第15話 拷問


 夕食を2人でいっしょに片付け終えた。


「おやすみなさいです、アレックスさん! 良い夢見てくださいね!」

「ああ、ルミリアもな」


 部屋のまえで彼女とわかれる。


 俺も自身の部屋へもどり、ベッドに身を寝かせた。


 もっともまだ俺にはやることがある。


 ただ、きっと、長い夜になるだろう。


「1時間ほど仮眠をとるか」


 俺はゆっくりとまぶたを閉じた。


 

         ⌛︎⌛︎⌛︎


 

 ーーぴったり1時間後


「……」


 暗い部屋のなか、むくりと起き上がり、ベッドから降りる。


 足音を忍ばせ、気配を殺して白衣を着込み、ルミリアの部屋のまえで聞き耳をたてる。


「むにゃむにゃ……アレックスさん、そんな、それはちょっと、えちですよ……えへへ♡」


「……」


 寝言か。

 今晩はかなりの快眠と見える。


 よかった、よかった。


 ルミリアに気付かれないように、アルドレア医院を出て、俺はクズどもを監禁している廃墟へむかった。



         ⌛︎⌛︎⌛︎



「……ッ! んー! んー!」


「恐怖で眠れないようだな。それは結構」


 縄でぐるぐるに縛って放置していた、娼館のマスターが充血した目でなにかを訴えかけてくる。


 俺はポケットからメスを取りだして、口が聞けるように猿轡さるぐつわをとってやった。


「なんの真似だこれは! てめぇ、いい加減にしないと、本当に後悔するぞ……っ!」


「後悔するかは、俺が決める。お前は俺の質問に嘘いつわり無く答えればいい」


 メスでマスターの頬をかるく斬りつける。


 マスターは片目を閉じて痛みにうめき、悔しそうに歯がみして睨みつけてきた。


 ただ、それだけだ。

 それ以上は何もできない。


「お前とあの男の関係を教えろ」


 俺はマスターにたずねた。


「誰がてめぇなんかに……」


 マスターの反抗的な態度。


 これはいただけない。


 俺は躊躇なく、メスを持ち直し、マスターの耳の先端をスライスして斬り落とす。


 血が滲み出るように、切断面から溢れ出てきた。


「うぁああああああ!」

「口を閉じろ」


 立ちあがり、靴の先端をマスターの歯をへし折りながら、無理やり彼の口につっこむ。


 マスターは涙目で嗚咽おえつをもらしながら、恐怖に震えはじめた。


 俺は靴を勢いよくひっこぬいて、口の中を必要以上に傷つけたあと、マスターの目の前にゆっくりしゃがみ込こんだ。


「しーっ」


 マスターを静観しながら、俺は指をたてて、彼に口を閉じさせる。


「うぅ、ぅ、ひぃ……」

「それでいい。初めにことわっておくが」


 俺はマスターの耳の切断面へ指を近づけ……彼の治癒力を活性化させ止血した。


「俺は人の体なんて、いくらでも操れる。お前の態度次第じゃ、想像を絶する地獄がこの先に待っていると思え」

「ひぃい……! すまない、やめて、やめ、やめてぇ、くれぇ……っ!」

「やめて欲しいなら、迅速に、簡潔に、要領よく、質問に答えろ。それが、お互いためになる」


 この後、マスターはペラペラとよく喋ってくれた。



         ⌛︎⌛︎⌛︎



「次はお前の番だ」

「アレックス・アルドレア、この街で『犯罪顧問』にさからって生きていけるとでもーー」


 いらない事を喋る口。


 素早くメスを走らせて、上唇うわくちびるを削ぎ落とす。


「うがぁぁあ?!」

「静かに」


 勝手に音を出す声帯は、悪い声帯だ。

 

 喉を絞めあげ、喉仏を陥没させる。


「げぼっ、がほ、ぁ、ぉ……っ」

「それでいい。今から俺がする質問に迅速に、簡潔に、要領良く答えろ。お前は『犯罪顧問』ーー『百面』の手先か?」

「はぁ、ぁぁ、はぁ……」


 男は目元をひくつかせ、ただ見上げて睨んでくる。


 喋る気配はない。

 黙秘を選んだか。


「愚かだな」


 俺は脇腹を蹴り上げて、男の吹っ飛ばして、石壁に叩きつけた。


 男は口から血の塊をはきだして、猛烈な痛みに耐えかねて声をあげる。


 俺はすかさず、彼の体の傷を治癒する。


「っ!」


 男は自分がされたことを理解して、目を見開いた。


「もう一度、チャンスをやる。お前は『犯罪顧問』の手下か?」

「……クソ喰らえ」


 男は全身を恐怖に震わせながらも、引きつった笑顔で言った。


 なるほど。

 ただの痛みで口を割る輩ではないか。

 となると、『百面』のカリスマは本物ということになる。


 流石は、ファントムシティで発生する犯罪の半分に関わり、裏で糸を引いていると言われるだけのことはある。


「出来れば使いたくなかったが、仕方ない」

「何をしても、絶対に口は割らないぞ、イヒヒヒ……っ」


 気丈にふるまい笑みを浮かべる男の頭を踏みつける。


 地面に固定され、よく見える耳の穴へ、俺はを流しこんだ。


「ッ?!」

「先に忠告しておく。おそらく人類が経験する苦痛のなかでも、トップを争う本当の″痛み″が待ってる。さ、痛覚の限界に挑んでみろ」

「ま、待て、なにを、なにを入れた……! なにを入れたんだ!?」


 俺はそれだけ告げて〔細菌碩学さいきんせきがく〕で男の体内に侵入した生物の成長をうながす。


 『コカドローヂ』

 俗に″悪魔の虫″とすら呼ばれる最悪の寄生虫。

 毒を撒き散らしながら、体内を食いあさり、成体になると、股間を内側から突き破って出てくる。


「うがぁぁあァァァァァアアッ!」


 穴という穴から血を吹き出し、痙攣して叫びだした男。


 俺は痛覚を〔細菌碩学さいきんせきがく〕麻痺させて、痛みから一時解放する。


「あぁあ! あああ! うぅうぅうッ!」

「しーっ」


 口に指をあて、大人しくさせる。


 ーーぐちゅぐちゅ


「ほら、耳を澄ませてみろ」

「ヒ……ッ!」

「聞こえるだろう、お前のなかで血肉を食べて成長してる虫たちの音が。今は痛覚を麻痺させてるが、これはいつだって解除できる。また、お前の体を内側から再生させることも俺なら簡単だ。意味はわかるな? よし、ならいい。……今、痛覚をもどしてやるから、質問に答える気になったら、ぜひ呼んでくれ。朝まででも、外で待ってるからな」


 俺はそういって、痛覚を戻すために男の胸に指をふれた。


 人間は痛みと恐怖の″インターバル″こそもっとも恐れる生き物だ。


 一時的に、苦痛から開放されると、次にやってくる苦しみにことさら反応を示す。


 それが、終わらない地獄のはじまりだと身をもって体感すれば、この恐怖に耐えられる者は多くない。


「あああ、わがっだッ! わがっだ、答える、答えるから、やめてぐれ゛ぇえ!」


 この後、男はめちゃくちゃ素直に質問に答えてくれた。


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