第16話 襲撃準備
短めです
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2人分の遺体を土のなかに埋める。
これはドッジの炭を、地面に埋めていて思いついた遺体の処理方法だ。
今までは強力な魔力油で一気に火葬していたのだが、それだと万が一に目撃された場合、言い訳がしづらいデメリットがあった。
それに
ゆえに、普通に埋めることにした。
いわゆる土葬というやつだ。
もちろん、
ただ、埋めるだけではない。
「こんなところだな」
土盛りをなるべく平らにして、俺は土のなかの微生物たちを操作する。
医術学院時代の経験から、人間の遺体が土に還るまでの時間は、火葬して骨を埋めるより、そのまま土に埋めた方が短いと知っている。
これは微生物の分解の早さに起因する。
「…………1時間といったところか」
微生物の働きの促進、活性化の比率から、およそすべてのプロセスを終えるまでにかかる時間を計算する。
働きを促進した微生物による遺体分解。
それによる、完全な痕跡の抹消。
もし理論通りなら、本来は100年かかるところを、1時間で分解しきる。
こんなに素晴らしい遺体処理があるのか。
俺は結果が出るのを楽しみにしながら、いったん『アルドレア医院』へ帰宅した。
⌛︎⌛︎⌛︎
2人を土に還している間。
俺は取得した情報を整理することにした。
あの黒づくめの男は、やはり『百面』の組織の人間だった。
娼館のマスターは、彼のもとで働く若い娘を『百面』のもつ″美しい顔の収集″という醜悪かつ狂気的な趣味のためにあてがっていたらしい。
マスターは簡単に殺しすぎた。
やつは、自分が
「あのゴミにも『コカドローヂ』を使うんだった……」
とはいえ、反省しても仕方ない。
やはり最大の問題は『百面』だ。
やつはファントムシティ中の反社会性をもつ勢力を、その巨大な力とカリスマでまとめあげ、組織的な強さを確保している。
娼館のマスターなどは、その組織の巨大な力の庇護下にいて、犯罪行為を加速させていた小悪党の典型例だ。
『犯罪顧問』の息がかかった各地の組織には、定期的に本部から、黒づくめの男と同じ役割をもつ使者たちが派遣されるらしい。
あれが大元と、枝先をつなぐパイプだ。
パイプがファントムシティに張り巡らされ、巨大な木の根っこのように、養分を木の幹に吸い上げている。
黒づくめの男を締めあげると、彼は組織の内情を語ってくれた。
ここ最近、ファントムシティの犯罪発生率が急上昇しているのにも理由があったのだ。
どうやら『百面』は、『崖の都市』で生成されている違法薬物を、ファントムシティに持ちこみ、莫大な富を獲得していたらしい。
あの街の『犯罪王』の得意とする商品を、『犯罪顧問』が買いつけた、か。
最悪の
早急にこのゴミクズどもを処理しないといけない。
幸いにも、やつらのアジトのいくつかを聞き出すことに成功している。
俺はこれから『犯罪顧問』を殺す。
善は急げ。
奴らには一刻の猶予もあたえない。
⌛︎⌛︎⌛︎
地下室におりて、″襲撃″の準備をする。
棚をずらして、その裏に隠された部屋へはいる。
白い手袋を装着し、頭には茶革製の使い慣れた″ペストマスク″をかぶる。
戦闘、拷問、執行、
あらゆる用途につかえる細菌、毒、寄生虫がつめられたブリーフケースの中身を確認。
俺のスキルで操れるのは、文字通り細菌、つまりバクテリアの類いが主だ。
寄生虫となると、完全にコントロールすることは出来ないため、本来ならあまり好んで使用したりはしない。
だが、役に立つこともある。
そのための備えだ。
「全部揃ってるな」
細菌や毒や寄生虫は、気温、湿度、風の流れによって使える条件が変化する。
対象が先天的、後天的に抗体を獲得しているケースも少なくない。
確実性をもとめるなら数種類は用意する必要がある。
もっとも、このブリーフケースには70種類を越える、稀少かつ強力な相棒たちが秘められている。
そうでなくとも、″自前″の分もあるのだ。
屋内での状況対応には自信がある。
「注射器、メス……備品も大丈夫か」
装備を確認し終えて、ブリーフケースを片手に地下室をでる。
リビングにあがり、ルミリアには抗体を持たせておいた特殊な細菌を『アルドレア医院』のなかに散布しておく。
おそらく、長い夜になる。
そのための万が一の備えだ。
もし仮に侵入者がいれば、朝には死体となって発見されることだろう。
すべての準備は整った。
では、正義を執行しにいこう。
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