@eIghTEen
施設全体では
民間研究施設である
そんな自分用にカスタマイズされた環境の部屋で早朝の蓮宮との会話を終えた彼女は、
そしてその部屋もまた、基調は白で統一されている。特段
制服を脱いでラフな格好に着替え、携帯端末を枕元のチェストに置いておく。先に設置されていたタブレットのディスプレイを起動させて、状況が問題ないことを確認。このタブレットは部屋のシステムと共有されており、朝霧や
環境は完全に捜査協力へと特化していて、到底その部屋が、女子高校生が一人で暮らしているなどと想像もできない。しかし、それがここに住み滅多に外出することのない、杜乃 天加という15歳の少女の現実だった。
タブレットを確認した杜乃は、眠る前の作業は終えたとばかりにゆっくりとベッドに入る。一旦は仰向けになるが、すぐに体を右に向けた。その体勢が杜乃の癖で、一番落ち着く感触があった。
杜乃は、まどろみに侵され始めた意識の中でも途絶えない思考に没入していく。
自分が一人でいる理由。一人を選んだわけ。蓮宮のこと。朝霧のこと。殺意に魅せられた如何しようも無い自分の興味と好奇心。事件としての殺人が発生し、いくら解決しようとも心に焦げ付いたように杜乃の中に凝り溜まっていく人の悪意や殺意の、どろりとした残り香がもたらす抱擁感のような不思議な感覚。誰の中にも潜んでいる否定されるべき欲望や衝動は二分されているはずなのに、それに取り憑かれそうになることが少なくないが、わずかに残る体の傷痕がそれを抑止する。飲み込まれていた頃の自分の過ちであることは自覚している。布団から右手をそっと出す。纏った部屋着の長袖からわずかに覗いている。部屋に一人で眠る時はどれだけ微睡みに支配されそうでもこの作業が必要だ。眠りによって封鎖された意識の中で、自分が暴走しないように。絶対的後悔と絶望的罪悪感の塊であるその傷痕は、やはり戒めであり、しかし命綱であり、けれども毛布のような、特別な思い入れの積み重なった傷痕。溜まっていく悪意と殺意の
その思い出は蓮宮にとっても大きく、しかし杜乃がそれを抱きしめるようにしているのとは対照的に、彼は抱えてしまっているのではないか、と思う。彼自身にもそういった抱えきれなくて立ち向かわなければいけない闇は存在しているのに、自分はそれに協力もできずに助けられてばかりである現実に嫌気は指すけれど、今の積み重ねが、少しでもそんな状況を改善するために作用するのであれば、もう少し、もう少し、と思って止まない。そしてそれが終わる時、きっと自分は彼に殺されるエンディングを望んでいる。
彼がその境遇や性格から、ほぼ絶対に抱くことがないであろう、彼の人生で最初で最後の計り知れないほど汚れきった無垢な殺意を、一瞬で爆発的に膨張させて暴走させ理性を失った蓮宮から凶暴にぶつけられ、それを私が受け止めて刈り取って、自分に縛り付けて死に沈んでしまいたい。極端で横暴でわがままの極みであることは自覚しているけれど、それは杜乃が純粋に望み、ただ一つ考えられる、彼の
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