第19話 凹み

「リーダー、虎憑駆トラックのロープが切られてます。」

要塞化した食糧倉庫に帰ってきた俺たちはナオユキたちのトラックを調べた。

トラックはゾンビ皮を吊るしてゾンビカーにしてある。

そのゾンビ皮を固定していたロープが刃物で切られているのが分かった。

少なくとも6か所のゾンビ皮が脱落している。

これではゾンビに囲まれれば窓ガラスを割られるのは当然だ。

ナオユキやトオルが自分たちのトラックのロープを自ら切るとは考えられない。

現場にもう一人、人間がいたな。

基本的にゾンビは刃物を持ったりはしない。

もしゾンビの手首に刃物を縛り付けても六か所もロープを切断できない。

だから現場には二人以外に刃物を持った人間がいたことになる。


「ナオユキたちを追い込んだ犯人がいる。」

俺が話をはじめるとチームのメンバーは静かに聞いていた。

そして少し話し合いをしてお互いのアリバイを確認しあった。

昨日はナオユキとトオル以外は外に出ていないことが分かった。

お互いに複数で作業していたし、外へ出るには車両を借りなければならない。

さすがにガレージで車のエンジン音がすれば誰かが気づく。

そして俺たちは現場で何が起こったかを調べ出した。

回収してきたピックアップトラックに不自然な点はないか。

ナオユキとトオルの遺体に手がかりはないか。

現場で撮った画像から分かることはないか。

ゾンビパニック後、電気や通信が止まったのでネットが役に立たなくなった。

充電できないスマホは数日間で無意味な板になってしまった。

ただし市販の電池が使える充電器を使い続けられる。

スマホはカメラとして使っていた。

画像のチェックもスマホの液晶画面で行う。

市販の単三電池はコンビニにも在庫があった。

無駄遣いはできないが今回は電池のストックをザブザブ使った。


この茶色のソファはナオユキが家具屋から取ってきたもの。

現金を無人のレジに置くコントは爆笑だったなゾンビペイ。

家具屋に住んだ方が話が早いぜゾンビキャン。

女さらってアナタハン。


「リーダー、これ見て下さい。叩いたアトです。」

トラックの下を調べていて複数の凹みを見つけた。

丸い棒のようなもので何度も叩いたような凹んだ傷。

「以前からあった凹みじゃ無いだろうな?」

俺は聞き返したが前回のメンテナンス時には見つかっていないことが分かった。

「リーダー、たとえばロープを切った包丁のシリで叩いたような・・・」

犯人はトラックの下にもぐり込んで包丁でガンガン叩いた。

その音でゾンビを集めてナオユキたちを車内に閉じ込めた。

そして犯人はトラックの上に登ってロープを切った。

ゾンビ皮が落ちたトラックは窓を割られてトオルたちが・・

だんだん見えてきたぜ。








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