第42話 長い長い一日





ザーーーー


フィン「この道もダメですか。はい、迂回ですね、」



ザザーーー


ロミ「あ、雨?ごめん寝てた」


フィン「いえ、僕は構いません。でもお部屋でお休みくださいね」

ロミ「あれ、引き返すの???」

フィン「そうなんです、昨晩の豪雨の影響で地盤が緩んでいて、それにまた雨が降ってきてしまって、視界も悪くて、芳しくありません」


予定のルートから大分外れているらしく、かなり遅れているようだ。

馬達にレインカバーを装着してまた出発した。


ロミ「ってか雨降ってるのに、ここ全然濡れないねぇ」


フィン「はい、御者台も含め、車体は魔法で保護されてますので。」



へぇー便利だなぁ。




ぐぅぅぅーーーー


フィンのお腹が鳴った。


フィン「あ、いや、、」


私は、ジャックさんに教えてもらった薄いパンケーキみたいな甘い生地にハムとマヨネーズを挟さんだお菓子をフィンに差し出した。


ロミ「私も小腹空いてたから一緒に食べよ」

フィン「良いんですか!?あ!"トルル焼き"!これ、良く母上が作ってくれたんです!」

ロミ「トルル焼きって名前なんだねぇ。市場で、売ってたのが美味しかったから私も作ってみたの。」

フィン「それ、たぶん、ばぁちゃんの店です!街でも有名なんですよ!!!」


嬉しそうに話しながらパクパク食べるフィンは14才の少年らしく可愛かった。


フィン「ごちそうさまでした。すみません、夢中になって話しちゃって。。。」


ロミ「いいよー。話したいときはいつでも声かけてー。私はフィンの上司でもなんでも無いんだから、もっと気らくに行こうよ。フィオナを守る者同士、仲良くしよっ」


フィン「あ、ありがとうございます。。」


なでなで、かわいいなぁ


フィン「僕、見た目が大人びているっていつも言われてて、子供扱いされる事無いんです。頭なでられるのってなんかちょっと照れますね。でも、凄く嬉しくなりますねコレ」


ロミ「でっしょー!頭なでなでしてもらえると、凄ーく、嬉しくって、心が暖まるよねぇ(o´罒`o)♡」



コンコン、ガチャ、

御者「失礼します、そろそろ交代致します

フィン「もうそんな時間ですか!?すみません、よろしくお願いします」


部屋の中に入り御者さんと交代した。


時計を見ると4:00だった。


さすがにジャック寝てるよね。。。



コンコン、

フィン「フィオナ様、起きていらっしゃいますか?」

フィオナ「。。。どうぞ」


フィオナの部屋の中から鍵を開ける音がした。


フィン「失礼します」

ガチャ

フィオナ「おはよう」

フィン「おはようございます。フィオナ様。」

フィオナ「時間ね、、、わかりました」

フィン「はい。それでは失礼します」


パタン、、、ガチャ。

そう言って扉を閉めると、また鍵の閉まる音がした。



ロミ「起こしただけ?」


フィン「はい。これから祈りの儀式の時間なんです。儀式中は身につけている全ての装飾品、お召し物を一切まとわず、行われますので、神聖な儀式のため終わるまで、誰も立ち入れません。神と対話できる程の力をお持ちの方は、フィオナ司祭様とキャタルス王国の月の神殿の司教様の2人と言われています。」


"神と対話する力"がどれほどのものかは計り知れないけど、命を狙われる理由はそこにあるようだ。



ザザーーー、外は相変わらずの雨。


フィン「フィオナ様はこの儀式の後、かなりの体力を失われるためいつもそのまま眠りにつきます。普段ですと、職務がある為起こしに行くんですが、キャタルスシティまでは、フィオナ様が起きるまで、そっとしておくようにと、シルバーズ様より申しつかっております。」


ロミ「そっか。フィンはこの後は?」

フィン「僕もこの後仮眠に入る予定です。」

ロミ「見張りしなくて大丈夫??」

フィン「この馬車は何かあると、魔法によって、シールドが発動して外からの侵入は一切出来なくなります。なので、安心して、、、、あ、僕が言っても説得力ないですよね、すみません」


ロミ「大丈夫。わかったよ、ねてもいいってことだね!じゃー、遠慮なく寝させてもらいます。あんまり気を使わなくていいからね、」


フィン「い、いえ、そこは、」

ロミ「笑って?フィオナもフィンが笑ってないときっと安心できないと思うよ」


フィン「。。。」

ロミ「ふふ、まぁまぁ、直ぐには無理かもしれないけど気らくに行こうよ。さて、私も寝ますかねぇ。おやすみフィン」


フィン「おやすみなさい、ロミー様」





パタン。



部屋に入ると二段ベッドの下段にジャックが本を持ち、メガネをかけたまま寝ていた。

。。。ふぅ、寝てる、良かった。ちょっと気まずかったしね。


メガネかけっぱなしだし、、な、なんなの、このステキな寝顔!!!

いつも前髪がセットされて上がってるのに、乱れてる顔にかかってるし、、、、ドキドキ


わー写真撮ってもいいかな?マジ絵になるわぁ!ニヤニヤ


メガネをそっと外して、胸の上にある本をそーーーーっと取り、テーブルに置いてタオルケットをかけてあげた。





はっ!!視線を感じる!?

上を見るとバニラがニヤニヤしながらハンモックから顔を出していた。


げ!?


バニラ「(ニヤ)お前の方から寝込みを襲う気かぁ?」


ロミ「ば!違う!(小声)」


ジャック「、、、襲われるかと思って、ドキドキしちゃったよー(棒読み)」


ロミ「ち、ちがっ!!?お、起きてたっ!?もう!おやすみなさい!」


私は急いで上段に登って布団に潜った


バニラ「お前、結構大胆なんだなぁ」


ロミ「!!!そんなんじゃないもんっ!!!もう!(赤面)」


バニラ「ぎゃはははは」


ジャック「あはは、ごめんごめん、ロミーさん、本当にごめん」


ロミ「お や す み な さ い!!!!」


私は、カバンの中に入っていたイヤホンを取り出し、スマフォに繋いで音楽をかけて2人の会話が聞こえないように爆音にした。


ジャカジャカジャカジャカ♪


壁側を向いて丸まっていると、後ろから誰かに頭をなでられて驚いて布団から顔を出し振り返るとジャックがいた。


音楽で声が聞こえなかったけど、


困り顔で、口元が『ごめんね』と言っているように見えた。


それでも私の気持ちはおさまらず、また布団を頭までかぶった。








ね、眠れない。。。

完全に眠れない。。。

あ、さっき買った本、

"キャタルス王国の魔法大全集"で、ゲート魔法の勉強しようかな


物を転送する魔法は箱から予め決められた箱へ物を移動させる魔法で、術式を組み込んだ状態なのかー。、


ページをパラパラとめくり目的の魔法のページを探す。


『アイテムを複製する魔法』

お!何だ何だー!買わなくても良いのかな?


"複製したい対象を(長文の為以下略)する事によって、複製出来る"


うわーこれ、本当に子供向けの本なの???明らかに無理があるでしょーはは

まぁ試しに手順通りに、この本を複製する事にした。


本人は手を当て、意識を集中させた。

あ、でもどうせなら、日本語で複製できたら、皆んなにも見せてあげられるなぁ


スーッと手を横にスライドさせると、光が移動して、同じ本が複製された。


おぉ!成功???

中をパラパラ読むとおぉ!!ちゃんと日本語になってる!

さっき、日本語で、って考えちゃったからかな?

まぁいいか、とりあえず、複製した本を収納した。


パラパラ、パラリ、

わ、何これ"視力向上魔法"って何?笑


『悪くなった視力をある程度回復することができる』


あはは、便利ー!レーシックみたいなもんかぁ

メガネが必要無くなるねー

そういえば、私、こっちの世界きてからメガネはめてないやー

アイマスクしてるし、天眼の効果で普通に見えてるんだよねぇ



パラパラ、

真面目な魔法もちゃんと載ってるんだー

でも攻撃魔法については、名前だけ載ってて術式をの展開方法など、細かいことは載っていない。

子供向け。と言っていただけある。

でも、魔法の名前が一覧になっていてちょっとこれはこれで、便利。


炎系、水系、風、、、、光、闇、精神魔法、時間魔法、、、


あ、これ、鉱山で桜子さんが使ってくれた精神回復魔法も載ってる。


こうやってみるとキングの世界と似てるなぁ。。。


パラパラパラパラ、

あった、ゲート魔法。


、、、、、ふむふむふむ、行きたい場所を頭に強く思い浮かべて、慣れてきたら街の名前を声に出すだけで、ゲートを開くことが出来る。かぁ、、、



ワープ魔法って、基本的にはポータル使って移動してたし、道中の敵を倒しながら経験値稼ぎたかったから、殆ど使わなかったんだよねぇ


ふと、キングでの出来事を思い出した。





ーキング(ゲーム内)ー




Rommie(ロミーのプレイヤーネーム)「あっちゃー、回復アイテム忘れちゃったー」


月光桜「え?このエリア魔法による回復が制限されてるからアイテム必須なのになにやってるの!」


アンジェラ「私の分けてあげる」


アンジェラは私達ギルドの仲間で、今回だけ、一緒にクエストに行く事になっている。


ロミ「おっかしーなー、入れておいたのに、バックが空っぽになってるんだよなぁ???バグかなぁ???」


月光桜「どうする?一度ひき返す?」


アンジェラ「ゲート開こうか?」


月光桜「あーでも、このクエスト1日一回しかこれないクエストだし、今引き返すとリタイアになっちゃうから、進めるとこまで進まない?最悪、薬草が自生してるエリアだし、調合すれば無いよりはマシじゃないかしら?」


ロミ「うーん、なんでBOXが空になってるんだろー。ごめんねー、とりあえず、無理しない程度に進むよー」



私達は今回のクエストの限定エリアに足を進めた。


このエリア全体が回復魔法を無効化してしまう特殊なエリアな為、回復アイテムが必須エリアなのに、何故かアイテムBOXが空と言う、謎のバグに見舞われた。私。

ついてない。。。


月光桜「ねぇ、ワルチャ見て!ロミちゃんと同じ人がいっぱい居るって!」


ワールドチャットに続々と現在ログインしているユーザー達のコメントが寄せられている。


『アイテムBOXがいきなり空になった!』

『俺も!限定エリアにいるのに!!!救助求む!!!』

『再起動したけど、なおらなかったーなんのバグ???』

『みんなバグバグしてるねー』

『優しい天使様が回復アイテムくれた!ありがとぉぉぉお!って思ったら男だったぁぁぁぁぁあ!!』


などなど、


一部のユーザーが騒いでいた。


アンジェラ「これー、緊急メンテ入りそうじゃ無い?」


月光桜「げ!折角ここまで、来たのに、セーブしないと、緊急メンテ入ったら、ゲットしたアイテム無しになっちゃうじゃーん!!!」



Rommie「わ、噂をすれば緊急告知キターー\(^o^)/」

アンジェラ「オワター\(^o^)/」

月光桜「\(^o^)/」


アンジェラ「今日のところは大人しく帰ってセーブしよっかー涙」

月光桜「悔しいけど、仕方ない!」

Rommie「あちゃー、また今度遊ぼうねー」


アンジェラがゲートを開き、みんながくぐった瞬間に緊急メンテに入り、セーブが出来なかった。。。



はいくそー!( ´ ཫ ` )チーン



セーブ出来なかったショックにより次の日仕事でテンションずっと低かったのは言うまでも無い。。。


そして、キングにログインしたら、お詫びのアイテムやら、1日一回しか行けない限定エリアへは今日から一週間は1日に二回挑戦できるようになっていた。





ー現在ー



ゲート使う時って、いつも、緊急メンテの時だけだったなぁ。

アンジェラってそう言えば、最近見なくなったなぁ元気にしてるのかなぁ。。。


気づけば雨も止んでいて、天窓から、朝の日差しが差し込んで眩しくてカバーをしめ、私は本を閉じ、眠りについた。






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