第3話 異世界生活始まりました




「少しは不安が紛れてくれればと思ってるんだけど、こんな時って何話していいかわからないね」

「そ、そうですね、、、えーっと、あ!あのスーパー、上城部長の近所なんですか???」

「うん、あそこから歩いて10分以内ってとこかな。」

「あ!あそこのスーパーのとなりとなりのお肉屋さんのコロッケ食べたことあります!!?」

「あるよー。僕はあそこのクリームコロッケが好きだよ」

「私もなんです!クリームの部分が本当に濃厚でもう何個でも食べれちゃうんですよぉ(o´罒`o)食べたくなってきたぁ」


私はあのクリームコロッケを思い出して顔が緩んでしまった。

上城部長がクスクス笑って答えた


「やっと笑ったね。良かったよ。ホッとしめしたよ」


たしかにずっと不安だったけど、緊張がほぐれた気がする。


「あ、ソファで寝るよね?一人で大丈夫?いちお、僕は外で寝るけど」


え?あ、そうじゃん、このまま起きてるわけにもいかないか。。。

いつもは家で一人で居るのが当たり前だったし、寝る時はほんのちょっとの明かりでも眩しく感じて寝れなかったけど、

明かりがないって、こんなにも不安になる日がくるなんて思わなかったな

でも、上城部長と話しをしてたらだいぶ落ち着いたかな


「僕のコート使っててくださいね」

「あ、部長!ランプ使ってください!そっち暗いですよね?この部屋の外からの灯りが入って来てるんで、大丈夫です」

「ほんと???大丈夫です?」


私はランプを部長に手渡した。


「じゃー、、、僕は行くね。何かあったらすぐとなりに居るから、おやすみなさい」

「はい、ありがとうございます。ちょっと気持ちが楽になりました。おやすみなさい」





扉の向こうで大きな音を立てないようにカタカタっと椅子を動かす音が聞こえる。

知ってる人が居ると思うと少しだけ不安も紛れる。



でも朝起きたら桜子さん家の布団で目が覚めたらいいな。。。

本当なら二人で遅くまでどーでもいい会話で盛り上がって日頃のストレスを発散させるはずだったのに。。。


そういえば、まだちゃんとこの村?みたいな場所をよく見てないけど、あの広場、中央に不自然な台座??みたいなものがあったけど、上に石像みたいなのが元々あったのかなぁ??

あとはぁ、、、荷馬車みたいな大きいやつ

映画とかでしか見たことないや。

辺鄙な土地では普通なのかなぁ???

まぁ考えても疲れるだけだし、寝ようかな。。。


部長のコートをファサッとかぶりソファに横になった。

窓から入るゆらゆらとほのかな灯りがなんか落ち着く。

ホコリっぽい部屋だけど部長のコートは優しい香りがする。

あーこれがイケメンの香りかぁ。。。

明日もし、またこの部屋で目が覚めたら、散策してみよーっと。。。むにゃむにゃ



私は眠りについた。











--------------









ガタガタ、ガタガタと、


窓の揺れる音で目がさめる。

朝?うっすらと部屋が明るくい気がする。

まだ頭がボーッとする、

ん???あれ?誰かがこちらを覗いてる!?

驚いてソファから飛び起きたその拍子に近くにあった棚にぶつかり、花瓶が落ちた


ガシャーンっ!!!


「ぎゃっ!!!」


花瓶の割れる音で私はやっと声が出た。

大きな音と悲鳴でみんなが私のいた部屋に入ってきた


「どうしたの!?橘さん大丈夫?」


「ま、窓!だ、誰かがのぞいてて!!」


窓に指を指すとそこにはもう誰も居なかった

上城部長が家の外にでて窓の方に回ってきてあたりを見渡す様子が見えた。

同じ家にいた二人が私を落ち着かせようと声をかけてくれる。


「怪しい人はいなかったよ。でももう起きてる人が何人か居たからその中の誰かが散策してたのかもしれないね」

「そ、そうですか。。。ふぅーー」


安堵の溜息

覗いていた人は髪が赤かったような気がする


上城部長が腕時計を見て時間を知らせてくれた

「5:30だね。もう明るくなってきたけど、みんなはどうします?まだもう少し寝ます?外にでてみます???」

「俺たちはちょうど起きたとこだったんで、このまま外に行っても構いません。」


昨日の夜は気がつかなかったけど、ちょっとチャラそうな装いの彼の方が彼女の肩に手をまわしながら答えて、彼女さんもうなずいた。


「み、みなさんが行くならついていきます」


借りていたコートをポンポンっと軽く叩いて上城部長にお返しして、カバンを肩からかけてみんなと外に出た




外にでてまず、太陽の光に当たって思いっきり身体を伸ばした。


「っんーーーーっっっ!!ぷはぁっ気持ちいぃぃぃ!」

朝日を浴びるのってこんなに気持ちよかった。

みんなも私につられて身体をのばしたりストレッチをした。

顔の筋肉もほぐれる。上城部長と目が合いにっこり。

うん。今日も一日頑張れそうだ!




チラホラほかの家から人が出てきている。

みんなとりあえず、広場の方へ何となく向かっている。

私たちも広場へ何となく向かうことにした


「自己紹介まだしてなかったですよね、私はマリカと言います。彼は幸一です。よろしくお願いします」


私も自己紹介しようとした瞬間、

広場の方から大きな爆発音と悲鳴が聞こえた


みんなで走って向かうと、惨状に驚いた。


昨日焚き火を組んだ場所から

炎が空に伸び大きな柱のようになっていた。

その付近には丸焦げになった人らしき何かがいくつかあり、異臭が漂っている



なに、これ!?

どうなってるの?


「人が死んだっ!死んでる!!に、逃げろ!」


人!?やはりあれは人!?

死んだ?死人が出た???


惨状にみんながパニックに陥っている

炎がウネウネと小さくなって一度消えたように見えた瞬間、バンっ!!!と弾けた衝撃で私たちは軽く吹き飛ばされた


直ぐに起き上がり、

もう一度炎の方を見ると、私は言葉を失った。


その炎は、魔物のような形をしていた。

不気味な笑い声、炎の中に顔のような物が見え、たしかにそれは魔物だと私は即座に理解した。


「ば、化け物だ!!!」


誰かがそう叫ぶと悲鳴をあげながら何人かが逃げ出した。

何かを考えている余裕もなく、逃げた人達を追うように無数の火の玉が辺りに飛び散った。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「熱い!たすけてっ」


一瞬で逃げた人たちは真っ黒になった


逃げてはいけない。目を背けてはいけない。

それだけは本能でわかる。


上城部長が私の前にかばうように立ってくれた。

部長の手が震えているっ

この状況、普通なら逃げ出してもおかしくない。


私はスマホを取り出し震える手で魔物の写真を撮った。

恐怖で足がすくむけど私はこの状況にどこかワクワクしていた。


「ここは現実じゃない。異世界に来たってとこかな」

「え?橘さん、わかるの?」

「あんな魔物、現実にいるわけないですし、目覚めた時の状況といい、そう考えるのが妥当ではないかと。」

「橘さん、、、、」

「な、なんで笑ってんだよあんた!人が死んでるってのに!マリカ!逃げよう!」

「え!まって、幸一!」


私の顔を見て光一は青ざめている。

マリカの手を無理やり掴み逃げようとしたけど、マリカはその場に転んでしまった


「待つんだ!幸一くん!狙われるぞ!」


目の前に炎が飛んで来た。


「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」










地面に倒れる幸一の頭の数センチ上に火の玉がチリチリとくすぶっていた。


「こーいちっっっ!」

「た、橘さん!無事!?」


私はとっさに幸一に体当たりをして上に覆いかぶさる形で助けたのである。


「この状況を冷静に判断できない奴は死にますよ。それでも逃げたければ幸一さん、どうぞ。」


私は起き上がりながら服についた砂を落としながら、ビビって動けない幸一に向かって言い放った。


「な、なんか、橘さんキャラ変わってない???」


いや、これが本来の私かもしれない。

異世界物の本やゲームが好きで、実は昨日、桜子さん家で夜通しオンラインゲームをする予定だったのだ。


『ぐははは』


不気味な笑い声のようなものが辺り一面に響き渡ってみんなが魔物に注目した。

頭の中に直接語りかけてくるようか不思議な感覚だ


『私の姿を見て生き残ったのはたったこれだけか。"今回は"この中から、逸材は見つかるのか楽しみだ』


ざわつき出す広場で、魔物が話をする中、私は広場の中央にある台座の上に座る赤い髪の人に気がついた。

髪が顔にかかっていて、表情がはっきりしないけど、笑ってる?


私は台座の上に座る人物が気になり無意識に歩き出していた


「た、橘さんどこにいくの?」


私の腕を掴み心配そうに顔をのぞく上城部長の表情は困惑していた

「あの上に座っている人が気になって」

「あの化け物がまた攻撃してくるかもしれないよ」


私の腕を掴む手の力が一層強くなって、立ち止まった。

その間も絶え間なく逃げ惑う人々を焼き尽くす魔物よりも台座の上にいた人物は気になった私は、

昨日建物の陰にいた人物と

窓から覗いていた人物、

そしてあの台座に座り笑っている人物は同じな気がしてならないんだよね

うまく説明のできるものじゃないけど、感覚?直感?でそう思う。

これは偽物なんかじゃない。

死人が出てるのも事実。

幸一を助けた時、頭のすぐ横をかすめた炎は本物だとわかったからこの狂った状況を少しでも理解しようと私は観察を続けた。




『愚かな人間どもは私の話を聞いてなくていつも自滅するからなぁ、まぁいい本題に入ろうか。』


不気味な笑い声がより一層大きく聞こえた時、台座の上に居た人物が立ち上がった。

周りを見ているようで、キョロキョロとしたあと、私の方を見た。


「へぇ君、もしかして、、、」


何か言いかけてたけど無数の炎が飛び散り私たちのすぐそばで爆ぜた


「きゃっ!」

「マリカっっ!!!大丈夫かっ!」


マリカさんに火の粉がうつり服に広がり、悶え苦しんでいる!!

私たちは急いで消火にあたった

すぐに火は消えたけど、マリカさんの左腕は火傷してしまった。


「うっ、うぅ」

「マリカ!マリカ!大丈夫だからな!大丈夫!」


今は治療の方法がない。

どうしたら、、、


『苦しいだろう!痛いだろう!!ふははははははっははははは』

魔物は苦しむ人間を見て楽しんでいる!

酷すぎる!でも力のない私たちにはどうすることもできない!

マリカさん以外にも怪我をした人が何人かいる


ゲームみたいに魔法が使えればマリカさんの傷を癒せるかもしれないけど、

そんな手段は持ってない


このまま死ぬの???

死にたくない誰か助けて!!!!



『さぁ私からのプレゼントだ!!お前たち愚かな人間達には我々の餌となるべく育ってもらわねばならない』


なに???

ドサドサと空から大量の何かが降ってきた



『異世界からわざわざ時間をかけて呼び寄せた"極上の魔力源" だ』


ここはやっぱり異世界なんだ!


『"極上の魔力源" であるお前たちにはこれからここにある好きな武器を選んでもらう1つずつ選び、そして旅に出ろそれがお前たちの使命だ』


"極上の魔力源" !?使命!?


『ここへ召喚された全員分ある。既に生き絶えた者達の分は好きに使うといい。だが今装備できるのは1つだから、よーく考えて選ぶんだな。ふふふ』


武器を!?選ぶ!?

さっき降ってきたのは武器??



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