第四話 親睦を深めよう!

 次の日の放課後。先生に言われた通り僕たちは四組に集まった。

「よく考えるとよ、俺たちは先公の言いなりになってねえか?」

「先生たちは本当は敵だ! でも利害が一致するなら共闘はできる!」

 そして先生を僕たちの仲間に引き入れるんだ! 僕は凌牙を落ち着かせた。

 しばらく待っていると、先生がやって来た。手にはカードの束を持っている。

「よくきてくれたね。今日君たちにやってもらいたいのは、英語カルタだよ」

「英語でカルタなんてできるんですか?」

 栄治郎が聞くと、

「もちろん。私が君たちと同じぐらいだった時は、よくやったよ。英語は確かに難しいけど、これなら楽しみながら学ぶことができる」

 先生は机をいくつか合わせて、そしてその上に絵が描かれた二十六枚のカードを並べ始めた。

「でも、こんなの去年もやらなかったわ」

 須美ちゃんの言う通りだ。僕にも、去年やった記憶がない。

「校長先生から、これはただの遊びだの、授業じゃないだの言われてね…。私は是非ともやりたかったんだが、出来なかったんだよ」

「まーた校長先公かよ! どこまでも俺たちを邪魔してきやがる…」

 先生が並べ終えると僕たちはそれを囲う様に座った。

「先生。カードにはアルファベットが書いてませんが?」

「絵で判断するんだ。例えばコレ」

 一枚カードを拾い上げた」

「これはカエルだね? だからカエルの英語、フロッグって私が言ったらこれを叩く。いいかい?」

「じゃあこれは」

 凌牙が違うカードを指した。

「クジラだからホエールだね」

「なるほど。ルールは理解したわ。でもこれって、英語が得意な人が有利なんじゃない?」

 須美ちゃんの言う通りだ。英語が得意ならカードの絵の英語が全部わかる。でも織姫のように苦手だと、どれがどれだか理解しようとしている間に取られてしまう。

「最初の内はそうだろうね。私の時代もそうだったから。だけどこういう遊びでも、負けるのは悔しいだろう? だから覚えるんだ。それにゲーム感覚なら楽しいから覚えやすい。それと、一番多くカードを取った人にはシールをあげるんだ」

「シール?」

「何枚か集めるとプレゼントと交換できるんだ。それが欲しくて、みんな頑張ったものだ」

 僕たちは早速やってみることにした。

「ではまず一枚目。スパロウ」

 スパロウ? 僕はカードを見たが、どこにも海賊が描かれているカードはない。

「あった!」

 須美ちゃんが動いた。

「おいそれはスズメだろ? 海賊じゃない」

 凌牙が異議を唱えたが、

「いや。スパロウはスズメで正解だよ」

「そうなんですか? でもあの海賊映画の主人公の名前が…」

「確かにそうだけど、海賊は英語でパイレーツ」

「そうだったんですか!」

「では次行こう。フライ」

 僕は、飛んでいる絵を探した。そして見つけて叩いた。

「劉葉君、それはタカ。タカは英語でホークだよ」

「でも、飛んでいるものが描かれているカードはこれしかありませんよ?」

 僕はそう思った。他のみんなも手を出さないので、わからないようだ。

「正解はコレ」

 先生が取ったカードに描かれているのは、ハエだ。

「ハエは英語でフライ。でも綴りは劉葉君が指摘したように飛ぶのフライと同じなんだ」

「そうだったんですか…。これはオテツキとか、そういうペナルティはありますか?」

「このカルタには、そんなものはないよ。あったら生徒はそれに怯えちゃって、いつまで経っても勇気を持てなくなってしまう。それはこのカルタの目的ではないからね」

 このカルタでは、間違えても被弾しない。むしろ間違えから学ぶことを目的としているようだ。

「では次だ。次は…」

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