@tWEnty-fiVE
「あくまで今日採取できた指紋と、現場で収集された糸切り
「まず、
杜乃がそこまで話すと、運転席の
「あ、それ、俺本人から聞き取れてます。芸能関係者のふりして接触して、自分の事務所の人間に勧めたいとか、広告用に決まったモデルはいるのかとか聞いてみたら、ブランド開始当初から主力モデルだった人物が少し前に亡くなってしまったそうです。今はいろんな方に申し出てやってもらっているとか」
「ほほう。さすがだね昼々蕗くん。だが、これでさらに可能性が上がってきたな。その亡くなってしまった人物と各被害者の人相が似通っていれば、なおのこと盤石だ。第一被害者のまだ身元の確認はできていないんだろう?」
「候補者は上がっていて、別の者が現在親族に当たっています」
杜乃の疑問符をに答えたのは朝霧だ。
「なるほど。では今日はここまでだな。指紋の照合と、被害者の身元確認を急ごう。指紋が一致すれば、任意同行はできるのだろう?」
「はい。そうなりますね」
現状、その日の現時点で揃っている証拠では警察手帳を出して動くことはできない。しかし、やはり指紋の一致、それが部分的なものであろうと強力な物的証拠となりうる。その強力な物的証拠が現時点では一点もなかった。
「では一旦そちらの結果を待とうか」
「了解です。
本格的な解決までの道は繋がり始めた。現時点で他の容疑者候補に当たる必要性は希薄だ。指紋照合、被害者の身元確認の結果を待った方が、杜乃には懸命に思えた。
「そうだね。送ってもらえるのかい?」
「もちろんです。署に戻るにしても、帰り道ですし」
「ありがとう。
「ああ。今日は構わないよ」
杜乃が蓮宮の予定を確認し、少しの間が発生したところで、会話が一瞬途切れたと認識した朝霧が、まるで喉に刺さった軟骨の感触ように、大きな違和感はないけれど、されど気になっていた事を切り出そうと決め、声を発する。対するは杜乃だった。
「あ、杜乃さん」
「ん?どうした
「?!…ちょっと、その呼び方は」
「いやだって、今回のケースに関しては先ほどで現時点における一旦の結論は出ているだろうし、声色に少しだけだけど安堵というか緊張感の薄さが感じられたから切り替えてもいいかなと。で?なんだい?」
「あ、じゃ、じゃあ、
無言で聞いている蓮宮も昼々蕗も思わずにいられない。なぜこの二人はこうも仲のいい人間とのコミュニケーションすら、聞いているこっちですら頭を抱えるくらいに不得意なんだ。と。
「なんだい」
「資料も何もないんだけど」
昼々蕗は、すでに斑鳩に進路をとり、首都高に乗った車の運転など反射でできるとばかりに構えていたので、一瞬ちらりと隣の助手席に座った杜乃の様子を盗み見た。
苑ちゃんと呼ばれいたせいかどうかは憶測の域を出ないが、朝霧は、明らかに赤面していた。
「え、えっと、最近都内で、不可解な血だまりが発見されていることは知ってる?」
「血だまり……ああ、なんかマスコミが面白がって報道していた件かな」
「あ、え、えっと、多分。多分それなんだけど。実はこて、案件の内容が特殊なせいで、今うちが担当?してて」
その朝霧の口調に、少しだけ昨日、CAZEを出る朝霧との会話を思い出さずにはいられない蓮宮は、景色を見るつもりで一瞬窓の外に顔を向ける。しかし首都高の道路脇にこれでもかとし見つけられた防音壁しか見えないし、なんの誤魔化しにもならなかったけれど、杜乃は気づいていない。
「ほう。どんな状況だい?」
「それが、遺体も被害者も何もないの。ただ、血溜まりがあるだけなの。それも毎回、あまり採取される血液量も変わらないのよ」
「…ほう」
対する杜乃の隣でその表情を横目に捉える蓮宮は、その一言で杜乃の雰囲気が変わったことを認識する。
「どう思う?」
朝霧の言葉に、杜乃は数瞬の間を持って。
「その情報だけで反射的に言わせてもらえれば、愉快犯か、なにかしらものすごく強い拘りを持ってやっているのだろうとは思う。前者は、ただの遊び。後者は儀式めいているのだろう。悪魔召喚にも血液は必要だからな。ただ」
「使用する血液の入手経路、よね」
「ああ。ちょっと興味はある。もし何か、なんでもいいので情報があったら 見せてもらえるか?」
「うん。あ、もう
そう言って、朝霧は足元のカバンの中から手帳を取り出し、なにやら書き込んだ後で破くと後部座席の杜乃に差し出した。
「これがIDとパスワード。もし、時間があれば」
「ああ。わかった。被害届も出ていないんだよな?」
「うん。発見され始めてから特に目立った捜索願とか、不可解な遺体とかも見つかっていないよ」
「なるほどね。承知した。合間に考えてみよう」
「ありがとう。内容を鑑みればうち、猟奇殺人操作専従班に話が来るのはそうだろうなって思うんだけど、正直、私たち、現状だと全く手が出せない案件で」
「そうだろうな。被害者も自首してくる容疑者も被害届もないのでは、仕方ない」
そこで、杜乃は少しだけ何かに気づいたようだった。
「あ、物的証拠は血液だけかい?」
「そのはずよ」
「ふーん……」
朝霧の隣で彼女の様子を見ながら運転していた昼々蕗は、血だまりの話をしているのになんでこんなに穏やかな表情なんだ、と思う。
杜乃の隣でその様子を見ていた蓮宮は、ああ、また獲物見つけたんだな、と思った。
車は一路、
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