第6話 冒険者ニーダル・ゲレーゲンハイト
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シュターレン軍閥領のウィツエト遺跡から少し離れた山肌に、遺跡のモンスターを監視する詰め所があった。
ニーダル・ゲレーゲンハイトは、ロゼット達を無力化した後、即座に小屋へと一報を入れた。
駐留中の警備兵達が、暗殺任務の巻き添えになったのではないかと心配したからだ。幸い
ニーダルは、子供達を詰め所へ運ぶのを手伝ってもらった後、自分が監視業務を引き継ぐと説得した。
ニーダル・ゲレーゲンハイトは、シュターレン領領主の
兵士達は、思いがけない休暇に心はずんだのだろう。
「ニーダルさん、これから二〇人を相手に乱交パーティーですか。相変わらずお盛んですね~」
そう、イイ笑顔で喜んでくれた。
「ハッハッハ。俺ってば絶倫だしい?」
ニーダルも、にこやかに笑って煙にまく。そう、彼は良くも悪くも有名なのだ。
自身を取り巻く風評がまたも悪化しそうな気がしたが、どうでもいいことだ。真に重きを置くべきは、他にあるのだから。
ニーダルは、とうに日が暮れた星空を見上げながら小屋を出て、赤いコートから拳大の水晶玉を取り出した。
「クソジジイ。俺だ。今どこに居る?」
水晶の中に、ベッドの上でナイトキャップを被り、眠そうに
パラディース教団の教主アブラハム・ベーレンドルフ、前教主マルティン・ヴァイデンヒュラーに次ぐ、国内第三位の軍閥の主にして実業家のエーエマリッヒ・シュターレンだ。
「……ニーダルか。ガートランド聖王国だよ。商売のことで揉めていてね。わしが直接出向くことになった。動かぬ証拠をつきつけられてさえ、何もかも聖王国が悪いと責任転嫁する教団上層部には困ったものだ」
老実業家は、眠そうな目でまばたきを繰り返して嘆息する。
「彼らは、『自分がどのように改善するか』ではなく、『他人にどう報道させるか』しか興味がない。どれだけ嘘を重ねようとも、誠の信用など築けぬし、真面目にやっている我々にまでとばっちりが飛んでくる。尻拭いをする企業の立場にもなって欲しいものだ。……さて、愚痴はここまでだ。いったい何があった?」
「ウィツエト遺跡で刺客に襲われた。装備から見て背後にいるのは、ヴァイデンヒュラー閥。それも、俺たちが以前倒した
エーエマリッヒは、灰の混じった栗色の口ひげをひっぱって目を細め、
「何度潰しても這い出てくる害虫どもめ。わしの領内でやってくれる。遺体が残っているのなら、首でももいで送りつけてやれ。まとめて借りを返してくれる」
「ガキだった」
ニーダルがこぼした言葉は、かみ締めるように小さなものだった。
「聞こえぬぞ。今、何と言った。ニーダル?」
「襲ってきたのはガキだったんだ。魔術による精神拘束に、薬物投与の洗脳、身体には爆発物と術式まで埋め込んであった。だから気づいたんだよ。コイツは〝四奸六賊〟の奴らが研究していた技術だ。くそったれが!」
〝
彼らは教主を軽んじ、圧政に苦しむ多くの民草を虐殺し、
ニーダルが燃えるような怒りをあらわにしたのに対し、エーエマリッヒは凍てついた冷ややかな視線を送る。
「だから我らが討ったのだろう? 行方不明者の臓器が金持ち相手にバラ売りされているこの国で、いまさら何を怒っているのかね?」
「怒りもするわっ。ガキだぞ! ガキが爆弾背負って暗殺に来たんだ。なんでアンタはそう冷静なんだっ」
「わしは、酸いも甘いも
「あ、あ、ああああ」
ニーダルは、振り上げた拳を下ろすに下ろせずに悶絶した。
「事情は理解した。ならば情けは無用だ。愚痴なら今度つきあってやるから、ちゃんと処分したまえ」
話を打ち切ろうとする老人に、青臭い若造はこう突っ返した。
「嫌だぞ。俺は」
「まさか、何人か生かしているのか?」
「全員殺してねーよ」
口を歪めるニーダルに、老人はベッドの上の水差しを一口飲み、大きく口を開いた。
「システム・レーヴァテインを、〝滅びの翼〟を使ったか。この馬鹿者がぁああっ!!」
「当ったり前だ。全部焼き払ってやったわああああ」
老人は頭痛がするとばかりに、しわの浮いた大きな手で目を覆った。
「むごい事をする。ニーダル、それは人形へ人間になれと命じるようなものだぞ。
「クソジジイ、俺は
「蜜より甘いことを言うな。そやつらは見かけは子供でも立派な兵器だ。生かしておけば、必ず我らに仇を為す」
「俺にとっちゃただのガキだ。〝よくあること〟と言ったのはアンタだろう。たとえこいつらを殺しても、別のガキが爆弾を背負わされるだけだ」
ニーダルが頑強に反対すると、エーエマリッヒも痺れを切らしたのだろうか、諭すように柔らかな声で𠮟咤した。
「ニーダル。いいや、
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