷村さん現実世界でも大変だな~などと思った。

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