第2話!! としょかんへ向かうのだ!
アライさんがとしょかんへ向かって歩いていると、後ろから物音がガサゴソとしてきたのだ。
でもアライさんはそんなことは気にせずに木々をかき分け前に進んでゆくのだ。
としょかんに行くためには、ゆきやまちほーとみずべちほーを越えていかなければならないのだ。いまはしんりんちほーの真ん中あたりだから、道のりはまだまだ長いのだ。
「ふぅ、ここらへんで休憩にするのだ」
アライさんがそこにあった木の根に腰掛けると、後ろのくさむらからまたガサゴソと音がしてくるのがわかったのだ。
アライさんをつけてくるなんて一体何を企んでいるのだ?
ちょっと怖くなったアライさんは、草むらに向かって大声で言ってみたのだ。
「そこにいるのは誰なのだ!隠れていないで出てくるのだ!」
すると草むらからぴょこんと青いものが飛び出してきたのだ。
アライさんはとっさに身構えたけれど、よく見たら青いものの正体はボスだったのだ。
「ボス!なんでアライさんに付いてきたのだ!?」
アライさんは質問したのだ。
でもボスは答えてくれないのだ。わかっているのだ。ボスとはお話できないことなんて、フレンズのあいだではじょーしきなのだ。
でもこのボスはなにかおかしいのだ。アライさんに、頭の上に乗せたカゴを差し出してくるのだ。
ボスは喋らないけど、このボスが言わんとしていることはなんとなく分かるのだ。多分、この中にあるものをとってほしいと言っているのだ。
アライさんが中を 確認すると、さっきボスに返した食べかけのじゃぱりまんがあったのだ。
「ボス……これをアライさんにくれるのか?」
アライさんは聞いてみたけど、もちろんボスは答えてくれないのだ。
だからアライさんは言ってあげたのだ。
「ボス……アライさんは今、じゃぱりまんを食べる気分にはなれないのだ」
アライさんはそう言ったけど、ボスは変わらず頭のカゴを突き出してくるのだ。
カゴのなかにあるのは食べかけのじゃぱりまん。
なんだか見ていると、もやもやが思い出されてくるのだ。
そう、カラカルの足跡が付いた、砂だらけの、じゃぱりまん。
う...思い出しただけでなんだかみぞおちのあたりがきゅうってなるのだ。
だからアライさんはボスから目を背けながらいってやったのだ。
「やめるのだボス!アライさんはいまじゃぱりまんはいらないのだ!」
でもボスはアライさんの言っていることを無視して、相変わらずじゃぱりまんを差し出してくるのだ。いらないって言っているのに!!
「もういいのだ!アライさんは向こうにいくのだ!!」
アライさんはそう言い残すと、さらに木々を分け入って別の休める場所を探したのだ。
30分くらい歩いてたら、何やらいい感じの木のうろを見つけたので、そこで休むことにしたのだ。
お腹はすいているけど、もうあたりも暗くなってきたし、今日はこのまま寝ることにするのだ。
アライさんはうろの中に下草を敷いて、ちょっとしたベッドを作ったのだ。
ろっじのやつみたいにふかふかしているわけではないけど、寝る分にはちょうどいいベッドなのだ。
アライさんはこういったことをするのが嫌いではないのだ。完成したベッドを見ると、自分のがんばりが認められたような気がして気分がいいのだ。
「ふふふ……できたのだ」
アライさんは草ベッドの上に寝っ転がったのだ。
背中がちくちくしてちょっとだけこそばゆいけど、そこがまたいいのだ。
アライさんが大の字になって目をつむっていると、また外からガサゴソと音がしたのだ。
「一体何なのだ?」
アライさんがうろから顔を出して外を見ると、またあのボスがいたのだ。
そのボスは相も変わらず頭にのせたカゴを差し出してくるのだ。
「またお前か!じゃぱりまんはいらないって何度言えばわかるのだ!!」
アライさんはちょっと怒ってしまったのだ。
でも、考えてみるとボスに怒るのはちょっとヘンなのだ。
だってボスはアライさんにじゃぱりまんを届けに来ているだけだし、アライさんの邪魔をしに来ているわけではないのだ。
なんも悪いことしてないやつに怒ってしまうなんて、りふじん極まるこういなのだ。これはごめんなさい案件なのだ。
ちょっと考えて頭を冷やしたアライさんはボスに謝ることにしたのだ。
「ボス…いきなり怒鳴っちゃって、ごめんなさいなのだ」
アライさんは頭をさげて謝ったけど、ボスはじゃぱりまんを差し出すだけだったのだ。
「ボス……アライさんはお腹はすいているけど、なぜかじゃぱりまんは食べたくない気分なのだ。今日のところはどこかに行ってほしいのだ」
アライさんがボスにこういうと、ボスは言われた通りに向こうに行ってくれたのだ。
案外話してみるものなのかもしれないな。
アライさんはそう考えながら、またベッドに横たわったのだ。
目を閉じたら真っ暗。目を開けても真っ暗。
たまに鳴るお腹は、うろの中でよく響くのだ。
アライさんのお腹の虫さんはおそとで鳴いている虫さんよりも大きな声かもしれないのだ。
アライさんのなかにはそれだけ強い虫さんがいるのだ。頼もしいのだ。
アライさんはお腹をやさしくさすりながら眠ったのだ。
~~~~
チュンチュンと鳥さんの声がするのだ。
どうやら朝になったみたいなのだ。
アライさんはうろから出て太陽を浴びてのびをしたのだ。
うーん、さわやかな朝なのだ。
のびをし終わったあとに、アライさんのお腹がまたぐうううと大きな音を出したのだ。
それを聞きつけたのかわからないけど、アライさんのところに例のボスが駆けつけるようにやってきたのだ。
そして相変わらず頭にのせたカゴをアライさんにつきだしてくるのだ。
でも、昨日と違っていたのは、カゴのなかのじゃぱりまんがアライさんの食べかけではなくて新しい青いじゃぱりまんになっていたことなのだ。
「これは......ありがとうなのだ」
アライさんはなんか食べられそうな気がしたからボスからじゃぱりまんを受け取ったのだ。
手の中にあるのはアライさんの好きな青いじゃぱりまん。
おいしそうなのだ。でも見ているとまたあのことが頭の中にうかんでくるのだ。
踏みつけられたじゃぱりまん。
カラカルのこわい顔。
なんなのだ?これは?またお腹が痛くなってきたのだ。
「ボス……やっぱり今日もいいのだ」
アライさんはカゴのなかに新しいじゃぱりまんを返したのだ。
今日はゆきやまちほーを越えないといけないからいっぱい体力をつけておかなきゃいけないから、あまりよくないのだ。
でも、としょかんに行かなければ、一生じゃぱりまんをたべられないかもしれないのだ。背に腹は代えられないのだ。このままいくのだ。
~~~~
アライさんはついにゆきやまちほーに入ったのだ。
うぅ......やっぱりさむいのだ。
でも、アライさんの危機を救わないといけないのだ。ここが粘り時なのだ。
アライさんは一歩、一歩上り坂を進んで行ったのだ。
ゆきに足をとられて歩きづらいけど、ここは、我慢、なのだ。
前へ前へ、進むのだ。
ときたま後ろを振り返ると、アライさんの後ろには例のボスがついてきていることが分かったのだ。
ボスも、がんばれなのだ。
アライさんは心の中でちょっと応援しながら、足を前に出してゆくのだ。
しばらく歩いていると、恐れていた事態が起こったのだ。
雪が降ってきたのだ。
「マズイのだ。一刻も早く、雪が降らない場所を探さないと……」
アライさんは周りを見渡したけど、辺りは一面ゆき、ゆき、ゆき。
そんな場所は見つからなかったのだ。
後ろにいるボスを見ると、なんか耳が赤く光っているのだ。ピーピーとへんなおとも出しているのだ。
「ボス!?大丈夫なのか!?」
アライさんはボスを抱え込んだのだ。
ボスはほのかに暖かかったのだ。
「どこかに…洞穴は?どこにあるのだ?」
アライさんは雪が解けて、濡れて重くなってしまった足をがんばっていっぱい動かしたのだ。
でもなれない雪道ではぜんぜん動かなかったのだ。
なんだか体も重いし、眠くもなってきたのだ。
そのうち雪は吹雪に変わって、アライさんは完全に動けなくなってしまったのだ。
手に持ったボスを見ると、カゴの中のじゃぱりまんを差し出してきているのだ。
「食べろっていうのか?でもアライさんは……食べられないのだ」
こんな状況で食べないのは駄目なことはわかっているのだ。
でもやっぱりじゃぱりまんをみるとあのときの気持ちになってしまうのだ。
ボスはそれでもじゃぱりまんを差し出すのだ。
「ボスぅ……アライさんは食べたいのだ。そのじゃぱりまんを食べたいのだ……でも、でもぉ、たべられないのだあ……」
アライさんのお目目からなみだがぽろぽろ流れてくるのだ。
「うぅ……ないてる場合じゃないのに……」
アライさんはボスをぎゅっと抱きしめたのだ。
涙が一滴、ボスにかかったのだ。
そしたら。
『あらいさん、だいじょうぶかい?』
ボスがしゃべりだしたのだ。
のっぺりとした声だったから何を言っているのかは全く分からなかったけど、間違いなくアライさんに話しかけてきたのだ。
「ボス…?おまえ、お前しゃべれたのか?」
『そうだよ、あらいさん。きみのために、しゃべらないといけないとおもったんだ』
アライさんは驚いたのだ。ボスとしゃべることができるなんて夢にも思わなかったから。
「ボス、吹雪が強くなってきたのだ。アライさんはどうすればいいのだ?」
『あきらめないで、いしきをしっかりもつんだよ』
「わかったのだ」
『そのために、ぼくとおはなししようか』
どうやらボスはアライさんの話し相手になってくれるようなのだ。
アライさんはボスといっぱいお話したのだ。
じゃんぐるにあった橋が崩れてしまったこと。こはんにあったおうちが燃えてしまったこと。ゆうえんちにあったレバーが折れたこと。ほかにもいっぱいあったけど、これまで見てきたことややってきたことをいっぱいいっぱい話したのだ。
ボスはとっても聞き上手でアライさんの話に合わせて相槌を打ってくれたのだ。アライさんは、お話をしっかり聞いてもらえたのは初めてだったのだ。アライさんはちょっと暖かい気持ちになったのだ。
『あらいさん、ゆきがやんだみたいだよ』
どれくらい話していたのかわからないけど、周りを見渡すといつの間にか雪がやんでいたのだ。
まだじゃぱりまんを食べる気にはなれないけど、ボスとしゃべることができるようになったのだ。この先のたびは楽しいものになりそうなのだ。
なんとなくでてきたやる気で進んでいると、新しい景色が見えてきたのだ。
「ボス!!ふもとが見えてきたのだ」
『やったねあらいさん』
「よーし行くのだ!!」
アライさんはボスを手に持つと、下まで一息に駆け下りたのだ。
としょかんまではもうすこしなのだ。
もうすこし、頑張るのだ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます