第14話 呪い

十四 〈 呪い 〉


 二の城壁の内側にあっても、より南西側の一角は、比較的小さな建造物が多く築かれている。それらの多くは、正騎士ではなく、城兵や従者らに貸し与えられた住居になっていた。殆どが簡素な造りで、土と石で出来ている。その中でも、比較的大きな建物には、区画を監督する身分の者が住んでいた。

 その一つに、オヴェウスは居た。

 彼は正騎士の身分を頂いている。サバージュの家名もあり、その地位もかなりの上位に入る。その彼がこのような場所に住むのは、自らがそれを望んだためだった。

 オヴェウスには家族がいない。広い邸宅に一人で住むよりは、城兵が集まる場所で、気に入った仲間を集めて、酒を飲み、騒ぐ方が彼の性にあっていた。

 粗野で乱暴者ではあるが、騎士の血を理由に「高くとまる」ことの無い彼の言動や素行が、気の荒い城兵に受け入れられているのも、また事実であった。

 だからこそ、来訪した騎士を、腕試しと称して叩きのめしてしまう彼の姿に、城兵が喝采を送るのである。

 ここでは清廉な騎士よりも、ともに酒を飲み、時に女を抱くような世俗的な男こそが、同胞として頼るべき存在として映るのだろう。

 昨夜も、街に出かけるオヴェウスに、何人もの城兵が同行した。

 目的は言うまでもない。

 しかし、昨夜のオヴェウスは、普段とは少し様子が違った。いつもなら足を向けることの無い街外れの墓地に、彼は誘われるように足を向けた

 「ように」ではない。誘われたのだ。

 それでなくては、理由がつかない。

 オヴェウスは昨夜の出来事を、繰り返し思い出すたび、気分が悪くなった。

 昨夜、彼はグリンガレットの跡をつけた訳ではなかった。だが、何かが妙に彼の気を引き、足を向けた先で、彼はドルイドの木片が燃える匂いを嗅いだ。

 他の城兵にはただの煙としか感じ取れなかった。しかし、彼にはそれが何なのか分かった。何故ならば、この煙と匂いを、彼は物心ついた時から、ずっと知っていたからだ。

 誰かがドルイドの秘術を用いている。その異常さに気付いた時、彼の足は真っ直ぐにその場所を目指した。

 そこにあの女がいた。

そして、あろう事か、彼が最も忌むべき・・・、今もなお、時折彼を苦しめる過去を探っていた。

 彼が自らの居場所を求める限り、それは、明らかにはしてはならないものだ。もし、真実を知った者がいるならば、全て葬らなければならない。それなのに。

 オヴェウスは立ち上がり、桶から柄杓で冷えた水を救いあげ、一気に飲み干した。

・・・俺はあの女を殺すことが、出来なかった。

 昨夜の自分はどうかしていたのだろうか。

 彼は少し頭痛を覚え、こめかみを抑えた。

 今朝はすこぶる妙な具合だ。何かが違う。変わった。変わったのは自分なのか、違和感が体中を包み込んでいる。

 昨夜、オヴェウスは女と剣を交えた。

 彼が思う以上に、女は素早く、剣技に長けていた。相手の剣は、間違いなく自分の胸を横に斬った。視線の先で、昨夜、彼が纏っていた革鎧がバッサリと裂けている。これは、夢ではない。

 にもかかわらず、彼は傷みすら感じることも無く、当然死ぬことも無かった。

 更に彼は、背後からも、矢を射かけられた。

 致命傷になってもおかしくない程、体の奥まで突き刺さった。

 彼は腕を背に回した。矢が刺さっていただろう肉体には、傷一つ残っていなかった。筋肉がきれいに盛り上がり、隆々たるシルエットを形作っていた。

 代わりに悲鳴を上げたのは、眼前の女の方だった。女は苦しげにのたうって、彼が指一つ触れもしないのに、その場で昏倒し、痙攣を始めた。

 彼は恐怖と怒りに捕らわれた。

 背後から迫ったデリーンを打ちのめし、捉えた彼は、恐怖を抑えこむかのように、その激情の矛先を森の女に向けた。首を絞め、気を失ってさえ、その肉体を苛んだ。

 周囲の仲間が止めなければ、その場でそのまま殺してしまったかもしれなかった。

 もっとも、本来はそうすべきだった。

 ・・・あの調子では、今頃くたばっているかもしれんな。

 思うと、気がさらに陰鬱になった。

 デリーンが生きていて、しかも自分を殺そうとした。かつて、彼が手に入れ損ねた女。今にして思えば、あの女にどうしてそこまで思い入れたのか、思い出せもしない。しかし、過去の亡霊が、間違いなく自分の周りには蠢いていることを、突き付けられた。

 結局は、昏倒したデリーンを、彼は生かして連れ帰った。

 殺さなかった理由が、今になるとわからない。激情が覚めた一瞬の時、彼の中に潜んでいた惰弱な部分が、その罪深さを悔いたとでもいうのか。

 周りの連中には、昨日の騒ぎはどう映ったのだろう。

 いつもの女狩りと思ってついてきた連中は、大分興ざめしたに違いない。だが、所詮城兵といっても、流れ者の集まりだ。誰しもが脛に傷を持つ者ばかり、詮索する奴もいるまい。

 オヴェウスは再び自らの肉体を見た。

 体全体に、自分でも驚くほどの精力が満ちてきている。精神的な憂鬱感とはうらはらに、体が力にあふれている。気味が悪い程、肉体だけが高揚している。

 やはり妙だ。妙な焦燥感が無意識に募ってくる。そして、何かを失ったような、違和感。

 デリーンに向きかけていた思考が、再びあの女を脳裏に映し出した。

 キリアムの、王の従者を名乗る女。

 男の格好をしていたが、彼にはそれが女であると、初めて見た瞬間からわかった。そして、その姿が頭から離れなくなった。

 昨夜、気を失った女を地下牢に運んだ時、その気になれば、そのまま寝所へ運んで、欲情を晴らすことも出来た。しかし、彼は女の肌に触れることさえしなかった。

 いや、出来なかったのだ。

 異常な状況に、混乱していたせいもある。

 だが、それだけではない。昏倒した女に指を伸ばした時、触れることで、何か取り返しがつかない事になるという怖れを、彼は感じた。

 触れてはならない、触れることをまだ、許されないという感覚。それは、自らの生き方を、自らの力で掴んできた筈の彼にとって、敗北感にも似ていた。そのくせに、肉体だけは高揚し、明らかに欲情を覚えている。そこには、彼の意志とは切り離された何かが感じられる。

 ・・・いずれにせよ、このままにはしておけない。

 オヴェウスは歯ぎしりをすると、窓辺に立って、白々しく広がる曇天に目を細めた。

 ・・・城の地下牢も、あまり長くは使えない。始末をするか、もっと良い場所を探して囲うとしなければ。少なくとも、女の正体が何者なのか問いたださなければならない。

 自分自身の中に生じた異常の訳を探る為にも。

 朝の臭いに交じって、王の巡察を告げる角笛の音が、遠くから聞こえてくる。

 オヴェウスは小さく舌打ちをすると、自らの革鎧に手を伸ばし、そして止めた。

 革鎧の胸元の傷が、まるで彼をあざ笑うかのように、大きく口を広げていた。

 そして、違和感の正体に気づいた。

 今朝は、あの音が聞こえない。

 四六時中、そう、常に鳴り響いていた筈の、あの竪琴の音が。



 「恐ろしい目に、あったと聞きました。もう大丈夫なのですか」

 リネットに尋ねられ、洗い物をしていた黒い髪の女は、少し肌色の悪い相貌を彼女に向けて、小さく頷いた。

 「はい、戻るのが遅れて、申し訳ありませんでした。祖父の下で一日多く休ませていただきましたので」

 「それは良いのですけれど。でも、本当に無事で良かった」

 「ありがとうございます」

 館の女主にかけられた気遣いの言葉をうけて、気恥ずかしそうにとセヴィアは笑った。

 セヴィアは町はずれの実家から、泊まり込みで奉公にきており、月に一度給金とともに家に帰る。つい先日、家に戻った彼女は、最近城下に多くなった流れ者にかどわかされて、危うく慰み者にされるところであった。

 森に連れ込まれ、危ういところを一人の騎士に助けられたという。

 だいぶ恐ろしい目にあったと見える。まだ血の気が引いた表情で、いつも物静かな娘だが、今日はそれ以上に言葉数が少ない。

 「助けていただいた方のお名前は、お聞きになりました?」

 リネットが尋ねると、セヴィアは申し訳ない様子で首を横に振った。

 「その時は恐ろしくて、つい失念してしまいました」

 「そう。それでは仕方ありませんね。なんとかお礼を申し上げたいのですけれど」

 「すみません」

 「謝る事ではないのですよ」

 リネットはこの従順で物静かな娘が、どれほどの恐怖を味わったのかと思うと、いたたまれない気持ちになった。

 年が近いこともあり、身分の差はあるものの、まるで友人のような親近感がある。考えてみれば、今でこそ邸宅に住んではいるが、リネット自身、幾度も放浪の辛さを味わった事があった。

 ギルバーン家は決して裕福ではない。かつてベンウィックに領地を頂いていた頃は、それなりの暮らしが出来ていたが、ランスロットの事件の後、状況は激変した。

 バン王は息子の暴挙を知り、偉大なる王の矛先が向くのを恐れ、ひそかにメルラウド卿と通じた。しかし、それもむなしく、偉大なる王は従兄のケイ卿を大将とした一軍をベンウィックに派遣し、数か月の戦争を経て彼の地を制圧した。

 ラディナスはその際、ランスロット卿を逃がした罪を恥じ隠居を申し出ていた。戦に参じなかったので、直接の罰は逃れたが、戦後の処置において、領地の殆どを没収された。

 母が病没したのもその頃だ。

 リネットは父を愛してはいるが、心のどこかで恨むようになった。

 サクソン人の北上が始まると、ラディナスは危険を避けて、知己の元を訪ね歩くようになった。その中で長城を守るブリトンの遊軍に加わり、ようやく落ち着きかけたところで、ルグヴァリウム城が騎士を集結させているという噂を聞いた。

 エイノール王は参じたラディナスに、最高の礼をもって迎え入れ、このような邸宅を与えてくれた。リネットも拝謁したことがあるが、当時のエイノール王は穏やかで、父が仕えるに値する人物なのだろうと思った。

 それが、まだほんの数年前の事だ。

 今眼前にいるセヴィアは、かつての自分とそう変わらない。

 気が付けば、微かに震えている娘を前にして、リネットは自らが主人として振舞うことなどできなかった。

 「先ほど、使いの者を出して、お家の方に改めて給金を届けさせておきました」

 「えっ? その様な」

 驚いた顔でセヴィアがリネットを見た。

 「お父様のお許しは得ています。良いのです」

 帰省の途中で襲われたのだ、彼女がそれを失った事は容易に想像できる。憎むべきは堕落した騎士や兵達だ。何かを生み出すことの無い彼らにできる事は、護る事だ。それなのに、今やその殆どが誇りも夢も失い、護る側から奪う側へと変化している。

 「そこまでして頂けるなんて。・・・本当に申し訳ありません。私が悪かったのです。帰り道、もう少し気を付けていましたら」

 「貴女が戻ってきただけでも、私は嬉しいと思っています」

 リネットは本心からそう言った。

 彼女が戻らなかったら。それを思うと、気持ちが一気に暗転する。彼女を取り戻してくれた英雄には、どれほど感謝しても、感謝しきれるものではない。

 「でも、本当にどなたなのでしょうね。貴女を助けてくださったのは。それほどまでに強い騎士様でしたら、名のある御方だったかもしれませんね」

 リネットは想像を膨らませながら言った。

 「はい、でも、騎士様というより、戦士のようなお方でした」

 「戦士のような?」

 「馬にはお乗りにならず、連れても居りませんでした。それに、太い剣を二本も同時にお使いになるんです。まるで鬼神のようでございました。あと、不思議な事に、従者ではなく、森の民を従えておられました」

 「まあ」

 双剣の戦士。騎士ではないのだろうか。

 リネットの脳裏に、二本の剣を持つ端正な男性の姿が浮かび上がった。その顔が、どこかキリアムに似てしまう。

 「そういえば」

 セヴィアがはっとしたように言った。

 「私を町まで連れてきてくれた御方の名前はお聞きしました。・・・森の民で、まだ、子供でしたけど」

 セヴィアの顔に少し赤みが戻ってきた。

 「そう、ビオラン様。南の森のビオラン様と、仰っていました」



 地下牢の固い石床は冷たく湿って、そこに座る二人の体から、少しずつ体温を奪っていた。デリーンがまだかすかに震えるのを見て、グリンガレットは少し身を寄せた。デリーンを覆っていた薄布を二人で纏い、体を寄せると、互いの体温が伝わってくる。

 「ありがとう」

 小さな声でデリーンが言った。

 僅かな時間の中で、不思議な連帯感が生まれていた。

 デリーンはオヴェウスを知っていた。彼の生い立ちの一部を、そして、彼がデリーンの村に対して行った裏切りの事実をグリンガレットは聞いた。

 「あの男は、あたしが住んでいた森の長、・・・森の神の神託を司る一族の下で育てられていた。生まれがどこかは知らない。拾い児だったと聞いてる」

 デリーンは辛い過去を、少しずつ絞り出すような声で話した。

 「乱暴者で、皆があいつを嫌っていた。村の掟も気にしない奴だった。あいつのせいで何人もの仲間が危険な目にあったりもした。だけど、長はあいつを庇っていたし、それ以上関わらなければいいとだけ思っていた。・・・あの日までは」

 「あの日、ですか?」

 「ああ」

 デリーンは、村が炎に包まれたあの日、・・・オヴェウスの裏切りと手引きによって、大切な妹と許嫁を失った時の話を語った。

 あの光景を、彼女は決して忘れることが無い。そこから生まれた憎しみと悲しみの強さが、今のデリーンを支え、ここまで彼女を培ってきたのだ。

 全てを語り終えると、仇を討ち損ねた自分を責めるように、デリーンは唇をきっと噛み締め、眉間に苦渋を滲ませた。

 「やっと見つけたんだ。それなのに、仇を討てなかった。・・・あたしの矢は確かにあいつを貫いたはずなんだ・・・、だけど、あいつは死ななかった」

 デリーンの記憶が、昨夜の情景を呼び覚ましていた。オヴェウスが剣を振り回しているその背を、彼女の矢が正確に射抜いた瞬間を。

 デリーンははっとしたように顔を上げて、グリンガレットを見た。

 「そうか、あんたか、昨夜あいつと戦っていたのは。小柄な奴だなとは思ったけど」

 グリンガレットは少しばつの悪さを感じながらも、こくりと頷いた。

 「お恥ずかしい、・・・私とした事が、不覚を取ってしまいました」

 自分がいかに見苦しく倒れたのかを思うと、やるせなさが募る。

 「あんたは、あいつとどういう関係なんだ。あいつの事を、・・・今のあいつの事を知っているのか」

 「知っている、という程ではないのですが」

 グリンガレットは、困ったように首を傾げた。

 「オヴェウス・・・今はオヴェウス卿というべきでしょうか。あの方は今、とある騎士の末裔を名乗られています」

 「馬鹿な」

 デリーンは絶句した。

 「少なくとも、この城ではそれで通っています。おそらくはデリーン殿が仰られている事の方が真実なのでしょう。私自身、あの方の振る舞いや言動を見る限り、騎士の血を引く者とは、到底思えませんでした。・・・でも、彼の持つ剣が、彼の証となっております。そこに偽りがあったとしても、私にはそれを実証する術がありません」

 正統なやり方では、という言葉を心の奥に押しとどめて、グリンガレットは言った。

 「それだけで、騎士で通るのかい。この城の連中の目は腐っているのかね」

 デリーンは呆れた表情になった。彼女はどうやら、思うままに言葉にするところがあるようだ。もっとも、この件についてはグリンガレットも彼女に同意見だった。

 少しの間沈黙があった。おそらく、追い込まれてしまった現状について、デリーンは自分の中で整理をしているのだろう。グリンガレットが、黙って次の言葉を持っていると、急に彼女の視線が自分に向けられた。

 「で、あんたは?」

 唐突に聞かれて、グリンガレットは少し身を引いた。

 「私ですか」

 「そうさ、あんたとオヴェウスの関係さ、何であんな所で、剣を交えていたんだ?」

 デリーンの目が少し鋭さを増していた。その眼には、疑いというよりも、森の民特有の純朴さと、その奥に包まれた好奇心が浮かんでいた。

 「ただ、襲われただけです」

 言葉少なく返したが、デリーンは即座にその嘘を見抜いた。

 「オヴェウスは仮にも騎士を名乗っているんだろ、城下で理由もなく人を襲うとは思えないな。それに、あんな場所でドルイドの術を使っていたのは、もしかしたら、あんたじゃなかったのか?」

 グリンガレットは自分の嘘の下手さを後悔した。

 デリーンは森の民だ、ドルイドの術が使われたことに気付いたのは不思議ではない。

 あのドルイドの術が、オヴェウスを招き、結果的にはこのデリーンを招き寄せた。もちろん、オヴェウスに関しては、・・・彼が自分に近づいてきた事は、それだけが理由だけではない。彼は間違いなく、自分に引き寄せられたのだ。

 「仔細はありますが、・・・デリーン様に、お話すべきことでは」

 言いかけた彼女の言葉を、デリーンは制した。

 「そのデリーン様っての、止めてくれないかな」

 「あ、すみません」

 「いいよ、デリーンって呼び捨てにして。そのかわり、あんたの事も名前で呼ぶけど、良いよね」

 「私は構いません」

 デリーンは少し相好を崩した。

 「良かった、あたしは堅苦しいのは苦手でね。それで、もう一回聞くけど、グリンガレット、あんたオヴェウスと何か関係があるんだろ」

 「関係などと、そのような」

 「無いとは言わせないよ。オヴェウスの様子も尋常じゃなかった。あいつ、あたしの矢を受けても平気だった。まるで、不死身にでもなったみたいにね。

 ・・・何か、その訳を知っているんじゃないのか。そうでなけりゃ、あいつが手も出さずにあんたをこんな牢につなげる理由がわからない」

 「オヴェウス卿にも、その理由が解っていないかもしれません」

 言うと、デリーンはさらに厳しい目になってグリンガレットを見た。

 「だけど、あんたには解っている」

 「何故そう思うのですか?」

 「そういう顔をしているよ」

 「え?」

 思わず両頬を手で抑える、その様子に、デリーンは口角を上げた。

 「グリンガレット、あんたって嘘のつけない人だね」

 デリーンの言葉が、柔らかくグリンガレットの心に刺さった。

 一瞬言葉に詰まり、口をぽかんと開く。ややしてから、不思議そうな口調で、グリンガレットはうつむきがちに答えた。

 「私、・・そんな風に言われたの、初めてです」

 「そうかな。まあ、その雰囲気だと、そうかもね。」

 グリンガレットは改めてデリーンを見返した。

 デリーンの言葉にこそ、嘘を感じない。真っ直ぐで、飾り気がなく、そして清々しい。そんな彼女にかけられた言葉だからこそ、グリンガレットは自分の内側を見透かされたような感覚に、無意識に怯えた。

 「私は、嘘つきです。どちらかといえば」

 「誰だって、嘘くらいつくさ。でも、悪意はないんだろ、お姫様」

 「なんですか、お姫様って」

 「そう見える」

 「・・・」

 真剣な話をしている最中だというのに、デリーンは何を言い出すのだろう。グリンガレットは言葉を失った。悪気のひとかけらも無さそうに、この森の民の女は、悪戯っぽい笑みを浮かべている。

 デリーンには、特別グリンガレットををからかうようなつもりはなかった。ただ、あまりに真面目な様子を見ていると、つい余計な言葉が出てしまう。

 だが、彼女はそれを許してくれるだろうと思った。会ったばかりなのに、このグリンガレットという娘には、親近感さえ覚える。先ほどは少し怖いような雰囲気さえ感じたのに、話していると、それを上回る興味がどんどん湧いてくる。

 デリーンは、グリンガレットが何かしらの力で自分を救ってくれたことも感じ取っていた。

 森の民として生まれ、故郷の村を失い、混乱と放浪の中で生きてきた彼女にとって、グリンガレットが持つ、柔和でありながら、どこか人を拒絶するような雰囲気には、以前、自分自身が身に着けていた心の鎧を感じさせる。そして、何だろう、懐かしい匂いだ。それが、デリーンが彼女に覚える親近感の所以かもしれない。

 「・・・最初、正直ちょっと怖く感じたんだ」

 デリーンは正直に言った。最初にグリンガレットを見つめた時に感じた畏敬の様な感覚。それもまた真実だ。

 「怖い、私が、ですか?」

 デリーンは頷いた。

 「ああ、綺麗で聖女みたいなのに、すごく冷たい感じがした。でも、やっぱり、それも違うような気がする。きっと、あたしと一緒で、辛い思いをしてきた人かもって、思った」

 グリンガレットは、無意識のうちに動悸が早まるのを感じた。

 この女性はいったい何者なのだ。

 こんな短時間で、僅かしか言葉も交わしていないのに、まるで自分の事を昔から知っているかのように言う。ずかずかと、自分の中に入り込んで来ようとしているようだ。

 でも、こういう話し方をされるのは、嫌ではない。

 グリンガレットは自分の顔に、微かに朱の色が差し込んだのを気付かなかった。もっとも、地下牢の暗がりのせいで、それは相手にも伝わりはしなかったが。

 「貴女・・・デリーンはなんで、そんな風に私を言うのですか」

 「何で、かな。命の恩人だから・・・じゃあ、ないな」

 デリーンにも、何故自分がこのような話をしたのか判らなかった。ただ、グリンガレットの事をもっと知りたいと思った。これは、デリーンにとっても珍しい事だった。そして、何故かその心に触れたくなる魅力を、そう、男女の枠では収まることの無い魅力を彼女に感じとっていた。

 「あたし、あんたの事、好きになりそうなんだな」

 「好き、ですか?」

 グリンガレットの頬に、一層の驚きと戸惑いが浮かんだ。

 「ああ」

 デリーンは裏表のない顔で頷いた。

 「友達になれそうだって意味だよ」

 「あ、ええ、そうですよね」

 「そうだよ」

 屈託ない表情でデリーンが笑う。それを見て、グリンガレットは何故かほっとした。肩の力が一気に抜け、全身の筋肉が緩むのを感じる。

 そのうちに、思わずグリンガレットは笑い出していた。一度笑い出すと、気持ちがすっと晴れる感覚が流れた。久しぶりだ、こんな風に笑うのは。

 一瞬、地下牢に繋がれた現状を忘れるほど、二人は笑った。

 グリンガレットが微かに鼻をすする音がした。笑顔の隅に、微かに光るものがあった。

 寒さを紛らせるように、更に強く肩を寄せると、グリンガレットは、少しだけ彼女に体重を預けた。

 「難しい事情があるみたいだね。その位はあたしにもわかるよ。でも、あたしはあいつを倒して、仇を取りたいんだ。その為に、グリンガレット。あんたが何か知っているなら、教えて欲しい。もちろん無理にとは言わないよ、話せるだけ、話せる時でもいいから」

 優しく言葉をかけられ、グリンガレットはこくりと頷いた。

 なんだろう、この感覚は。自分が知らない感覚だ。それも、決して嫌な感覚ではない。

 グリンガレットは胸の内が暖かくなるのを覚えた。

 デリーンの方が痩せているが、背が高い。少し上目がちになって、グリンガレットは彼女を見上げた。

 話しても、良いかもしれない。

 キリアムにも話さなかった事を、この女性になら話しても良いかもしれない。・・・いや、話さなければならない。

 彼女は既に関わってしまった。私の運命に、呪いに。

 私の力を、ほんの少し与えたのは、彼女を救うためにしたことだ。それでも、その事実は永遠に消えない。

 それに。

 何故かは分らないが、この女性は、私の味方になってくれる、そんな気がする。

 「私の事を、・・・少し面倒な話なのですが、お教えします。聞いていただけますか」

 デリーンは頷いた。

 「私にも、全てが解っているわけではないのです。むしろ、分からないことの方が多いのです。それでも、私は自分の運命に、・・・宿命に抗いたくて、ここに来ました」

 グリンガレットは、自分自身が不思議だった。

 自分はどこまでも打算的な人間だ。騎士の栄光に憧れながら、心のどこかで常にそれを否定し、言葉の全てを感情ではなく、理性で押さえつけようとして生きてきた。そうする事でしか、自分の運命には逆らえないと思ってきたからだ。

 だが、この会ったばかりの女に、今から自分が話をするのは、決して何かしらの目的や計算があるからではない。感情が何処で狂っている。それでも、このデリーンという森の民に、彼女は信頼を超える何かを感じる。

 「私は今、オークニー王の後継者、・・・バースの騎士、キリアム卿の従者をしています」

 グリンガレットは言葉を選ぶように、ぽつり、ぽつりと話し出した。

 デリーンはバースもオークニーもよく知らなかった。だが、静かに聴いていた。

 「それは私が選んだことです。オークニー王の従者であることは、私の誇りです」

 言いながら、少しずつ気が沈むのを、彼女は感じた。

 この言葉は嘘だ。自分はまだ、彼に王権を与えることに、心の底からは納得していない。

 グリンガレットはキリアムの相貌を思い浮かべた。

 彼に対する思いには、複雑なものがあった。

 キリアムは、私が、私の宿命と戦うために「利用した」男、そう割り切ってしまいたい。この城において、自分が自由に動くための囮。そんな風に考えてしまえれば、どんなに楽か。

 それなのに、彼を思うと、苦しい。この苦しさの理由が解らない。

 自分が彼に与えた「王権」は、全てが戯れではない。彼にとって、今は戯れかもしれないが、自分にとっては既にそれは「真実」なのだ。それを彼が知ったら、彼はどう思うのだろう。

 それに自分は、彼が自分に寄せた信頼と好意を知っている。そして、彼の誠実さを、彼女自身も好ましいものと感じている。判っていながら、それを利用している。

 グリンガレットは自分の心が二つに割けている事を感じていた。自分でも理解できない、相反する二つの思い。自らの宿命が持つ業なのか。しかし、その奥に、本当の自分のおぞましき本性があるように思えてならない。

 あの御方のように。

 脳裏に浮かぶ影を振り払うように、グリンガレットは髪を掻いた。

 感情が燻っている。この血の滾りを、彼女は嫌悪していた。

 「私は、王の従者であるとともに、もう一つのものに仕えています。それこそが、私の宿命であり、あの男の、不死の力にもつながる答えです」

 言葉に、目に、闇が目覚める感覚が湧いた。

 「私は緑の騎士の従者です」

 抑え込むように、グリンガレットは言った。

 「いえ、従者というよりも、緑の革帯の奴隷なのかもしれません」

 「奴隷だって?」

 穏やかではない言葉だ。デリーンは思わず口を挟んだ。

 「何者なんだ、その緑の騎士って。キリアムとかいう騎士ではないのか」

 グリンガレットは横に首を振った。

 「緑の革帯を持つ者の事です。それを身につけた者に、不死の力を与える緑の革帯の話を、デリーンはご存じではありませんか? 今も騎士たちの間には語り伝えられている、偉大なる王の世に生まれた、力の結晶です」

 「不死の力。そんなものが本当に」

 「デリーンも見たはずです。昨夜、その力を」

 「・・・!?」

 グリンガレットは深く息を吸いこみ、中空を見上げた。

 「崇高なる騎士に与えられし祝福。騎士の中の騎士だけが身につける事を許される、栄誉の象徴。噂は噂を呼び、そのように囁かれてきました。しかし、それが忌むべき呪いの力である事を知る者は、おそらく、今の世では、殆ど居りませんでしょう。・・・そして、この呪いの源に居る者こそ、私なのです」

 「言っている意味が、良く分からないんだけど。あんたが、呪いの源って・・・」

 「言葉の通りなのです。不死の力はすなわち、その革帯を身につけた者の傷や痛みを、源である代償者に求め、贖うのです。つまり、私がその身に引き受けることで成り立つのです。私が側にいる事で、革帯はその力を呼び覚まし、そして、私もまた革帯によって生を保たれている。私は、この痛みと死の恐怖を代償に、幾年もの間、生かされているのです」

 デリーンの中で、様々な疑問が一気に廻った。

 何かしら事情を抱えているとは思ったが、彼女の想像をはるかに超えた告白だ。かつて様々な奇跡や魔法がこの世に存在していたことは知ってはいるが、その一つが、彼女の言う緑の革帯なのか。

 「なんだってそんな事になっているんだ。緑の革帯と、どうしてあんたが、・・・その代償を払う事になったんだ」

 「どうしても何も、生まれた時から、・・・そう、私にはこの世に生を受けた時から、宿命として定められた事なのです」

 寂しげに、グリンガレットは言った。

 「私は革帯とともにこの世に生まれました。そうなる宿命を生きるために、あの御方は私をこの世に送り出したのです」

 「あの御方って誰さ、親の事じゃなくて?」

 グリンガレットは首を振った。

 「私は母も父も知りません。ですが、その御方には娘と同じような地位を頂きました。物心ついた時には、その御方の下で、何の疑問も抱かず、育てられていました」

 「何だか、複雑な話だね」

 「話が下手で、すみません」

 「あ、違うんだ、大丈夫だよ」

 デリーンは慌てて続きを促した。せっかく話してくれたのに、下手な相槌で言葉を止めてもいられない。

 「私は、緑の革帯とともに、それを持つにふさわしい騎士に仕える事が自らの使命と教わり、育てられました」

 こくり、と、デリーンは頷いて見せた。

 「清廉たる心を持つ騎士を救け、奇跡によって騎士の世を讃えるための従者。

ですから、あの御方がそれと見染めた騎士に革帯を与える時、私も同時にその騎士に与えられました。革帯の守護者として、騎士の行いを見届けるものとして。

しかしそれは、私の真実の姿ではありません。私の本性は、むしろ、その逆の立場にある存在なのです」

 デリーンには、今一つ話が理解できていなかった。だが、彼女のこの告白は、もはや自分に向けられているものではないと感じた。

 今、グリンガレットはデリーンへの告白という形で、自らの心に鬱屈させた思いを吐き出し、自らを納得させようとしているのだ。

 おそらくは、最悪の形で、今の自分の「主」が、誰であるかを理解したがゆえに。

 「辛い話みたいだね。でも、もう少し話してくれるかな」

 デリーンが訊くと、グリンガレットは頷いて、少し体を前のめりに折った。

 「私の中には、もう一人の私がいます。それは、言うなれば『誘惑』という呪いを負った私です」

 グリンガレットの相貌に、最初にデリーンが彼女に見た影が宿っていた。その影の正体が見えた気がした。恐怖や悲しみではない。苦痛、これは彼女の苦痛ではないだろうか。

 「私は『誘惑』によって、騎士を試すために生まれた存在なのです。・・・いえ、本当はもっと酷い」

 グリンガレットは自分の掌を見つめ、肩をわななかせた。その手に、何か形にならない何かを掴むように。

 「緑の騎士に仕え、不死の力を与え、すぐ側にいながら、その騎士を『誘惑』する者。清廉なる最高の騎士を「不死」という甘露で『誘惑』し、欲望を知らしめる事で堕落させる者。・・・騎士道を貶める為、ただ、その為だけに、あの御方は、私を作られたのです」

 グリンガレットの目が、少しずつ冴えた輝きを帯び始めていた。

 『誘惑』の呪い。

 それは未だに彼女を捉えて離さない。意思とは関係がなく、気が付けば彼女は誰かを誘惑し続ける。そう、今も。

 あの哀れな老婆に銀貨を掴ませ、己の醜さを自覚させたように。

 清廉な騎士キリアムに、剣を求める悪鬼の所業を起こさせたように。

 そして、彼がグリンガレットの従者となる事を願い、自ら膝をついたのも、この『誘惑』がなせる力か。

 「でも、今の話しぶりだと、あんたは、そんな宿命が嫌なんだよね。だから苦しんでいる。そうだろ。その気持ちが強いなら、呪いなんて、何とかなるんじゃないのか」

 「確かに、私は、自らの行いの罪深さに気付きました。それは、多くの騎士たちが、私に身を挺してまで騎士道を教えてくださったからです。

ですが、それまでには、沢山の死や悲しみを、私は生んでしまいました。私が今こうしているのは、その贖罪の為でもあるのです」

 「それは、・・・そうなのかもしれないけど。そういうのって、あんたの思い込みすぎって事はないのかい?」

 グリンガレットは首を振った。

 「不死の代償に、私が痛み苦しむ事を知ると、革帯を得た騎士は誰しもが苦悩しました。しかし、生死をかけて戦う者だからこそ、不死の力がもつ魅力に、彼らは逆らうことはできません。不死はいつしか、その者に傲慢を与え、そして、それを失う事への不安と疑念を植え付けます。

無垢にすら見える私を苦しめる後ろめたさと、不死を望む自らの欲望。それらの葛藤が、彼らの心を蝕み、遂には身を滅ぼしていく様を、私は側で見続けてきました」

 デリーンは言葉を失った。

 「私は、騎士の従者であり、緑の革帯の従者です。『誘惑』しながらも、決して愛情を抱く事はありません。だからこそ、・・・私が望まぬからこそ、私を欲する騎士たちは、苦しむのです。私が望まぬ以上、私の『誘惑』に屈することは、彼らの騎士道が失われる事を、そう、堕落する事を意味します」

 彼女自身も気づかぬうちに、グリンガレットは微笑んでいた。背筋が凍るほどに、美しい微笑。

 「それこそが、あの御方が、私に与えてくださった使命。私の全て」

 グリンガレットの指が、艶めかしく彼女の唇に触れる。「あの御方」という言葉を話すたび、そこには陶酔にも似た感情が垣間見えた。それが誰なのか、デリーンは、まだ聞くことが出来なかった。

 「私を側においた方、・・・幾人もの騎士達。ガルロットのネントレス様や、あの名高いベルティラック様もそのお一人でした。皆、私を側におくことで、苦しみ、悩み、惑われました。私はそれが楽しかった。騎士道を貶めること、それこそが私の喜びだとさえ思い、そう信じていました。それが当然の事だと思っていたからです。・・・ですが」

 グリンガレットの瞳に、意志が戻り始めていた。誰かを思い出したのだ。

 「グァルヒメイン様は違いました」

 騎士の中の騎士。グリンガレットが、唯一心の底から自らの主と認めた騎士の名だ。

 その名前が唇を突いた瞬間、彼女はグリンガレットに戻っていた。瞳の色が、唇が、指が、妖気を失い、もとの聖女を思わせる表情に変わっていく。

 「あの方は、私の行いが過ちだという事を、言葉ではなく、その行いで私に教えてくださいました。そして、本当に罪を負うべきは私ではなく、呪いを生み出したものにあると、私をお許しくださいました。・・・あの方だけが、この呪いから私を本当に救おうと為さって下さいました」

 円卓の騎士グァルヒメイン。

 森の民デリーンですら、その栄光の名は聞き及んでいる。若かりし頃は太陽の騎士とも、草原の鷲とも異名をとった英雄だ。

 「グァルヒメイン様は、私に、本当の騎士の心を教えてくださいました。あの方にお仕えして、私は初めて自分の意志というものを持つようになれたのです。・・・それでも、あの方は私を救うことが出来ないと悟ると、ある時、革帯を私の知らない遠くへとお隠しになりました」

 革帯と離れることで、少しでもグリンガレットが苦しまないようにと、思ったのだろう。それが彼の優しさと最後の強さだった。だが、それは全ての解決ではなかった。

・・・結局革帯は自分を求め、私もまた革帯を探している。

 この行為は、本当に自分自身の手で革帯とのつながりを断ち切りたいためなのか、それとも、その思いすら革帯に引き寄せられているだけなのだろうか。

 それはグリンガレットにも答えが出てはいない。

 「あの戦いの後、グァルヒメイン様を失った私は、自らの手で、革帯をこの世から消し去るしかないと、それ以外に私が宿命から逃れる術はないと悟りました。さもなければ、・・・革帯は、これまで以上に大きな災厄のもとになるやもしれません。

 呪いは既にその目的を失いましたが、時がたつほどに、その悪意のみが残され、力を増しています。いずれ、私自身の手にも負えない程に、そうなってからでは遅いのです」

 恐ろしい想像が、今や現実のものとして、グリンガレットにのしかかってきていた。

 デリーンは、昨夜何が起こったのか、ようやくその理由を理解した。同時に、途方もない状況を前にして、自分の無力さだけが痛い程に募ってくる。もっとも、その無力感を感じているのは、自分ではなく目の前の彼女の方だ。

 小さく細いその肩に、この娘はどれだけの過去を背負ってきたのだろう。

 グリンガレットの背中をそっとさすって、デリーンは自分があまりにも深いところまで、彼女の心に踏み込んだことを後悔した。それでも、グリンガレットの言葉には、あきらかに彼女自身の強い意志が滲んでいた。

 「革帯を、あいつが、持っているんだね」

 デリーンの問いに、グリンガレットは小さく頷いた。

 グリンガレットは、まるで折れそうな程、可憐に見えた。優しく、嫋やかな眼差し。この眼差しをデリーンは知っている。

 ああ、と、デリーンは自身が彼女に抱いた親近感の、本当の理由に気付いた。

 彼女は、あの娘に似ているんだ。

 あたしが無くした、大切な妹。そういえば、こんな声をしていた。

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