第3話!! ぺぱぷを応援するのだ!




 前回アライさんはゆきやまちほーを見事突破したのだ。

 ゆきやまちほーを越えたらつぎはみずべちほーなのだ。

 それで、みずべちほーを越えたら次はいよいよとしょかんなのだ。

 もう少しでとしょかんなのだ。そこでアライさんがかかっている、じゃぱりまんがたべられなくなってしまう病気を治してもらうのだ。


 アライさんがみずべちほーにたどり着いたときには、もうへとへとで倒れそうだったのだ。もう日も暮れて来たし、早く寝床を見つけないといけないのだ。

 アライさんはあたりを見渡すけど寝られそうな場所はぜんぜん見つからなかったのだ。ここは確か、みんなにらいぶすてーじって呼ばれているところなのだ。

 アライさんがとぼとぼと歩いていると、もう暗い夜であるというのに10人くらいのフレンズだかりができていることに気づいたのだ。


「なあボス?あそこにたくさんいるフレンズは何なのだ?」


 アライさんはいつも通り後ろについてきてくれているやさしいボスに聞いてみたのだ。


『わからないな。なにがあるのかきいてみよう』

「わかったのだ」


 ボスに言われたアライさんは、人だかりに分け入って何をしているのか聞いてみたのだ。


「ここで何をしているのだ?」

「ぺぱぷのライブを待っているんです」


 そしたら灰色と白のワンピースを着た、気弱そうなフレンズが答えてくれたのだ。


「ぺぱぷってあのアイドルのことか?」

「そうですよ。ほかにありません。明日はイワビーさんの新曲が披露される日なんです」

「そうなのか」


 アライさんはアイドルにぜんぜんくわしくはないけれど、ぺぱぷくらいは知っているのだ。ペンギンのフレンズが四匹か五匹集まって、歌って踊る集団のことなのだ。

 そいつらが明日ここで歌って踊るのか。

 でもなんかおかしいのだ。その集まりがあるのは明日なのに、なんで今からこんなところにいるのだ?

 アライさんは気になってその灰色と白のフレンズに聞いてみたのだ。


「私たちは、徹夜待機組なんです」

「てつやたいきぐみ?」


 聞きなれない言葉に、アライさんは思わず聞き返してしまったのだ。

 そいつ曰く、ぺぱぷは人気だから、当日はたくさんのフレンズが会場に押し寄せるらしいのだ。でも席には限りがあるから、順番の最初の方にいないと前の方にあるいい席をとられてしまうらしいのだ。だから今から並んでいるらしいのだ。

 さっきから、らしいらしいばかりだけど、聞いた話だからしかたないのだ。許してほしいのだ。

 ところで今から並ぶとなると、一つ疑問が生じてくるのだ。


「じゃあお前は、今日はここで寝るのか?」

「そうですよ」


 驚いたのだ。だってここはアライさんが最も寝にくい場所だと思っている地面アスファルトなのだ。こんなところで寝たら体を痛めてしまうのだ。

 でも、そいつが言うには、人気者のぺぱぷのためなら一日くらい平気らしいのだ。

 アライさんはなんかぞくっときたのだ。


「あれー?ハイラックスちゃーん?新人さんー?」


アライさんがそいつと話していると、急に後ろから声がかかったのだ。

みると、そいつは白と黒のセーラー服を着た垂れ目のフレンズだったのだ。

アライさんはとりあえず会釈をしながら言ったのだ。


「ど、どうもなのだ」

「はじめましてー、私はー、ぺぱぷ愛好会代表のジャイアントパンダだよー。よろしくねー」

「よろしくなのだ」


急に握手を求められたからつい応じてしまったけど、アライさんはぺぱぷを愛好する気はさらさらないのだ。

でも、コイツの話し方は落ち着くというか、安心するというか、なんというかそんな感じがするのだ。一体何なのだ?

あ。いけないのだ。手を握りっぱなしだったのだ。

ジャイアントパンダはちょっと笑いながらアライさんに言ってきたのだ。


「ふふふー。ひょっとしてあなた、入会希望ー?いいよー。」

「ち、違うのだ!!アライさんはアイドルなど全く興味がないのだ!」

「えー?本当?」


ジャイアントパンダは少し残念そうな顔でこっちを見てくるのだ。

う、なんかわからないけど悪いことをした気分なのだ。

でもここは正直に言うのがいいと思うのだ。


「アライさんは寝床を探しにたまたま通りかかっただけなのだ!さよならなのだ!」


アライさんがちょっと大きな声を出して言ったら、ハイラックスとジャイアントパンダがお互いの顔を見てうなずいたのだ。一体何をするつもりなのだ?

そう考えていたら、ハイラックスの方がまたアライさんに話かけてきたのだ。


「えーと、じつは私たち、持ち運びできる寝床を持っているんです。一つ余っているので、良ければどうぞ」


そう言ってハイラックスはアライさんに円筒形の何かを渡してきたのだ。ジャイアントパンダはこれを昔ヒトが使っていたねぶくろと言うものだと言っていたけど、どうやって使うのかさっぱりなのだ。アライさんが悪戦苦闘していると、二人は優しく教えてくれたのだ。ぺぱぷ愛好会、とってもいいやつらなのだ。


かくして、アライさんはねぶくろに入ったのだ。

なるほど、これは確かに暖かくて、寝心地もいいのだ。

ちょっと窮屈だけど、その、自分の縄張りにいつも触れている感覚というか、逆に安心するかもしれないのだ。


「悪くないのだ」


アライさんがつぶやくと、ハイラックスが話しかけてきたのだ。


「そうですよね。私もこれ、好きなんです」

「そうなのか」


まんてんの空の星を見ながら、ハイラックスの言うことを聞いていたのだ。


「明日のイワビーさんのライブ。私とっても楽しみにしていたんです。なんたって一番のの推しですから」

「そうなのか」


アライさんは興味はなかったけど、ねぶくろの恩もあるし聞いてあげることにしたのだ。


「イワビーさんの魅力はですね、なんといってもロックなんです。我が道を突き進むというか、人がやらないことを平然とやってのけるというか、わたしとってもあこがれているんです。」

「そうなのか」

「そうなんです。それからですね……」


ハイラックスはしゃべり続けてくるのだ。

アライさんはそうなのかって言ってるうちに、そのイワビーってやつが気になってきたのだ。そう思うと、明日の新曲らいぶってやつが、アライさんも楽しみになってきたのだ。

そのあとしばらく話した後、ハイラックスが言ったのだ。


「あ、少し熱くなりすぎてしまいました。明日のためにもう寝ますね。おやすみなさい」

「おやすみなのだ」


ハイラックスは無言になったのだ。

でもアライさんはまだ目を開けて、星をみていたのだ。

今日は雲一つなくてとてもきれいに見えるのだ。

こんな大きな空に比べたら、アライさんの悩みなんてちっぽけなものなのかな、とも思えるのだ。

そんなことを考えていると、ふいにボスの声がしたのだ。


『ねむれないのかい?あらいさん』

「ふぇ?」


アライさんはちょっとびっくりして横をみると、いつものように優しいボスがそこにいたのだ。


「ボス?そうなのだ。実はお腹がすいて、眠る気になれないのだ」


アライさんのお腹の虫がまたグ―と鳴るのだ。

ボスはカゴの中のじゃぱりまんを、無言でアライさんに差し出してきたのだ。


「いや、じゃぱりまんは明日食べるのだ。としょかんにいけば、また食べられるようになると思うから、それまで少し待つのだ」

『わかったよあらいさん。すこし、よかぜにあたろうか』

「そうすることにするのだ」


アライさんは少し蒸れてきたねぶくろから出ると、体を伸ばしたのだ。

風が気持ちいのだ。

そしてボスに言ったのだ。


「ボス。アライさんは明日、イワビーの歌を聞いてからとしょかんに行くことにしたのだ。それでもいいか?」

『いいよ。ぼくもつきあう』

「ありがとうなのだ。ボス」


寝る気になれないアライさんはそのまま近くを歩くことにしたのだ。

今日はお月様がちょっとしか出ていないから、お星さまの明かりを頼りに壁伝いに進んでみたのだ。

そしたら壁の中に入れる扉を見つけたのだ。鍵がかかっていないのだ。入れるのだ。


「なあボス?せっかくだから明日の下見をしないか?」

『いいとおもうよ』


ボスから許可をもらったので、会場に入ることにしたのだ。

アライさんが扉を開けて中に入ると、ボスも後ろからぴょこぴょこと飛び跳ねながらついてくるのだ。

やっぱりボスがいると安心なのだ。


会場を進んで行くと、ステージが見えてきたのだ。

でもそのステージを見たアライさんは驚いたのだ。

なんと、ステージの後ろにある金属の骨組みが曲がっているのだ!!


「これは......どういうことなのだ?」

『うーん。わからないな』


ボスは言うけど曲がっているのはよくないのだ。


アライさん曲がったことは嫌いだし、曲がったステージでライブするのは危ないんじゃないのか??

イワビーがけがをしてしまったら、ハイラックスも悲しむのだ。

そうと決めたらやることは一つなのだ!!


「ボス。アライさんは明日みんなが来る前に、この骨組みをまっすぐに戻そうと思うのだ!いい考えだよな?!」

『さすが、あらいさんだね。がんばって』


アライさんは骨組みを動かそうととりあえず触ってみたけど、びくとも動かないのだ。

どうやらかなり頑丈に固定されているようなのだ。


どうしようかと悩んでいると、近くに肩幅くらいの箱があることに気づいたのだ。

たしかこれは、ゆうえんちにもあった、工具箱ってやつなのだ。


「そうなのだ!たしかこの中のれんちがあればカクカクを回せて、外せたはずなのだ!」

『がんばってあらいさん』


アライさんが箱を開けると、予想通りいろいろな大きさの金属の道具が入っていたのだ。アライさんはそれを使って、悩みながらも骨組みのねじみたいなところをいっぱい外していったのだ。

そしたらついに、骨組みが外れそうになったのだ。


「よし、押すのだ」


アライさんがちょっと力を入れると、骨組みが大きな音を立てて倒れたのだ!

大変だったけど、ステージごと外れたのだ!ばんざーい!

あとはこれをまっすぐに戻せばいいだけなのだ!頑張るのだ!!


『くらいから、きをつけてね』



~~~~



マズイのだ。

もう朝なのだ。

でも、ステージは倒れたまま、ぜんぜん直っていないのだ。

直そうとすれば直そうとするほど別の部分が壊れていくのだ。

終わらないのだ。

これじゃあライブはできないのだ。

ごめんなさい案件なのだ。

悩んだ末アライさんはボスに助けを求めたのだ。


「ボス……アライさんはどうすればいいのだ?」

『だいじょうぶだよ。すなおにあやまれば、みんなゆるしてくれるよ』

「そうだな。素直にあやまることにするのだ」


アライさんは直すのをあきらめてステージから降りたのだ。


すると白と黒の衣装に身を包んだ5人組とネコっぽいやつがやってきたのだ。

ネコっぽいやつは悲しそうな顔をしているのだ。


アライさんはそいつに小走りで駆け寄って謝ったのだ。


「あ、あの!ごめんなさいなのだ!!」


でもネコっぽいやつは無反応だったのだ。

だからアライさんは続けて言ったのだ。


「アライさん曲がったステージを直そうとしたのだ。そしたらもっとひどいことになっちゃったのだ。本当にごめんなさいなのだ」


アライさんはもうこれ以上ないくらい頭を下げたのだ。

でも、みんな反応してくれないのだ。

無言なのだ。

どうしてなのだ。


しばらくすると、ネコっぽいやつが静かにしゃべりだしたのだ。


「待っているお客さんに中止の連絡をしてくる」

「ふぇ?」


ネコっぽいやつはふらふらとした足取りで向こうへ行こうとしたのだ。

それに対してとげとげしいペンギンが遮って言ったのだ。


「ちょっと待てよマーゲイ!オレの新曲は!?ロックな曲げ鉄骨ステージはどうなったんだよ!」

「イワビーさん。見ればわかるでしょう?これじゃ開催できない。中止です」

「そんな……」

「ごめんなさい、イワビーさん」

「なんでマーゲイが謝るんだよ!!」


イワビーはアライさんをちょっと睨むと、舌打ちをして他のメンバーと一緒にどこかに行ってしまったのだ。

アライさんが反省したのが伝わったのか?

わからないのだ。


アライさんは頭を上げたのだ。そして、上を向いたのだ。

ここでじっとしていてもしょうがないのだ。

アライさんは今からとしょかんを目指すことにするのだ。

空腹とやるせなさでぼーっとした頭を叩いて、アライさんは会場を出たのだ。



~~~~



会場を出ると、ジャイアントパンダとハイラックスが待ち構えていたのだ。


「あ、ハイラックス……」


アライさんはハイラックスに声をかけようとしたけど、ハイラックスはアライさんをみると一言、「最低」と言って立ち去ってしまったのだ。

ジャイアントパンダもアライさんをちらりと見ると、ハイラックスと一緒にどこかへ行ってしまったのだ。


アライさんはひとりぼっちになってしまったのだ。


『そうでもないよ。あらいさん』


不意に下から声がしたのだ。

見ると、じゃぱりまんを差し出すボスがいたのだ。


『あらいさんはみんなのために、よくがんばっているよ。ぼくはみているからね』


ボスの優しい言葉に、アライさんは泣きそうになってしまったのだ。

よし!これにめげずに、としょかんへ向かうのだ!








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