第4話恐らく私、強いです




『頑張り次第で我々を倒すこともできるかもしれないなぁ、ふはははは。だがしかしお前たちは我々の餌であることは事実。強くなればなるほど我々の望む形となるが、同時にお前たちがこの世界で生き抜く力ともなろう』



「強くなればなるほど、美味しいってことじゃん。。。」


私がボヤくと幸一が取り乱した


「ふ、ふざけんな!俺たちが餌!?ありえねぇだろ!!!」


『賢いものならすぐに武器を選びこの村を出ていくだろう。選択できぬものは生き残れない世界だからねぇ。じゃ、せいぜいあがいて見せておくれ、はははは』


魔物はそういうと、空に向かって消えていった。

すでに何人かは武器を手に取り動き始めていた!!


「ど、どうすんだよ!マリカの治療だって!どーしたらいいんだよぉ!」

「何か治療に使える物はないか探そう!橘さん、マリカさんをお願いできるかな?幸一くん、僕たちもあそこに行こう」

「あぁ!マリカすぐに戻るからな!」


二人は武器が積まれた場所に向かっていった。


「マリカさん、すぐに薬か何か探しますからね!」

「うっうぅ、い、たい、、うぅ」


武器を手にしたものたちは周りの怪我人には目もくれず、村の出口へ向かっている。

強そうな連中は声を掛け合ってチームを組むようだ。

ゲームの世界でも、少しでも有利にクエストを進めるために足手まといより、強そうなものと組みたいに決まってる


私も何か武器を手に入れたい。

でも今はマリカさんを放っておけない!

どうしたらっっ!!




バタバタと我先にと武器を取り村を出て行く者たちで砂煙がたっている



「うそ!ロミちゃん??」

聞き覚えのあるこの癒し効果のあるボイス!!


「!!!桜子さん!?」

「「よかったぁぁぁぁああ」」


私たちは抱き合いお互いの無事を安堵した


「桜子さんもこっちに飛ばされてたんだね!!!」

「いきなり一人だったから本当に心細かったの!」


心強い!仲間!同士!

私たちは目をウルウルさせながら再開を喜んだ


「待って、桜子さんその武器!もしかして」

「うん!迷わず杖を選んだよ!」

「!なら!回復魔法使えないかな!?」

「試してみないと分からないけど、おそらく使えると思う!」


上城部長たちが戻ってきた


「ごめん!手当できそうなものが無かったよ。。。」

「私に任せてください!私の選んだこのロッドで治せると思います」

「桜子さん!お願い!」

「?あ!三日月さん!!」

「ぶ、部長??部長もこっちに!?あ、今はとにかく、この人の治療に専念します。ロミちゃん、装備はまだなんでしょ?略奪が始まっている!全て盗られる前に選んできて!」

「わかった!マリカさんをお願い!」



私は立ち上がり武器のある場所に向かって走った

助かる!桜子さんがいれば、絶対この状況も切り抜けられる!


実は私達は同じオンラインゲームをプレイしているのだ!!!!

ゲームの中で桜子さんは回復を得意とするジョブ!ヒーラー

私は、魔法と剣の両方を使いこなす、魔法剣士だ。


なにかいいものが残っているといいけど。。。


「橘さん!待って!ひとりじゃあぶないよ!」

振り返ると銃を手にした上城部長がいた

「部長、ガンナーにしたんですね。いい判断だと思います」

「え、が、ガンナー?」


私は残り少ない装備品を探してあたりを見渡した


「おらおら!どけ!ここにある武器は全部俺がいただく!」


残り少ない装備品を探す人達を蹴散らしてガタイのいい男がこちらに向かってきた


「な!一人に一つ選ぶ権利があんだ!やめろ!」

「笑わせるな!死ぬか生きるかなんだ!助け合ったって生き残れやしない!」


私は気に留めることなく、残り物の中から、自分に合った武器を探した

残っている物は、


短剣

錆びついた長い剣

トゲトゲのついたグローブ

木の枝みたいな杖

重すぎて持てそうもない大剣

今にも折れそうな杖

ボロボロの汚れた杖


どらにしようかと、かがんだ時、先ほどの大男が私を蹴り上げようとした!


「わっ!」


驚いて尻餅ついた私を男はゲラゲラと笑いながら落ちていた残りの武器を拾い集めている



「失礼な人だね、女性に暴力を振るうなんて!橘さん怪我はない?」


手を引かれ立ち上がると、上城部長はすぐに、大男のとこに歩いて行き、昨晩と同じように相手の腕を掴むと一捻りで宙を舞った


どんっ!ガシャガシャン!


「上城部長、マジイケメンかよ(小声)」

「え?何か言った?」


落ちた装備品の一つが私の足元に転がってきた、ボロボロの汚れた杖を拾い上げると突然、杖が光だした!


「わっ!」


眩しくて目を閉じてしまう


「た、橘さん!!それ!なにが起こったの!?」


杖を見てみると、先ほどまでとは形状が変わっている!


治療を終えた桜子さんが駆け寄り私の手にした杖を見て声を荒げた


「ろ、ロミちゃんそれ!当たりなんじゃ!?」


マジマジと杖を見てみると、水晶部分が濁りなく透き通っているのがわかる

装飾も駆け出し冒険者が持つものにしては、豪華すぎる気がした。


「それはおれが目をつけた武器だ!よこせ!」

先ほど部長にひっくり返された大男が懲りずにまた私に難癖をつけてきた


でも今度は、桜子さんと上城部長の二人が私の前にでて、大男がを静止してくれた。


「おじさん、見苦しいですわ。これはロミちゃんが手にした事で、杖の持つ本来の能力が解放されたんですから、ロミちゃんにしか扱えない代物ですわ。おじさんじゃ手に持つことすらできないと思いますわ」

「ふざけるな!お前達みたいなザコが生き残れるか!これは俺が売って俺が生きるために使うんだ!」

「まぁ!なんて薄着たい心の持ち主かしら。ヒーラーや魔術に長けた者と行動した方が絶対に生き残れるか可能性は高くなると思うけど」


ペラペラと桜子さんが大男を相手している間私は杖から流れてくる、この杖の情報を読み解くのに必死だった

勝手に頭の中にこの杖の持つ能力がどんどん流れ込んできているのだ。

これ、レベル1の駆け出し冒険者なんかじゃ扱えないよ!

スキルがハイレベルすぎる!!

必死に情報を読み解く最中、視界の左上あたりに不自然な表記が見えた、私の名前が表示されていた


「"Rommie Lv.???"」

「それ、ロミちゃんも気づいた?」

「ごちゃごちゃうるせぇ!」


大男が落ちていた大剣を振り下ろそうとした瞬間、流れてくる情報が止まり身体が勝手に動いた


キィィィィィィィィィィインッッッツ!!!

「なっなにしやがった!?」


私がかざした杖の先端から数センチ程離れた位置で大男が振り下ろした大剣は止まっていた。

プルプルと男の腕が力んでいるのがわかる


「た、橘さん!何をしたの!?」

「ロミちゃん最高!」


私の心臓が高鳴った!

笑いを堪えられない!


「きた(小声)」


ニヤリと笑い杖を一振りすると大男はいとも簡単に吹っ飛んだ


そこに居合わせた人々は驚きのあまり口があいている

桜子さんだけはガッツポーズをしてた


キタキタキタキタキターーーー!

これぞ異世界!

私と桜子さんの得意とする世界!




「お、おぼえてろよー」

大男はどこかへ走り去っていった



「ロミちゃん!」

「「いぇーーーーい!」」

「占いで、"残り物には福がある"って、あれ本当に当たったよ!」

桜子さんと笑顔でハイタッチをして抱き合った!

私たちがキャッキャしていると、

私たちを怖がって離れて行く人達と

私達に助けを求める人達とでざわついていた


「三日月さんと橘さんは、この状況に慣れてる、、の????」

「あ、いえ、たまたまですよ!よくはわからないですが、たぶん選んだ武器がきっと適正だったんじゃないかなっ??だから、すぐに使えたんだと思いますっ!ほら映画とかアニメとかでたまたま見た事あるなぁーなんて、たまたまですよ?たまたま」


すかさず桜子さんがフォローしてくれた


たしかに今は何となくゲーム大好きOLである事を伏せたかった。

私と桜子さんはそこそこ上位のギルドに所属してそこそこ名の知れたコンビとして毎日楽しくゲームをプレイさせていただいてたので、まぁオタクと言われてしまえば、まぁオタクになるんだと思います。

なので、ちょっと恥ずかしい。



「桜子さん、話があります」

「うん。私も話があります」


私達はこの状況を早く話したくて仕方がなかった、できれば他の誰にも邪魔されない場所で。


「桜子さんアイコン見えてる?」

「うん。私のレベルは65って表示されてる、さっき武器を装備した瞬間、情報が流れてこなかった?」

「うん流れてきた、私、レベルが"???"って表記なんだよ!それにスキルも多すぎて全部見れないくらい」


二人でヒソヒソ話していると、他の人たちが集まってきていた


「何か知ってるならコソコソしてないで教えなさいよ」

「そうだ!教えろよ!」

「たまたまであんな凄いことできないだろ!」



はっきり言って私にこの人達を助ける義務はない。

生きるか死ぬかの状況だからこそ尚更自力で進むしかない。

ゲームの中なら簡単に見捨ててるけど。。。


でも今は現実どし、見捨てるのはさすがに心が痛む 。。。


「三日月さん、橘さん、少しでもわかる事があれば、教えてもらえないかな?」


私達は目を合わせうなずき、話し始めた


「あの魔物の話しからまとめると、ここは私たちが住んでいた世界とは違う世界です。この異世界では、私達は"餌"として連れてこられたようです。みなさんがそれぞれ手にした武器を頼りに敵を倒し、経験を積み強くなる事を強いられました。私たちの事を"極上の魔力源"とも言ってましたから、恐らく強くなればなる程に奴らにとって私達は"最高級の食材"という事になります。ですが強くならなければ生きて行くこともできないかと思われます。奴らの思っている以上に強くなる事ができれば、殺されずに済む。という事でもありますが。。。。」


みんな黙り込んでしまった

私の説明難しかったかな?

本当なら今すぐにでもこの村を出て外の状況を確認しつつ町や村を探したいところなんだけどね


気の強そうな女性が手を挙げ質問をしてきた

「こんなの使えって言われてもこんな野蛮なもの扱った事ないし、この村に残れば帰れるかもしれないのに、わざわざここを離れてまで旅をする必要があるの?」


たしかに、ごもっともです。

模範的回答です。


「そうだそうだ!ここに残ってれば誰か助けに来てくれるかもしれないし、帰れるかもしれない!」

「そうだよ!それに強くならなかったら、殺されずに済むかも!」


ざわざわし始めた。このままでは、時間だけ過ぎてしまう。


「残酷だけど、助けが来る確率は低い気がする。」

「は?何で助けがこないと言い切れるんだ!」

「あの魔物はこう言ってました『わざわざ時間をかけて呼び寄せた』と言うことは、何らかの儀式的なことをして私達はココに召喚されたと考えるのが妥当ではないかと。。。」


しーんと静まり返った


「私達は、すぐにでもこの村を出ます。この村に残りたい方達はそれも一つの選択だと思います。ですが、ここに他の魔物がこない。という保証はありませんので、あくまで自己責任だと思います」


桜子さんが私の代わりに切り出してくれた。

ざわついてる


なにも決められない、ただ周りに決めてもらうのを待っているだけの冒険者は、強くなれない

自分の意思で選択しなくてはこの先もきっと進めない



「ロミちゃんすぐにでも村を出よう」

「待ってください、三日月さん!この村にいる人達を置いて行くんですか?」

「上城部長、考えてる暇は無いですよ。常に命を狙われていると思ってください。ロミちゃん荷物は持ってるよね?部長も判断してください」

「ちょっと待ってください!本当に、本当に、橘さんも三日月さんと同じ意見なんですか???」


上城部長に両肩を掴まれ目をみて真剣な顔されて私は生唾を飲んだ。

でも行くしか無い。

ゲームの世界なら進まなきゃなにも始まらないし生きていけないのだから

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