第五話 信じるさ!
「それで逃げてきた…んですか?」
職員室に戻ると、校長先生が待っていた。
「こ、校長、先生…」
「大きな口を叩いていた割には、尻尾を巻いて逃げてきたんですか? 全く情けないですよ、金沢先生?」
「ち、違うんですよ、これには訳が…」
「味方につけたと思った生徒を劉葉たちが信じるとは思わなかったとか、劉葉の作戦が予想外過ぎたとか、ですか?」
校長先生はため息を吐いた。
「あなたに期待した私がどうやらバカだったようですね。これだから学生運動やってたような余裕かまして自分すごいって思ってる人は、駄目なんですよ」
金沢先生は土下座した。
「お、お、お願いします校長! どうかクビだけは…!」
校長先生はワザワザしゃがんで、
「大丈夫ですよ。私に用意させた、無駄な実験のための費用を全額返してくれるのなら」
金沢先生は、安堵した。
「でもあなたにも、完璧絶対授業はできそうにありませんね。そんな教師の給料は期待しない方がいいですよ?」
今日はいつもより帰る時間が遅くなった。理科室の後片付けがあったからだ。
「劉葉!」
織姫が僕を呼び留めた。
「劉葉、今日は、ありがとう!」
「戦友のためなら、僕は何だってするさ!」
先生の贔屓がなくなった今日、織姫に向けられた疑いの目は完全になくなった。
今日はもう寝る時間だ。自室のドアを閉めると、コンコンとノックされた。
「何だいお父さん? もう僕、眠たいよ…」
「また話を聞いたんだ。今日の実験は散々だったんだって?」
「そうだね。金沢先生はクビかな?」
「流石にそれはかわいそうだと思うけどね。劉葉としては、いなくなってもらった方がいい?」
「いいや。だって僕たちは金沢先生に勝ったんだもん! もう興味はないよ」
倒した先生には織姫に謝って欲しいが、肝心の織姫はもう元気なんだ。
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