幼馴染が落ちません!

蒼原凉

プロローグ side和馬

 幼馴染というのは昨今のライトノベルだったり漫画だったり、あるいはゲームだったりで、かなり重要なポジションを占める。それが異性となればなおのことだと思う。ヒロインだったり、あるいはラスボスだったり。主人公との関りは重ねてきた年月の分当然多いわけで。だから第二次性徴を迎えて図らずも多少意識してドギマギしてしまう、なんてことがよくあるのだけど。実際俺もそうなんだけど。

 ここまで何が言いたいかというと、俺こと仁科和馬にしなかずまには幼馴染がいる。幼稚園から現在の高校までずっと一緒の学校だ。中学までは習い事も一緒だった。仲も良好で、容姿は控えめに言って天使と言っていい。主観交じりだが。


 ダークブラウンのミディアムショートに薄紅色の唇。二重瞼が、白い肌を際立たせ、瞳の色には少しグレーが混ざっている。母親がクオーターなんだそうだ。だから、ワンエイスかな? 知らないけど。


 背はどちらかというと少し高め。外国人の血が入ってるからかな。俺が男子にしては低い方だから、5センチも違わないくらいだ。一応俺の方が高いと言っておく。虚しい虚勢だけれど。胸は……、明言は避けよう。でも、スレンダーな体形で魅力的だとは言っておく。ついでに俺は貧乳派ですよ。


 そして、実際に天使の格好をしたこともある。小学6年生の時、無理やりに改変させられたロミオとジュリエットで、天使役をしていた。ちなみにラストシーンしか登場しなかったが、俺は彼女の美しさに息をのんだ。神秘的で、神々しく見えて、現天使かと思ったくらいだ。


 とまあ、ここまで書けば、大体の人は想像がつくんじゃないかと思っている。



 少し恥ずかしいが、端的に言えば俺は彼女に惚れている。……まだ恋人じゃないのだけれど。


 というのも、俺がヘタレとか、そういうわけじゃないと思う。というのも、だ。



「ないって。和馬はただの幼馴染でそれ以上でも以下でもないから。付き合うとかありえないし、和馬だってそんな気ないって。大体あれだよ? ヘタレの和馬だよ? もっとかっこいい人いるし」


 何気なく聞いた女子同士の会話。コイバナってやつ。どうやら、俺はまったくもって意識されていないらしい。それとなく、好意を伝えているのに、どうやらただの親愛だと勘違いされているらしいのだ。好きのベクトルが散乱してる。


 そもそも、同じ土俵にすら挙げてもらってないのに、どうすればいいというのだろう。せっかく同じ高校だし、部活も同じ軽音部にしたのに、ただ仲がいいくらいにしか思われていないのだ。



 これでは、彼女を、舞坂咲まいさかさきを落とせない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る