@tweNty-sEVEn
「すぐにデュームか?」
蓮宮が、
「いや、情報整理した後かな。少し空腹でもあるし」
「やっぱり。きみ、食べてないだろ」
「バレてたか」
「そりゃあね。なんか適当に作るから、作業してていいよ」
「ありがとう。嫁みたいだな」
「そんなわけあるか。きみの仕事のためだろ」
「わかっているよ。けど、それを認めてくれたら天加は喜ぶのだろうけどな」
そんな、日常会話を繰り広げつつ、エレベーターを呼んでいたらすぐに到着し、二人は目的の階層に運ばれそのまま杜乃の居室である0643に入室した。
「キッチンに失礼するよ」
「ああ。構わないよ。ありがとう」
通学バッグをリビングのテーブル下において、キッチンに踏み入れる蓮宮。
結果ほとんどの食材がなくなっていることが判明し、杜乃が情報の整理などの準備をしている間に蓮宮が簡単な買い出しに行くことになった。
それらは所要時間30分ほどで終了したため、先に目的の作業を終えてから食事という方針に切り替える。
「では、もう少し待っていてくれ。後数分で終わる」
「ああ、了解」
杜乃の言葉に、蓮宮が頷いた。
「とはいえ今回の構文は、解決にはそこまで影響しないんだろう?」
「そうだね。それよりも、それを取り巻く環境や犯人の人物像の方に興味があるね」
「人物像はいいとして、取り巻く環境?」
「ああ…」
杜乃が、蓮宮一人を相手にしている環境であるにも関わらず珍しく言い淀んだ。
「…少し、天加の影響かもしれないが、やはり勘案してしまうな」
「ああ、そういう感じか。悪いことではないと思うけどな」
「いや、冷静にその殺意を見極めるためには、不要なのだよ」
「それは、殺意の源泉がどれだけ冷たいかにも寄ると思うよ」
「いつも言われるな、それ」
杜乃が、少し苦笑しながら蓮宮の発言を指摘した。言われた蓮宮もどこか、そう言えば、というような自覚があるような雰囲気を匂わせる。
「いやだってまぁ、変わらないし」
「仕方ない。あれだけ熱烈にアプローチしていても、君と天加が恋仲にならないのと話は似ているぞ?」
「その話はいいから。準備は?」
いたずらっぽく指摘された蓮宮が、照れるでもなく煩わしそうに話題を断ち切った。
「全く。都合が悪いと話をそらすしか能がないのか君は」
「そんな、それ以外の話術なんて持ってないよ」
「少しは学びたまえよ。クラスメイトとはもっと年相応の高校生らしく話して茶化したりもしているのだろう?」
「いいから」
「ははは。わかったよ。デュームの準備は完了した。そろそろ始めようか」
「そうしてくれ」
蓮宮の返答は、どこか辟易したように響く。
「では」
と、杜乃がシステムの画面でいくつかの作業を終え、二人のいる部屋の中に腹の底に響く重低音が幾度か響くと、杜乃が携帯端末を持った上で席を立ち上がって言う。
「行こうか」
「ああ」
システムの前の椅子を立った杜乃に促されて、蓮宮も立ち上がり、二人は寝室へ続く扉の前に歩み寄る。
杜乃が蓮宮を案内するように先導してがその扉を開けると、その日の午前に杜乃が休んでいた真っ白な寝室が広がっている、はずだった。
しかし、真っ白に統一されているはずの部屋の中、入り口正面の壁の一角が、正方形にぽっこりと大きく真っ黒く塗りつぶされたようになっていた。
部屋に入った杜乃は、しかしそんな異変もさも当たり前とでもいうかのように、その黒に向かって進む。すると、そこは塗りつぶされているのではなく、壁に穴が空いていて、杜乃は何の躊躇もせずにその穴に歩みを進めて入っていく。続く蓮宮も、後ろ手に寝室の扉を閉めて同様に入っていった。二人はそこからさらに10穂に満たない距離を進んで歩みを止める。
「閉めるぞ」
「ああ」
杜乃の言葉に蓮宮が答えると、それを受けたように杜乃が手元の端末で特定のアプリを操作した。すると、二人から見れば真っ黒な空間にぽっかりと空いた真っ白な部屋を望む穴が閉められる。先ほどよりも大きい重低音が数度響いた。
光のなくなった部屋にもう一つエアロックのような音が響いて、二人の足元に光が生まれる
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます