第13話 別れと、クズどもの捕獲
短めです。
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『ロディンケイス』
無味無臭無色の″魔力菌″の一種。
感染すると神経を急速に侵食し、人間程度なら、あっという間に死にいたらしめる。
使用条件は気にする必要があるが、とても強力で遺体を手頃につくるのに役に立つ細菌だ。
問題なのは、とても貴重で、培養ゲージのなかで上手く増殖してくれないこと。
「じゃあな、ドッジ」
かつての仲間の遺体から、″貸し付けていた″細菌たちをすべて回収する。
単にもったいないからだ。
細菌の多くは、どれも貴重で、人の肌や土壌にやどっているような菌ではないからな。
それが終われば、いつも携帯している人ひとりを焼却する分の油を撒いて、火を放つだけだ。
路地裏の一角。
骨すら残さず超高熱でもう上がる赤熱。
揺れるそれを、ぼんやり眺めながら、かつての彼と過ごした時間を思い起こす。
彼は元からこんな人間だったわけじゃない。
少なくとも、俺はまともな人間、むしろ面倒見の良い好青年だと判断したからパーティを組んでいたわけだしな。
「どこかで間違えた、か。なあ、ドッジ、お前は【英雄】、俺が演じるヒーローの役回りを女神から与えられたんだろう? ……お前は自分の正義をもってたのか?」
返事は返ってこない。
カラカラに乾き、真っ黒になった遺体が喋るわけもない。
「ヒーローは、正義がなくてもなれるものなのか?」
炎の明かりが消えた路地裏。
そこに残るのは、熱を燻らせるわずかな煙と、塵となり夜風に消えていく燃えカスだけだ。
「また世界が、少し綺麗になったな……」
背をむけて歩きだす。
彼との関係は、ここを永遠の境としよう。
⌛︎⌛︎⌛︎
ドッジを処理し終えたのち、俺は娼館へすぐにもどった。
店の付近でパトリシアが待ちぼうけを食らっているのを見守りながら、娼館の屋根上で待機していると、店裏から出てくるマスターをようやく見つけた。
「ん」
マスターはすぐに店裏で黒ずくめの怪しげな男とおちあい、腰を低く話しはじめた。
ここまで怪しい男はなかなかいない。
腰に剣を差しているが、あきらかに冒険者じゃない。
あの鋼は、魔物ではなく、人に向けるためのものなのだろう。
俺は黙って現場を眺める。
「へぇへぇ、どうもお疲れ様でっせ」
「きっちり上納金はあるな。ん、その手はどうした?」
「よくぞ聞いてくれました。いや、実はおかしな医者が暴れやがりましてね。うちの商品たちに怪しげな治療を施していきやがってんです」
「ほう、医者とな。どんな奴だ。気に入らないのなら、こっちで殺しておいてやってもいいぞ」
「本当ですか! いやぁ〜ありがたい限りでっせ!」
「お前のところの嬢は、よく″ボスの趣味″を満たしてる。それに、しっかりノルマの金を納めてるからな。『犯罪顧問』は組織に貢献するものへの配慮を怠らない」
「いや、本当ありがたい限りです! それで医者の顔なんですが、これがクソムカつくほど二枚目でしてね、銀髪で薄水色の目してやがります。名前はアレックスって言ってーー」
「……ほう、その男なら名前を聞いたことがあるな」
「っ、本当ですか? なにか過去にもウチにやらかしてるんで?」
「いや、そういうわけじゃない。そいつはポルタ級冒険者パーティのアレックス・アルドレアだ。冒険者に興味のある人間なら、知らない者はいないだろうよ。災難だったな、流石にポルタ級が相手じゃ、デカいだけの男は役に立たない」
怪しげな男はそういって「少し骨が折れる相手だが……いいだろう」とつぶやきながら、手元の紙に何かを書き込んだ。
ここで黙っていたら、俺のもとへ暗殺者でも送られてきそうな雰囲気だ。
それならそれで、吊し上げ、知ってる情報をすべて吐かせ、殺して、遺体をつかって細菌を繁殖させるための″苗床″にするから、まったく構わないのだがな。
ただ、実行部隊となると、組織の中枢に触れている可能性は極端に低くなる。
それが、『犯罪顧問』とうたわれるほどのカリスマの組織ならばなおさらだ。
ゆえに、動くなら、ここだろう。
とりあえず盗み聞きはこんなところで終わりだ。
あとは個別にうかがおう。
屋根上から飛び降りて、俺は2人のもとへ姿をさらした。
「ッ!」
「て、てめぇは……ぐぼげぇ?!」
騒ぐまえに、マスターの顎を蹴り抜いて気絶させる。
「チッ!」
とっさに反撃してきた黒づくめの男の抜剣斬りを避ける。
おかえしにカバンで彼の顔を思いきりぶんなぐり前歯を折り、膝蹴りで腹を打つ。
すると、男は悶絶して地面に倒れふした。
「ぅ、ぐっ! アレックス・アルドレア、どうしてこんな、ところに……!」
「悪党がいるからだ」
ひざまづいた男の顔を思いきり蹴り飛ばして、俺は完全に意識を刈りとった。
さて、これでクズどもは捕獲完了だ。
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