第2話 目覚めたら知らない場所でした



「あれ?もしかして、橘さん?」


振り返るとそこにはイケメン上司がいてハッとした。


「!?違います。人違いですねー」


わたしはとっさに何を言っているのだ!

全女性社員が射抜かれたと言う上城スマイルが眩しくてとっさについた嘘が申し訳なくて、居たたまれなくなってすかさず、わたしは謝罪をした。


「いや、僕の方こそごめんね、プライベートの時間に話しかけたら迷惑だよね」

「い、い、いえ。。。こんな格好で会いたくなかったです(小声)」


私は気まずすぎて顔がひきつる。


聞こえない程の小声だったため

一瞬首をかしげるイケメン上司の顔すら神々しいく見えて見るのも辛い。



女性社員の間では、"上城スマイル"は有名でこれを見たくて、会社の通行口やエレベーターホール、部署の前などに密かに毎朝ファンが集まっているのだ。


でも私は仕事に必死で色めきだっている余裕もなく気にもしていなかったから、今日はイケメン上司と絡む事が多くちょっと慣れなくて挙動不審です。


それに今ココが会社ならば絶対に女性社員達から何を話したのか事情聴取されそうな気がする。



酔っているせいか頭がボーとしてふらふらするような。。。


「すみません、さっきちょーっと、、、飲みすぎたかもしれません、、フラフラす、る」


「たちばなさん!大丈夫、、、!?」


心配する部長の顔が近い気がする。。。

あ、だめだ、部長の顔が霞んで、み、、える。。。





スーーッと視界が暗転した。











---------------












夢を見てる時は私はいつも、これは夢だって、気がつく。

ふわふわしてて、あったかい。

夢の中では空だって飛べるし、

魔法だって使えるし、

理想の王子様が優しく頭を撫でてくれて。。。。


そうそう、こんな感じ。。。

あったかくて大きな手。

前髪をそっとかきわけるように、、、


はっとして目を開けると目の前に"上城スマイル"があった!

驚いて飛び起きた私はどうやらイケメン部長に膝枕されていたようで、慌てふためき、部長から離れた。


「え!?なんで!?え?ってかここ何処!!!!??、は?????」


膝枕の状況の他に辺りを見回すと、崩れた壁、ビリビリのカーテンの窓、壊れたテーブルや椅子、ボロボロの家具、ソファの上にはイケメン部長。

お化け屋敷?廃墟みたいな部屋だった。


「?????え???ん???あ???は!???」


パニックに陥った私は、挙動不審者状態


「この状況、驚くのも無理はないと思うよ。30分位前の僕も目が覚めて橘さんと同じだったからね」


30分?目が覚めた?

何????

確か、スーパーで、上城部長に声をかけられて。。。。


「僕も橘さんに声をかけた辺りまでは覚えているんだけど、そこからの記憶がないんだ」


???何が起こったの???

誘拐?拉致?なに??


「少しだけ外の様子を見てきたんだけど、使われていない村みたいで、僕らの他にも人が居たよ」


え???何かの冗談ですよね???

言っている意味が理解できない。。。


窓の外からざわざわと声が聞こえてきて、目をやると、広場のような場所に沢山の人が向かって歩いているのが見えた


「他のみんなも目を覚まし始めたみたいだね。僕らも外に出よう」


なんでこんなに部長は落ち着いているんだろうか?

私には唐突すぎて頭の処理速度が追いつかない。



所々抜けた床に気をつけてながら上城部長と共にボロ屋をでて広場に向かう途中、辺りを改めてよく見てみると、何年も前に村は放棄された感じだった。

屋根が崩れてたりガラスが割れてたり、家財道具らしきものが散乱していた。


私は怖くなって、無意識のうちに上城部長の服を掴んでいた。

それに気づいた上城部長は私に優しく声をかけながらゆっくり歩いてくれていた。


私は突然、視線を感じたような気がして振り返った。


何軒か先の物陰に真っ赤な長い髪の人が立っていることに気がついた。

こちらを見ている???


「どうしたの?橘さん」

「あ、いえ、あそこに人がいて、、、あれ?、、、家に入ったのかな?、」

「まぁこの状況じゃ怖くて家からでれない人をいるだろうしね。」


たしかに、もし私一人なら怖くてしばらくあの部屋から出られなかったかもしれない。


広場では私たちと同じように突然ここで目を覚ました人達の声が飛び交っていた


「ここはどこなんだ!」

「家に帰りたい!」

「何かわかる人はいないのかっ!?」

「私、死んだの!?誰か教えて!」

「集団拉致だ!」

「誰か電話繋がるやついるか!?」


沢山の声の中から、携帯の話題が出ると、みんなが一斉に携帯を探し出した


「そうだ!上城部長!カバンにスマフォが!」


私の荷物を上城部長が持ってきてくれていてカバンからスマホ取り出すと、すぐに落胆した。そんな簡単じゃないか。。。

圏外だ。


「目が覚めて最初にスマフォは試したよ。ここがどこなのかわからないかと思ったけどダメだった」


そんな、、、この意味のわからない不安だらけの状況で上城部長は落ち着いているように見えた。


周りでは何もわからないこの状況の為

不安から泣き出す人や

とにかくなだめようとする人

苛立ち始める人が多かった。

私も怖いけど、ちょっとイライラしてるかも。



目をさましてから一時間くらい経って周りにいた人たちと、ここに来る前の話をしてみたり何とかして心を落ち着かせようとしていた。

空がだんだん薄暗くなってきた時、広場の中央付近から呼びかける声が聞こえてきた


「辺りを散策してみたが電源はなさそうだからとりあえず、力に自信のあるものたちでここに火を起こそうと思う!手伝ってくれー」


何人かの男性たちが集まって燃やせそうなものを集めて広場の中央に積んでいった。


「女の人達は燃えやすそうな軽いもの集めたくれないか!」


私も目が覚めた時に家に戻って紙など燃やせそうなものが無いか探しに戻ることにした。

暗くなったらますます怖くなるよね。。。

普段寝るときは真っ暗派だけど、この状況だと明かりがないと逆に怖い。。。


スマフォのライト機能で家の中を照らし目が覚めた部屋に向かった

こっちかな?ってか、だいぶ暗くなってきたからちょっと怖いなぁ、、、早いとこ何かないか探さないと!

あ!ボロボロのカーテン使えそう!

ガシガシと引っ張ってカーテンを外しホコリでむせながら部屋を出て、キッチンらしき方向にライトを当てた

何これ?ゴソゴソ


あ!これってランプかな?使えないかな?

ボロカーテンとランプを片手に広場に戻ると他にも何人か他の家から使えそうなものを持ち寄っていた。


何人かが、人の持ち物を奪い合っている光景が目に入った


「やめるんだ!」

「よこせ!」

「キャー!これは私が見つけたのよ!返して!」


自分だけ良いものを。

自分だけ助かりたい。

わからなくもないけど、怖くて何もできない。。。


その略奪の瞬間を見てしまったらとっさに私もランプを隠してしまっていた。


「寝る場所の確保をしないと!この家は俺が目をつけたんだからな!入るな!」

「俺たちだってこの家で目が覚めたんだ!入れろ!」


争いごとは絶えない。

この状況下で、誰かが説得を始めてもきっと治らない。

ドラマや映画の世界とは違う。

きっと逆に殺されてしまうかもしれない。


怖くなって広場から逃げ出そうとした時、誰かに肩を触られた

驚いて振り返ると、上城部長が居た


「大丈夫?探してたんだ。それ、カーテンを貰うよ。火に投げ込んでくるよ。今度こそここで待ってて」


カーテンを持って焚き火の方へ向かう上城部長が頼もしく見える。

この人といれば大丈夫。

根拠はないけどそう思えた。


「あ、あの!ランプ見つけたんです」

「、、、凄いよ!これで家の中に入っても安心だね。貸して、ランプに火をつけてくる」


カーテンを投げ込み、ランプに火をつけ上城さんが戻ってくる途中、男に絡まれた


「おい!そのランプよこせ!」


男が後ろから上城部長に掴みかかろうとした瞬間、

上城部長は男の手を掴み一捻りすると男は宙を舞い、ドサッ!と鈍い音がして、あたりはシーンと静まり返った。


「この状況下なら誰もが守りに入るのは当然のことだよ。でも、せっかく力があるのなら誰かから奪うんじゃなくて誰かを守るために使いなよ。僕ならそうする。これは、僕の連れが見つけたものだから、失礼するよ」


か、カッコィィィ

まさにイケメンかよ!

ざまぁみろ!と思いつつちょっとチクリときた。


「おまたせ、行こうか」

「は、はい。。。」





上城部長の少し後ろを歩いて目覚めた廃屋に着くと他の部屋にすでに人がいて話を聞くと彼等も同じ家で目が覚めたようだ。

ここにくるまで

男性の方は仕事をしている途中で気がついたらここにいたみたい。

もう一人の女性は寝ようとしてたところ、同じように突然ここにいたとか。。。

二人は付き合っているそうでちょっと羨ましかった。

こんな知らない場所に一人でいるなんて不安で仕方ない。

知っている人がいたと言え、上城部長とは仕事で少し話す程度の何処にでもいるふつうの上司と部下の関係。


桜子さん、大丈夫だったかな?

私がいなくなって踊ろてるだろうな。。。

桜子さんも一緒に来てたら心強かったろうに。。。


そんなことを考えながら30分ほど話しをした後、私と上城部長は目覚めた部屋で、今夜は眠ることにした。


部屋に入りランプを扉に掛け、私は窓のそばにある小さな台によりかかり、静かになった外を眺めため息をついた。

少し離れた広場の焚き火の周りには何人かまだ見える。


「今日は大変だったね、、、」

「上城部長がいなかったらどうなってたことか。。。」

「いや、僕は何もしていないよ」


会話が止まる。

でも無理に話す必要はない気がする。


そういえば、私、ジャージだったんだ。

家で過ごすには快適だけど、こんな場所ではちょっと寒い。

ボロカーテンを外したから広場の明かりがほんのり部屋の中に入ってきてちょっと安心する。


仕事に行きたくない!

辞めたい!

あぁぁぁぁぁあ!!!

って毎日仕事のことばかりかんがえてモヤモヤしてたのに、

こっちにきてからは、この状況は何なのか、ずっと考えてた。




「もう少し起きてる?」

「疲れましたけど、寝れるかな?何があるかわからないし。。。」

「なら、橘さんがよければだけど、少し話しをしませんか」



窓の外に向けていた視線をソファにすわる上城部長をみて、目を覚ました時の事を思い出して、急に恥ずかしくなった。


そういえば、なんで、、、


聞くのも恥ずかしくて自分の顔が真っ赤になっていることがわかる。

暗くてよかった。


「どうしました?」


なんかよくわからないけど、なんで、膝枕されてたんだろ???しかも、あの"上城スマイル"だったような。。。


「ん???」


今も、首を傾げながら至高の"上城スマイル"ファンでない私でもこれはずるいと思っちゃう!

ダメだ!これは、聞かなきゃ眠れない!


「なんで、膝枕しながら微笑んでたんですか!!!」

「え?、、、あ、なんか、気持ち良さそうに寝てたから、つい。。。」


なっ!?


油断しまくった姿でただでさえ他人のふりしようとしたくらいなんだから!

寝顔を見られるって相当恥ずかしいだよ!!!

いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ

静かに悶えた


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