第43話 立往生






激しく雨が窓に打ち付ける音で目が覚めた


出発して2日目の朝、時刻は9時


バニラが私のお腹の上に座っている。


ロミ「おはよーふぁぁぁあ(なでなで)また降ってきたんだねぇ」


バニラ「おう、起きたか。今馬車止まってるぞ。」


外を見ると、かなりの雨で地面が泥濘んでいるのがわかる

ベットから降りて共有スペースに行くと、ジャックの姿は無かった。

御者台を覗いても誰もいない。。。

御者台の小窓から前方の馬車の方で神官達が集まっているのが見えた。

外を見ているとジャックとフィンが帰ってきた


ガチャ、ザザザーーー


フィン「ジャック様ありがとうございました」

ジャック「いや、いいよ、困った時はお互い様だからね」


ビショビショの2人だ。


ロミ「おかえり」


フィン「あ、おはようございます。ロミー様、すみませんこんな格好で」


2人はタオルを取り出して頭を拭いている。

クラウドさんが使ってくれた風魔法!!

あれを使えば、2人を乾かしてあげられる!!!

私は魔法を使用した。


バサバサバサ、ヒューーーン。


ジャック「あ、これ、あの時の?ありがとう、乾いたよ」

フィン「ありがとうございます!!」


外では馬達が泥濘に足を取られ、かなり疲労しているようで、進めなくなっているんだとか。

雨を止ませる魔法なんて知らないし、あったとしても、泥濘んだ道までどうにもならないし、、、


今、神官達が馬達の治療しているんだとか、ちょっと様子見に行こうかな?


ジャック「外出るの?濡れるよ!!」


あぁ、そうか、傘、、、

確か昨日読んだ、"魔法大全集"!

たしかあれに子供だましなページに、、、


ペラペラペラ、

ロミ「あった!『雨から身を守る魔法』これこれー!"umbrella +"」


フィン「あれ?雨音が聞こえなくなりましたね」


ガチャ、

私達は外に出て、確認した


ロミ「おぉ、成功してる!上見てー!透明な大きな傘みたいなのが雨を避けてくれてる!!!」


フィン「わ!4台分の馬車全てを覆ってる!?ロミー様は本当に凄いお方です。。。」


ジャック「その本、読み終わったら私にも見せてもらえないかい???」


ロミ「いいですよー」


馬車をおり、先頭の馬車へ向かう。


神官「これは、一体、、、あなた方の魔法ですか?」


ロミ「はーい。私がやりました」


神官達が驚いている


ついでに、神官達の服を乾かしてあげた。

杖を神官達に向けると、風が吹き抜け、あっという間に雨でびしょ濡れの服は乾いた。


さらに神官達は驚いていた。






しばらくこのまま進むのか、引き返すのか、話し合いが行われたけど、話はまとまらぬまま、時間だけが過ぎていた。



ロミ「進むか進まないかは、私達では判断できませんもんね、馬車の中で待ちませんか」

ジャック「そうだね、戻ろうか」


馬車に戻りスマフォを何気なくみた。


ってか、スマフォ取り出すのって癖だよね。。。

スキマ時間についスマフォを見ちゃうんだよなー


誰だろう、メッセージが届いてる

あ、上城さんから届いてたんだ!

『おはよう。昨日は浜辺の洞窟にまたみんなで行ったよ。今日は雨が降ってて、そっちはどんな感じ?』


上城さんからのメッセに私はすぐに返事を打った。


『おはようございまーす!おとといの雨の影響で何度かコース変更してて、今も立ち往生してますよぉ。とても退屈、、、なんてしてないです笑』


送信っと。


ゲートの練習でもしようかなぁ


寝室のベッドの上に読みっぱなしになっていた本を取りに入り、その本をジャックに見せた。


ロミ「ジャックさん、このページの魔法をなんとかして使えないかなぁと思ってるんですけど、」

ジャック「どれどれ、、、うんうん、"ゲート"魔法か。」


ジャックがゲート魔法のページを熟読している間にフィンが飲み物を入れてくれた。


フィン「朝食もまだでしたので、ばぁちゃん直伝のトルル焼き使ってみました!」


ロミ「やった!いただきまーす」






ー10分後ー


ジャック「うん、キングと同じで転送魔法の応用だね。この魔法があれば、ポータルが必要なくなるし、とても便利になるね」


ロミ「ゲート魔法は一応持ってるんです、が攻撃や支援魔法以外の、この手のサブ魔法は苦手でして。。。」


ジャック「ロミーさんに苦手な分野があるんだね。ちょっと安心したよ。確かにキングのゲート魔法は、最初人は通れないからね。」


そう、キングで使われていたゲート魔法は、一筋縄では行かないように沢山の試練が用意されていたから、"メンドーな魔法"として有名で、最初からすぐに使えなくて、最初は転送魔法と同じで小さなものしか通れないくらい小さいゲートしか開かなくて、修行と呼ばれる、追加のクエストでゲートの大きさを拡張して行くという、地味にメンドーな魔法だった。


パーティの1人が持っていれば、一緒にゲートくぐれたし、個人的には道中のモンスターを倒すのが好きだったから必要なかったとも言える。


それに、ゲート魔法で人が通過出来るように実装されたのは、メインストーリー最終章が配信された後の為、ほぼ全てのポータルは解放済みだったので!あまり私には魅力に思えなかったのだ。


ジャック「拡張方法がわかれば良いんだけど、ね、」


ジャックが試しに部屋の中でゲートを出してみた。

ピンク色の光の輪が空中に現れ、その中にどこか違う場所が見える。


ロミ「これって、お屋敷の食堂ですか?」

ジャック「そうだよ。僕が出せるサイズはこれくらいだね。」



ウインドウを開いてジャックのゲートの詳細を確認した。


"GATE Lv5"


私のはレベルいくつだったかな?


ロミ「私もゲート出してみますね!うーん、うーん、」



ポンッ


フィン「おぉ、お二人とも凄すぎて頭痛くなってきました」


"GATE Lv6"


ジャックさんとレベル的には1つしか変わらないけど、ゲートの大きさが明らかに違う。

フィオナが起きてきた。


フィオナ「おはようございます、それは、GATEですね」


見ただけで一瞬で分かるなんて流石、最高司祭様。


ジャック「人が通れるほどの大きさまでなんとかできないかと思って、話してたんです」


フィオナ「ロミー様のゲートはもう通れそうですね???」


え???


フィン「頭から立ったままゲートをおろすんですね!フィオナ様!」


おぉ!その手があった!!

それだと、1人づつしか通れないけどまぁ試す価値はあるかな?



フィン「あ、ジルバーズ様??今、ジルバーズ様が見えました!」


フィンがゲートの向こう側にリオンが見えたと言い、私達はゲートの角度を変えて向こう側を覗いてみた。


ロミ「どっちのゲートに見えたの?」


フィン「ロミー様のエントランス付近が見えている場所です」


エントランス付近を見てもいてない。


リオン『おや?このピンク色の物体はなんだい?』


リオンの声!?

ジャックさんのゲートから聞こえる???


50cm程の大きさのゲートにリオンが顔を覗かせているのが見えた


リオン『おぉ!これはっ!フィオナ、ロミー、元気かい?』


女性にしか声をかけない所が、リオンらしいっちゃ、リオンらしい。


ロミ「あ、試しにリオンをこっちに転送してみたらどうかな???」


フィオナ「まぁそれは良い考えですわ!実験しましょう!!」


リオン『ん?実験?なんの話だい?』


ロミ「リオン、その場に立って動かないで、後、手無くなるよ」


リオン『なっ、え???』


私はGATEをリオンの頭から床まで一気に下ろした。


恐る恐る目を開けると、そこにはリオンが居た


リオン『なっ、ココは!?馬車の中でわないかっ』


ロミ「リオン!ちょーっとごめんねー体触るよー痛いところとか無い?無くなった部分とか無い???」


リオン『おいおい、そんな積極的にならなくても私はいつでも君を受け入れ準備はできているよ。さぁおいで』


両手を広げ待っているリオンを無視して私はジャックと話した。


ロミ「成功ですね!」

ジャック「うん!成功だよ!!おめでとう!」


ハイタッチ!


リオン『この私を無視するとは』


フィン「し、シルバーズ様!!」


ガタン!!と音がしてフィンを見るとその場に跪いて少し震えていた。


フィン「も、申し訳ありませんでした!!!」


昨日の事を謝罪している。

これは、邪魔しないほうがいいよね。

3人には何かあるみたいだし、

私とジャックは寝室に入り、話し合いが終わるのを待った。


ハンモックからバニラがピョンと私の肩に降りて、あくびをした後、顔をスリスリしながら言った


バニラ「ふぁぁぁ、なんで、そんなめんどくせぇ事するかねぇぇっっっ!」


テーブルの上に飛び降りて体を伸ばしている


ロミ「何が?」


バニラ「お前の天眼は飾りか?魔法の本、出してみろ。」



言われた通りテーブルに本を置くとバニラがにくきゅうをと爪で器用に本をめくり、あるページでポン!と手を置いた


バニラ「"世界中どこでも見える魔法"ってこの子供騙しの本にも書いてあんだろ、お前のはその気になればなんでも見える眼だぞ。」


ロミ「天眼の事?」


バニラ「壁の向こうだって見えるんだ、風呂なんて覗き放題だぞ」


ロミ「いや、それは興味ないから。これで、どう世界が見えるの?」


バニラが地図を取り出した


バニラ「手始めに、ポータルを探してみろ」



そんなこと言われてもなぁ。。。

ポータルってどうやって探せばいいのかなぁ


五分ほど地図とにらめっこしてもやはり、よくわからなくて私は、ベッドに寝転んだ


ロミ「わーダメだー、ポータルと言われてもなぁ」


ジャック「そんな無理しなくても、また体に障るよ。ゆっくりでいいよ」


ロミ「はい、ちょっと休憩します」






ー共有スペースでの会話ー


フィン「あの時、僕が脅されている事をちゃんとシルバーズ様に報告していたらっ」


リオン「もうよい、私もフィオナもそなたを責めるつもりはない」


フィオナ「あなたは私達にとっても大切な存在です。もう自分を責めなくてもよいのです」


リオン「いいか、フィン」


リオンから笑顔が消え真剣な眼差しへと変わりフィンが生唾を飲む。


リオン「俺たちにはやるべき事がある、こんな事くらいで俺たちの夢は潰れない。潰されてたまるか。俺とフィオナの為にその命を捧げたはずだ」


フィン「は、はい」


フィオナ「わたくし達は巨大な渦にもう足を入れてしまっているの、戻れないわ。だからあなたにはわたくしたちの元でこれまで通り、橋渡しを続けてもらいたいの」


フィン「ありがたきお言葉、、、この命枯れるまでお二人に仕えさせていただきます」


リオンに笑みが戻る


リオン「よい、この話は終わりにしよう。それよりフィオナ今日も美しいよ、もっと近くでその顔を見せておくれ」


フィオナ「い、いけませんっ!!ぅん!!!」


フィンはすぐさま2人に背を向けた。



リオン「いずれ、この国はフィオナの力を奪い合って戦争になる。それまでに、私は出来るだけ多くの力を手に入れなくてはならない。ロミー達の様な有能な人材を騎士団に取られてはならない。」


フィオナ「新たな親衛隊としての手続きをしましたが、あまり良い返答ではありませんでした。ですが私は諦めません」


リオン「我々にはやるべき事がある」


フィオナ「必ずや成し遂げてみせます」


フィン「この命、燃え尽きるその時までまでお二人共に。。。」









コンコン、

リオン「ロミー、ジャック殿、いいかな」


ガチャ、

リオン「すまない、ゆっくりしていきたいのだが、まだ仕事が残っている、そろそろ屋敷へ戻りたいのだが」


あ、そうじゃん、呼び寄せといて、放置してたらダメだよね。

ベッドから飛び降りて

私はすぐにGATEを出そうと杖を持った


リオン「私がココに来たことは秘密にしておいてくれ、また部下が騒ぎ出すといけないからね」


GATEを呼び出し転送の準備をすると、リオンが私に近づいて顎くいされた


ロミ「ん!ちょっと!」


頰にチュッと軽く唇の感触があった


リオン「ありがとうロミー。また向こうで会おう」


ロミ「もう!やめてよ!」





クスクス笑うリオンを屋敷に送り返した。






フィン「うーん、このままでは、雨が止むまではここで足止め、という事になりそうですね」


ロミ「た、退屈で息がつまりそう。。。」


ジャック「体が固まりそうだねぇ」





私達はこのまま雨は降り続け、二日間その場にとどまった。






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