第5話!! 神様と会ったのだ!



「あれ……?ここはどこなのだ?」


 気づいたら真っ白なところにいたのだ。

 たしかアライさんはバスにはねられたはずなのだ。

 こんなところにいるのはおかしいのだ。

 アライさんが周りを見渡しても、白い床しかないのだ。不思議な場所なのだ。ものすごく広いのに、遠くを見ても水平線が見えないのだ。ただ、どこまでも遠くにいけることだけは分かるのだ。


 アライさんがキョロキョロしていると、急に声をかけられたのだ。


「目が覚めましたか?アライグマ?」


 きれいな声なのだ。

 誰なのだ?

 アライさんが振り返ると、そこには白いキツネみたいなフレンズがいたのだ。


「私はオイナリサマです。ここからあなたのことをずっと見ていました」


 そのキツネは、オイナリサマというらしいのだ。

 そしてなんと、アライさんをずっと見ていたらしいのだ。

 そんなことを急に言われたら照れてしまうのだ。


「そういった意味ではありませんよ。ほら、ここを覗いてご覧なさい」


 アライさんはオイナリサマに言われたとおり、床に空いた小さな穴を覗き込んだのだ。

 そしたらなんと、上からみたジャパリパークがあったのだ!


「そこは、先程まであなたがいた世界です」


 どういうことなのだ?アライさんはお空にいるのか?つまり、ここは天国なのか?


「天国……ですか。まあそういった見方も間違いではありません。あなたはバスに轢かれて死んだのです」


 なに?!やっぱりアライさんは死んでしまったのか……。そうなると気になることがあるのだ。

 アライさんはオイナリサマに聞いてみたのだ。


「あの、おしゃべりなボスはどうなったのだ?」

「おしゃべりなボス?ああ、あのラッキービーストですか。ここにいます。」


 オイナリサマは小さい穴のそばで少し念じたのだ。

 その後アライさんに、もう一回見ろって言ってきたのだ。

 アライさんがそこをもう一回覗き込むと、アライさんのボスがバスを運転していたのだ。後ろにかばんさんと、黄色いのを乗せて。


「そんな……ボス……」


 アライさんはちょっと悲しい気持ちになったのだ。

 オイナリサマはアライさんの肩に手を置いて、哀れむような声で言ったのだ。


「お分かりになりましたか?あなたが死んだ日から、3日経っています」


 そ、そうなのか。かなりショックなのだ。


「でも安心してください。今からあなたを生き返らせます」


 え…?なんでそんなことをするのだ?

 アライさんはそんなこと頼んでないのだ。

 そんなことするくらいなら轢かれる前に助けて欲しかったのだ。


「……ごもっともですが、私は創った世界に直接干渉することはできないのです。」


 よく分からないけど、そうなのか。

 それで、どうして生き返らせてくれるのだ?


「フェネ……パートナーがいない世界で生きるあなたを、救ってあげたいと思ったからです。私もこんな世界を創ってしまったことを反省しています。アライグマ。お詫びにあなたのために、あなたの望む通りの世界を創って、そこに転生させてさしあげます。よろしいですね?」

「イヤなのだ」

「え?」


 アライさんは今までいた世界がいいのだ。

 アライさんにとってどんなにひどい世界でも、まだまだ見ていない場所がいっぱいいっぱいあるのだ。

 それらを全部捨てて新しいトコに行くなんて、もったいないのだ。


「それが……あなたの望みですか?」

「なのだ」


 アライさんがうなずくと、オイナリサマはため息をついたのだ。

 その後ちょっと念じると、もう一回だけ例の穴の中を覗くように言ってきたのだ。

 言われたとおり、アライさんは覗いたのだ。

 そこにあったものを見て、アライさんはちょっとびっくりしてしまったのだ。

 オイナリサマは、わざわざ難しい言葉で説明しはじめたのだ。


「あなたの、亡骸です」


 なきがらって何なのだ?……いや、見ればわかるのだ。つまり死体ってことなのだろう?

 アライさんの死体は、外側から腐り始めていたのだ。ハエとかアリとかがたくさん集まっているのだ。

 指先がちょっと動いたかと思えば、そこからウジ虫が湧いてきたのだ。

 気持ち悪くて、なんだか吐きそうになってしまったのだ。


「あなたが轢かれたあと、誰も埋めたりしてくれませんでした。ただ邪魔にならないところまで移動させられて、そのまま。です」


 アライさんはとっても悲しくなったのだ。

 死んでも誰も気にしない。

 死んでも誰の気にも留められず腐っていく自分が、すごくみじめに思えてきたのだ。


「どうですか?誰もあなたを悼んでいません。酷いフレンズばかりです。これでもこの世界に戻りたいのですか?」


 アライさんは何も言えなかったのだ。

 オイナリサマは手をポンと叩いて、励ますような口調で言ったのだ。


「そうだ!あなたを世界一の人気者にしてあげましょう!憧れてたんでしょう?人気者に!」


 確かにそうなのだ。

 アライさんは人気者になりたかったのだ。

 でも……


「分かっています。自分の力で、人気者になりたいのですよね。大丈夫です。私が今から創る世界は、あなたが簡単に人気者になれる世界です。望みは叶いますよ」


 そう言ってオイナリサマは合掌すると、ぶつぶつと呪文を唱えはじめたのだ。

 アライさんはひっかかるところがあったけど、ちょっと怖くなっちゃって、何も言えなかったのだ。

 そのうちオイナリサマはひときわ大きな声で、アライさんに叫んだのだ。


「イセンテ☆イカセイ!!」


 そしたらアライさんの目の前が急に真っ白になって、ものすごく眠くなってきたのだ。

 必死に耐えようとするけど、どうしても眠いのだ。

 うう……ここは眠気に任せて、寝ることにするのだ。

 アライさんが床に倒れこむ感覚がしたと同時に、オイナリサマの声が聞こえた気がしたのだ。


「いってらっしゃい、アライグマ。そして、幸せになりなさい……」


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