第42話 成功と失敗と
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ロゼットは、ギーゼギング教官の裏切りに感づいたことから、万が一の際に脱出できるよう弟妹たちと作戦を練っていた。
そのうちのひとつが
どうやら黒尽くめの兵士達は、サウド湾の外縁一帯に、巨大な地雷魔法陣を準備しているようだ。
「敵の作戦は、僕達〝殺戮人形〟を誘導して一網打尽にすることだろうな」
「だからきっと、あいつらは自分たちが討たれても構わなかったんだ」
「アタシ達に言えた義理でもないけど、気持ち悪いね」
兄妹達、そして同年代の敵兵士達の戦いに、泥をぶつけられた気分だった。
「どんな作戦にもリスクはある。騙し騙され、利用し利用されるのが戦場だろう。でも」
「
「お師様曰く、失敗して自らの不徳を省みるのではなく、洗脳した駒を増やして成功を目論むから、連中は進歩がないんだってさ」
「紫の賢者は、理知的だな」
「ううん、怪物だよ。正直言って、アタシは誰よりもあの人が恐ろしい」
「……今は、
他の敵ならば、そう上手くは行かないだろう。
だが、黒尽くめの兵士達は〝殺戮人形〟の同門であり、悪い意味で教本通りの動きに徹していた。
だからこそ、思い通りに
「準備完了。時間合わせヨシ。備えろ!」
やがて地雷魔法陣の起爆役を担ったらしい、一人の黒尽くめの少女が小さな魔法陣へと進み出る。
彼女は自らの指を傷つけて、鍵となる魔術文字が刻まれたナイフに垂らした。
〝殺戮人形〟の兄妹達は、すでに半数が爆破予定範囲に入っており、絶好の機会と見たのだろう。
「任務……」
少女が、小魔法陣の中心にナイフを突き刺した。
赤く禍々しい光が円陣と方陣を描きながら、巨大魔法陣へ伝播する。
「……完了」
「よし、コードR。成功だ」
「……伏兵か。しかし、無駄だ。もはや魔法陣は止められない。お前の仲間たちは物言わぬ石像に変わるのだ!」
少女はポーカーフェイスながら、どこか誇らしげに、恐ろしい台詞を言い放った。
けれど得意顔は、すぐに狼狽の色に染まる。
「魔法陣が完成しない? 大きくなって、なんだこれは?」
赤い光は青い光に変化して、複数の六芒星を刻みながら走り続け、更に長大な円を描いてゆく。
それは、殺戮人形の兄妹だけでなく、追撃する黒尽くめの兵士達の大半を囲んでいた。
「まさか、まさか。お前たちは」
「ああ、使わせてもらったよ」
魔法陣内の大地から、予定されていた石化ガスではなく、植物性のツタが伸びた。
黒尽くめの少女達が作った魔法陣のエネルギーを取り込み、上書きする形で、新たな拘束の魔法陣が発動したのだ。
魔法陣は、いまだ健在だったギーゼギング教官の部下達を厳重に縛りあげ、次々と無力化した。
「おのれ、おのれ、我らの作戦をよくもっ」
黒尽くめの少女は、能面をかなぐり捨てて
「失敗作が、このような真似をっ!」
「教官が〝失敗したから〟、出来るのさ」
二つの影が交差した後、立っていたのは少年の方だった。
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