四時間目 社会
第一話 仲間は歓迎!
「劉葉、話を聞いてくれないか?」
朝、僕を呼び留めたのは正忠だった。意外な相手に僕は驚いた。
「君が僕に何の用?」
正忠の表情はあまり良くない。きっと嫌な気分なのだろう。
「俺も仲間に、入れてくれないかい?」
そんなことを言い出した。
「でも正忠は、先生たちの味方じゃないか?」
「確かにそうだったよ。先生が成績を上げてくれるからって。でも、金沢先生の仕打ちを受けてはもう信用できないんだ…」
僕は、正忠がかわいそうだと感じた。彼は金沢先生に何度も怒られた。本当ならそんな事はするべきじゃないのに、正忠以外の味方を作るっていう作戦にとって、彼は弾一発程度の道具でしかなかった。発射し終えたら要らないという感じで、金沢先生は自分の作戦のために平気で正忠を切り捨てた。
「みんなはそう簡単には信じてくれないだろうね」
「え…」
「でも僕は! 僕は一緒に戦ってくれるっていうなら、喜んで受け入れる!」
「ほ、本当に?」
「亡命を拒否したら非難の的だし、それに正忠が知っている先生たちの事情だってあるでしょ? こんなことはできれば言いたくないけど、情報と引き換えにって、どう?」
僕たちが知らないことを教えてくれればみんなも納得して迎え入れてくれるだろうし、この戦争も有利になる。
「…確か、英語の木村先生は他の先生たちとあまり仲が良くないって」
「ああ確かにね。水谷先生の不正を校長先生に密告したのは木村先生だから」
「それと、学校にいつまでも抵抗してるのは僕たちの一年四組だけだって。他のクラスや学年は、完全に支配下に置けてるらしい」
どうやら正忠は、僕たちが知り得ること以外は知っていないようだ。きっといつ裏切られても大丈夫なように、無駄な情報は教えられていないんだろう。
でもそれでは、氷威たちは納得しない。
「それだとちょっと、難しいかも…。でも、もう先生たちの味方はやめるってことは約束してくれる?」
「わかってるよ。そう決めたから劉葉と話したかったんだ」
これでまた、味方が一人増えた。
でも僕は、そのことを氷威たちにはまだ教えない。いきなり正忠が寝返ったって言っても聞かないだろうし、敵を欺くのはまず味方からってよく言う。ここぞと言う時に活躍してもらおう!
「明日は校外学習だからね。クリップボードを忘れないで持って来て。朝は校庭に集合!」
朝の会の告知。中園先生が言えば、みんな持ってくる。忘れ物は被弾だからだ。
僕は今度の戦争の舞台は、この校外学習になると考えた。前に氷威たちと話したこと、仲間を増やすことを実践する。それは他のクラスと先生たちの前で関わることができる、校外学習がもってこいだ。
今日の四時間目の社会の授業は校外学習の予習になりそうだ。
社会の
「起立! 礼! 着席!」
今日も授業が始まる。戦争開始!
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