第30話 焦熱の胎動

「遅いですね。何かあったんじゃ……」

「じゃ、乗り込んで助け出すか」

 晴美が捕まってるなら大義名分が立つ、と蟇目は上着に手をかける。

「そういうわけには……。他の場所に移されていれば単なる不法侵入ですし」

 早く言え、と蟇目は真一の頭に拳を叩きつける。

「見えてしまうから通信機も持たせられませんでしたし、時間決めてましたけど、いざ帰って来ないとなると、いつまで待ったらいいか」

 涙目で頭を押さえながら弁明する。

 見つかれば騒ぎになるから分かると踏んでいたが、甘かったのかもしれないと唇を噛む。

「どうしたら……。何かあったら僕達のせいですよ」

 三人はしばし考え込み、脱出に手間取っているだけかもしれないので、一人を残して撤収する事にした。

 魁が残り、途中で蟇目と交代。真一は情報を集めるという事で一旦解散する。

 魁は日が落ちて暗くなる中、一人じっと待っていたが、突然携帯の呼び出し音が鳴る。

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