第22話 決闘場

遊水池公園のはずれに雷斗蛮ライトバンを停めた。

モヒカンメンバー二名を車に待たせて俺は武器を運んだ。

果たし状の通りにナイフ1本とヤリ3本を持ってきた。

俺は敵が、よしおが遊水池公園を選んできた理由を考えている。

まず遊水池公園は遠くまで見通しがある。

俺たちモヒカンの方が人数が多いから囲まれるのを防ぐためだ。

囲まれそうなら敵は逃げるだろう。

そしてコンクリの地面だ。

コンクリなら落とし穴などのトラップが作りにくい。

トラップへの不安解消は双方にメリットがあるな。

さらに遊水池公園には金網フェンスが多い。

ゾンビパニック初期の感染者の選別につかわれていたフェンスだ。

このフェンスがあれば音を出してもゾンビが集まりにくい。

ゾンビを集めて攻撃をしないという敵の意思表示だろう。

最後に遊水池の一か所に大量のゾンビがいる。

ここは大雨が降った時に雨水を貯め川の氾濫を防ぐ施設だ。

その遊水池ゾーンは階段状に低くなっていてゾンビがハマると上がって来れない。

そこに数百体のゾンビが立っていた。

これは敵の退路だな。

もし俺たちがタイマンルールを破ったら。

もしモヒカンメンバーが加勢したら敵はゾンビの群れに飛び込んで逃げるだろう。


果たし状への返事によると敵の名前は、よしお。

強烈なるゾンビ臭を苦にしない異常者、狂ったスーツァーらしい。

狂った世界には狂った決闘がお似合いだ。

お似合いのカップルですね?

冗談じゃねえ、これから俺とヤツのどちらかが死ぬ。

死ぬまで戦う決闘場。

コロシアムは遊水池。

一対一のタイマン勝負。

仲間の仇だ、やるしかないぜ。

モヒカン族をなめんなよ。


俺は四重の金網フェンスを超えて広場に着いた。

まわりを見回しても野郎はいない。

遊水池の数百のゾンビは下でうめいているが。

モヒカンメンバー2人の待つライトバンは遠くマッチ箱のように見える。

何があっても夕方4時までは遠くで待てと指示している。

遊水池をフェンス越しに見ていたらゾンビが一体、階段を上がってきた。

トットットット。

階段を上がるゾンビなんて、ありえないぜ。

やつがよしおだ。

やつが狂ったスーツァーだ。

ヤリを3本持ったスーツァーが金網ごしに近づいてきた。

ひときわ強い焼きナッツ臭が決闘場を包んだ。

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