第13話 トラック
ボボボボボボボボ。
車のエンジン音が聞こえるということは人間がいる証拠だ。
食糧を求めて隣の市に入った俺はエンジン音の方向へ歩いた。
走るか?いや、ここはウォークだ。
落ち着いて行こう。
俺のゾンビスーツは重量がある。
持ち物もかなりの重さだから走ればすぐに息が上がる。
それにダッシュをすれば何かに引っ掛けてスーツを破く恐れもある。
たとえば金網に引っ掛けてゾンビスーツがビリっと。
そうなればゾンビたちが寄ってきてしまう。
落ち着いて歩こう。
交差点を曲がると1台の奇妙なピックアップトラックを見つけた。
なんだあの車はムニュっとして気味悪いボロ布巻いてんのか良く見りゃ車体の外側にゾンビがぶら下がっているじゃねえかドライバー悪趣味かフロントガラスからは車内のモヒカンが見えるコレが世に聞く世紀末なのか車体の外にぶら下げてる20人分ほどのゾンビは中身が抜かれているゾンビ皮だけだなペラペラ俺はゾンビスーツを自作してるから遠くからでもすぐに分かるんだよゾンビスーツ・よしおをなめるなよトラックの荷台には十数本のヤリが積んであるが対ゾンビ用であることを願う。
ピックアップトラックの荷台には数十本のヤリ。
車体の外側にはゾンビ皮が吊るしてある。
なるほど、車体をゾンビ皮でカバーすればゾンビが寄ってこないわけだ。
もしもエンジン音でゾンビが集まっても車体をバンバン叩くことはない。
叩かれないということは車のガラスを割られないということになる。
つまり車の中が安全地帯となるわけだ。
ゾンビは同類を襲わない原理を使っている。
あのモヒカン、馬鹿じゃないな。
この時期までサバイバルできていることがそれを証明している。
自動車にゾンビ皮を貼り付けたゾンビ・レザー・カー。
略してゾンビ・カーだ。
フロントガラスはさすがに前が見えなくなるので皮にスキマがある。
スキマから複数のモヒカンの男が見えた。
俺はダブルピースをして人間であることをアピールすべきかと一瞬考えた。
いや、あせるな。
あのモヒカン族がどういうやつらか分からない。
ここはゾンビであると偽装して近くまで行って様子を見てみよう。
野良ゾンビなら簡単には襲われないはずだ。
可愛い地域ゾンビのフリをすればむやみに殺生はするまい。
ゾンビスーツはゾンビ、人間、両方に偽装効果がある。
ゾンビには人間であることがバレずに襲われない。
人間にはゾンビであると偽装することができる。
ココまで生き残っている人間は何かしらの食糧の入手手段を持っている。
つまり人間が人間を襲う理由は充分あるということだ。
ボコって生きたまま捕えて食糧の隠し場所を吐かせるというような。
まあゾンビに偽装している俺は安全だ。
トラックの近くまで歩くと車内からモヒカンがヤリで突いてきた。
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