第七話 今度こそ終戦?
僕たちは学校に着くとすぐに校長室に向かった。
「失礼します」
ノックもしないで入った。
「来ましたか」
校長先生はあまり驚いていない。もしかしたら織姫たちに僕を連れてくるよう仕向けたのは、校長先生なのかもしれない。
「どうしていきなり、完璧絶対授業が廃止になるんですか?」
校長先生は答えた。
「あの授業には、最初から廃止になる条件がありました。それを君が、満たしたからです」
条件? でも僕にはそんな記憶はない。
「僕は何もしてませんよ?」
「しましたよ」
校長先生は立ち上がり、窓の外を見ながら続けた。
「この授業は、先生の絶対性と生徒の完璧性の両方がなければいけません。しかしその両方がなくなってしまったことを学校が認めざるを得ない出来事…。それは不登校です」
「えぇ!」
僕は声を出して驚いた。
「生徒が不登校になってしまっては、もはや完璧とは言えないでしょう。そしてそうさせた先生は、絶対的な存在ではありません。君が今日の朝学校に来なかった、いや昨日私がいくらドアを叩いても返事をしなかった時点で、私たちの負けだったんです。まさか、君と仲間たちの団結を引き裂く目的で落とした爆弾が、このような結果をもたらすとは思いませんでした。でも織姫さんをはじめとした、君の仲間が早急に君を学校に連れ戻してくれました。おかげで君は完全な不登校にならずに済みました」
僕の頭はパンクしそうになった。一度整理するために校長室を出た。
僕たちは今の時間使われていない多目的室に来た。そして現状を黒板に書いた。
「つまり…こういうことね」
須美ちゃんがまとめた。
まず初めに、完璧絶対授業は生徒が不登校になったら廃止になると決まっていた。
次に、校長先生は僕に仲間割れさせるために、僕との関係を暴露した。
そしてそれとは裏腹に、織姫たちは僕のことを信じること、僕は学校に行かないことを決めた。
最後に僕が学校に行かなくなったので、完璧絶対授業は廃止。でも僕は実際には不登校になってはいない。
「これじゃあまるで、最初から劉葉君が、いや誰かが学校に行かなければ良かったってことかな?」
正忠が言う。そうだ、彼の言う通りだ。
「でもそれは、敗北を認めたことになるわ」
鈴茄も正しい。
「じゃあ、負けるが勝ちってこと?」
祈裡が首を傾げながら言う。
戦いに負けて戦争に勝つ。それを僕が、偶然引き起こした…。
「じゃあこの戦争は引き分け、今のところはいわゆる停戦なの?」
織姫が僕に向かって言った。
「そう…」
僕は返事を止めた。確かにお互いに、負けを認めた行為を取った。でも停戦はしないって最初に決めた。
「…じゃない! 僕たちはまだ、完全に戦争には勝ってない! これはただの痛み分けだ! 勝利は一方的に相手が負けを認めた時だけだ!」
僕はそう叫んだ。
「え、でも…」
「だって僕は、完全に不登校になったワケじゃない。学校はきっと、完璧絶対授業を完全に諦めたんじゃないと思う。少なくともさっき、僕は校長先生からそういう感じはしなかった!」
そうだ。僕が完全な不登校じゃない状態で完璧絶対授業が廃止されるなら、きっと完璧絶対授業・改みたいなものが待っているはずだ。
「きっとこれから先、完璧絶対授業よりも酷い授業が試行される! それらに反対し続けるのが、僕たちの戦争。そして学校が負けを認めた時、はじめて僕たちは戦争に勝つんだ!」
僕と先生の授業戦争 杜都醍醐 @moritodaigo1994
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