ゾンビスーツ・よしお

おてて

第1話 ゾンビスーツ

俺の名前は、よしお。

これから目を付けていた大男ゾンビを捕獲してゾンビスーツを作る。

情報によればゾンビの弱点は頭部破壊と首の切断だ。

俺は玄関を出て前の道路の大男ゾンビに接近した。

マイナスドライバーで頭を刺すと情報通りゾンビは停止した。

俺は自宅玄関に大男ゾンビの遺体を運び込んだ。


まず床に寝かせたゾンビのウェスト部分を包丁でグルリと切断した。

血だらけの背骨を叩き折ると上半身と下半身に分けられた。

上半身がジャケット、下半身がズボンになるわけだ。

胸部を縦に大きく切って背骨やあばら骨を取り出した。

下半身も腰骨や大腿骨などを取り出した。

脂肪や肉などは軽くするためにそぎ落としたいのだが、ある程度ついていないと意味がない。

胸部の切開部の皮を太めの糸で縫い合わせたら完成だ。


さっそく試着してみよう。

ゾンビズボンをはいてみる。

ゾンビジャケットは上からガボッとかぶる感じで着る。

サイズは悪くない。

俺の目の位置はゾンビの胸元の切開部のスキマに当たる。

俺の頭はゾンビスーツの首の下までしか入らないので奇妙な感覚だ。

他人から見ればゾンビの首がやけに膨らんでいるように見えるだろう。

しかし遠目では分からないし近くでも腐敗ガスが肺にたまっているように見える。


玄関内が猛烈にゾンビ臭くなってきたが、あとには引けねえなと思っているし餓死したくないし臭すぎて心が折れそうになるけれども、それにつけてもこのナッツ臭、いや違うな、ただのナッツを焼いた時の香ばしい香りではないゾンビ臭、ナッツに何を混ぜたらこんな嫌な匂いになるのかというような強いな匂い、どうやったらこんな嫌な匂いが出せるのか感心するほどの焼き方であるのだが我慢するしかないし俺は我慢できると思いこむしかなさそうだし別にナッツを焼いているわけではないから焼き方に文句を言うのは理不尽だし、俺はまだ死にたくない。


もう1カ月になる。

日本でもゾンビが出現し始めたというニュースを聞いてから。

最初はスマホやラジオでゾンビ災害情報が流れていた。

しかし2週間で街にパニックが起きた。

地震や台風なら復旧できるがゾンビの感染爆発に人々は耐えられなかった。

ほどなく政府機能がマヒした。

俺の街もゾンビだらけになり皆、自宅に籠城した、と思う。

水は雨水を貯めたり風呂を我慢したりで何とかなった。

しかし食糧は備蓄を2週間で食べつくした。

数週間あれば救助が来てくれると願っていたが甘かった。

俺の家族は食糧を求めて外出した際にゾンビに食われたのだろう。

誰も帰ってこなくなった自宅で俺は決断をした。

ゾンビスーツを作って外に出よう。

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