第6話 尖った棒
二階の子供部屋から飛び出してきた男子中学生は尖った棒を俺に突き刺した。
棒はゾンビスーツの胸から中の俺の顔面をかすめてズボッと貫通した。
俺は一瞬、終わったと思ったが痛みは無い。
痛くない。
ということは棒は俺の耳の横を抜けていっただけだ。
中学生は勢いでドッと俺にタックルする形になり倒れた。
失神しているのか動かない。
俺は距離を空けて尖った棒を引き抜いた。
中学生はブウとイビキのように大きく息を吐いて絶命した。
お前なに勝手に死んでんだ馬鹿野郎あぶねえじゃねえか尖った棒が刺さったら大怪我するんだぞ俺はゾンビスーツを着てるんだから大怪我したらゾンビ汁が傷口から入って感染確実なんだ怪我できない感じなんだぞコッチは勝手に死ぬなって、そもそも棒を刺すならゾンビの頭を狙えよ胸に刺してきても無意味だぞラジオの情報知らねえのかこの男子中学生は俺はゾンビスーツ着てるんだからもし刺されてゾンビ化したらゾンビスーツの中もゾンビになってゾンビのマトリョーシカ人形になってしまう子供が死んでるのにロシアのマトリョーシカ人形とは不謹慎だと言ってくれる人もいない。
死んだ中学生がゾンビ化して動き出さないかと注意深く手足を拘束した。
この男の子はやけにガリガリであることから長い間、食べていないことが分かった。
もう数週間、水だけで過ごしているのかもしれない。
君の家族は食糧を求めて外に出て感染したのか。
そして君だけが一人で何週間も籠城していたのだな。
備蓄を食べきった君は俺をゾンビだと思って刺してきた。
君は最後のチカラを振り絞って勇敢にもゾンビの胸に尖った棒を突き刺した。
俺だってスーツを作っていなければこの中学生と同じになっていたかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます