@tEN
「
マスターを務めるのは
『そちらこそお疲れ様。相変わらず高校生になったばかりなのに警察にこき使われているんだねぇ』
『帝智先生?扱き使うは心外ですよ。同意の上で協力してもらっているんです』
「まぁまぁ。あまりお二人から時間をもらうのも申し訳ないから、本題に入っていいかな」
杜乃が切り出すと、二人から了解の返事がほぼ同時に返ってきた。
「まず帝智教授。ムーンギフトキャリアの資料の一部提供をお願いしたい。現時点で斑鳩総研に登録されているもののうち、このあと伝えるキーワードでソートしていただいて、該当者のみで構わないので」
『これは、朝霧くんがいるということはもちろん警視庁捜査一課の許諾を得ているということだよね?』
「もちろん。そうだよね?朝霧くん」
『その通りです』
『了解した。で、その検索条件というのは?』
「腕力もしくは握力特化系キャリア、18歳以上、技能的職業に従事している者。一度この三点でお願いしたい」
『了解だ。以前のように
杜乃の支持を了解した帝智が問いを投げる。
『あ、はい。今日このあと、教授のところにケースIDとパスワードをお届けします。私は現場対応があるため別の者ですが』
『了解した。こちらも実際作業は別の者が担当となる。殺人事件案件だろうから最速を心がけるが、今日の深夜が限界だろう』
帝智の問いに答えたのは朝霧だ。
「結構です。ありがとうございます」
『では、以上で良いかな。何かあればまた連絡をくれていい』
「はい、ありがとうございました」
『ありがとうございました』
それを聞き届けてグループ通話から帝智の離脱が通知される。
『では、私もこれで。キーワードの条件、後ほどお伺いしてもよろしいですか?』
「ああ、今でもいいけれど?」
『実はこのあと、同じ杉並の雑木林の広範囲捜索に立ち会うんです。もう陽も落ちてますし、急がないとと』
「もう配備したのか。相変わらず早いな」
『意外と所内で杜乃さんの名前は強いんですよ。行ってきます。後ほど電話しますね』
「了解」
その返事で、朝霧との接続も切断され、通話が終了したことが画面に表示されると、杜乃は背後のテーブルの椅子についていた
「と、いうことだ。一度情報がもう少し増えるまで、推想はおしまいだな」
「そうだね…もう6時か。今日はそろそろ帰るよ」
腕時計を横目でちらりと盗み見た蓮宮が、退出を申し出た。普段であれば、もう少しいても不思議でない時間だった。
「おや?もうかい?天加が怒るぞ?いいのか」
「彼女にこんなこと言ったら、ぐずられるに決まっているからね」
意外そうな杜乃の問いに、蓮宮は呆れたように
「そのあとの電話は覚悟しているのかね」
「仕方ないよ。今日は施設に寄ってから帰らないといけないし」
今度はややうんざりしたような声色で答える蓮宮だが、後半は少し責任感の色が見える。
「そうか。それでは仕方ない。今日もありがとう。何かあればすぐに連絡するよ」
「うん。あ、今日はデュームは使わないよね?」
「そうだね。むしろ今回はいらないかもしれないけれど、最終的には整理に使おうかと」
「わかった」
「君、なんだかんだあそこ好きだろう」
杜乃がいたずらっぽく指摘してくる。長い髪に手櫛を通して弄んでいた。
「まあ、嫌いじゃないかな。綺麗だしね」
「あれを綺麗というか?星を写しているときはそうかもしれないが…所詮殺意だぞ」
「まあ、それはそれで」
「変わったやつだよ本当に」
「君に言われたくない」
「ははは」
杜乃の指摘にふざけるように返すと、自覚があるのだろう、杜乃は、その通りだな、と言いたげにニヤリと笑って見せた。
「それじゃあ、いくね。杜乃にもよろしく」
「私じゃないか」
「違うの知ってるくせに」
「そうだな。すまん」
「いや、別に謝ることでもないよ」
「そうか。ではまた」
「うん。お疲れ様」
別れを告げた蓮宮はそのまま部屋を出て薄暗い廊下を歩いてエレベーターに乗る。
先ほど口にした「施設」までは二駅だ。家とは逆方向だが、問題ない。電車に乗る前に手土産を買っていこう、と決め、エレベータを降りて、守衛に挨拶をしてからCAZEを後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます