第27話 日没
ゾンビスーツが破れているので着替えをしよう。
遊水池の階段で隠していたスペアのゾンビスーツに着替える。
左の脇腹から出血していた。
モヒカンのヤリをワキに挟んだせいだ。
この程度の傷ではゾンビに感染しないと思う。
もっとガッツリとゾンビ汁が入らなければ感染しないはず。
傷に消毒液をかけてガムテープを貼った。
俺はモヒカンメンバーがいつ加勢に来るかと警戒している。
だがメンバーに動きはない。
決めた時刻までは動くなとリーダーが強く命令していたようだ。
日没までの時間から逆算すると16時が限界か。
スーツの着替えが終った。
この新しいゾンビスーツの頭部には紙袋がかぶせてある。
俺はヤリを放置して遊水池のゾンビの群れの中へ入って行った。
遊水池には強い焼きナッツ臭がたちこめている。
数百体のゾンビの中央まで進んだ俺はゾンビヘッドの紙袋を捨てた。
そしてゾンビスーツの着ている服をナイフで切り捨てた。
これでもう他のリアルゾンビと見分けがつかない。
もしモヒカンメンバーが双眼鏡で観察していても見分けがつきっこない。
裸の大男ゾンビの数も多いのでまぎれてしまう。
夜になるのを待って遊水池を離れよう。
決闘は終わったんだ。
そろそろ薄暗くなってきて時間が来たのかモヒカンメンバーがリーダーを迎えにきたけれどピクリとも動かないリーダーを抱えて立ち去ろうとしている、俺がやったんだから俺がやってしまったんだから決闘なんだからリーダーのフェアネスを讃えたまえよストロングを生かしたまえよ頑張りたまえよ誰か責任を取りたまえよ誰か責任を取りたまえよ誰か責任を取りたまえよ、このゾンビだらけの狂った世界の責任を、迎えにきた二人のモヒカンのうち一人は背の高い大男だな、お前、良い目をしているな良い皮をしているなメンバーの大男のお前良い皮をしているな、ダメだダメだこの考えはダメだモヒカンメンバーは大男とはいえまだ人間だし感染もしていないし今後良いスーツ用ゾンビ皮になりそうだと目を付けておくのはスーツ道に反するのだぞヨシヲ、スーツの暗黒皮面に落ちてはいけない生きている大男をわざと感染させてスーツ皮を奪うというのはダメだ、いくら俺の外見がゾンビスーツでも心までゾンビになってはいけない。
夜になって遊水池を離れた俺は隣の市へ歩き始めた。
追跡が来ないことを確認して隠してあった食糧リュックを集める。
大量の食糧を運ぶには時間がかかってしまう。
そこで俺はゾンビのチカラを借りることにした。
カン、カン、カン、カン、カン、カン、カン
空き缶をナイフで叩くとゾンビが寄ってきた。
寄ってきたゾンビ5名に重いリュックを背負わせた。
リュックを背負わせる時にゾンビたちは
「え、それ、何してんの?」
という表情をしたが俺に人間臭がないのでガブリはされない。
カン、カン、カン、カン、カン、カン、カン
5名のリュックゾンビと大量の群れゾンビを率いて俺は歩く。
まるで「ハーメルンの笛吹き男」みたいだな。
カン、カン、カン、カン、カン、カン、カン
俺とゾンビの群れは新しい市街地へ入った。
「ハーメルンの笛吹き男」のラストは130人の子供と洞穴エンドだったな。
カン、カン、カン、カン、カン、カン、カン
俺はポケットの中の細長いモヒカン皮を触って確めた。
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