第10話 体育座り
真っ暗な病院の玄関口で俺は体育座りから一歩も動けずにいた。
まず立ってしまうと劣化したゾンビスーツがさらに破ける可能性が高い。
そして人間臭が漏れてゾンビに囲まれてしまうだろう。
しかし座ったままでは動けず水が飲めずに脱水死してしまう。
ゾンビスーツの胸のスキマから周囲を見ていると目が慣れてきた。
やはりゾンビの数は多めだ。
このまま動くのは危ない。
囲まれれば終わる。
いっそナイフがあるのでこの場で新しいゾンビスーツを作ってしまうのはどうか。
大柄な男ゾンビの頭をナイフで突いて停止させる。
どこか安全なところでゾンビ解体をしてスーツを新調したい。
安全な場所など見つからないがスーツ用ゾンビは探しておこう。
おい、そこのガキ、お前は子供ゾンビだから用は無いんだよどっか行けよガキがサイズが小さすぎてスーツにしたとしてもピチピチすぎて着れねえんだガキは家に帰れ、女ゾンビもサイズが小さすぎて意味ないんだからどっか行けよナースゾンビ触った時にすぐにサイズが足りない事は分かってんだぞ、ゾンビスーツ・よしおは女子供に用は無い、獲物は身長180以上の男ゾンビだ贅沢を言わせてもらえば190ぐらいあるとゆったりサイズのスーツが仕上がるかもしれないがそんな上等な皮はめったに歩いてない。
これでゾンビスーツの耐久性が2週間程度ということが推測できた。
このスーツは2週間でズボッと破れてきたから実質1週間で新調しなければ。
安全策で1週間ごとにスーツの新調とは大変だ。
朝になったら座ったまま少しずつ移動するしかない。
ゾンビスーツのケツが破れようがその方法しかない。
とにかく最短距離のキャンプまで行くしかない。
季節は秋だが夜の冷え込みは激しい。
ただゾンビスーツを着ていれば保温されていて温かい。
ゾンビスーツは俺を温かく包む。
ゾンビ皮とはいえレザージャケットを着ているようなものだから。
くっさ。
この強い焼きナッツ臭は俺を守ってくれる。
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