第10話 二日ぶりの食事は最高です




たいまつを片手に男が駆け寄ってきた。


「兄ちゃん達で最後だな?」

「あ、はい」

「みんなもう先に始めてるよ。俺ははこのキャラバンの団長のキースだ」

「え、」

「まぁ、兄ちゃん達も温かい食事を用意してあるから遠慮しないで食べてくれ」



キースさんに言われ、半信半疑?だけど、とにかくお腹が空いたからついていく


ガヤガヤ、ガチャガチャ、大人数が食事をする音と賑やかな笑い声が聞こえた


「わぁ凄い賑やかだよロミーさん」

「ほんと?」

「あ!上城君!ロミちゃん!こっちこっちー!」


桜子さんの声の方に行くと二人分の席が空いていて私は上城さんの誘導で座った


「遅かったわねー二人ともぉ先に頂いてまーす!」


あれ、桜子さん酔ってる!?

お酒の匂い!


コトン、と目の前に何かが置かれた音がして、いい香りがした

「ロミーさん、スープだよ」

「ほんと!?」


「俺が、料理を準備させといたんだぞ」

「バニラ!?」

「そのマスク外してみろ、日が暮れたからたぶん、見えると思うぞ」


私は目に当てられたネックウォーマーをズラして恐る恐る目を開けてみた


テーブルの上に並ぶ、

カゴいっぱいのフルーツに、大きな骨つき肉!!美味しそう!どれも美味しそうな料理が並んでいて、キャラバンの人達に混じって冒険者達がちらほらいた。

みんな、すでに出来上がっていた


目の前のスープはとてもいい香り!ほぼ2日ぶりの食事!!


「さぁ、遅れてきた兄ちゃん達も遠慮なく食べな。」

「「はい!いただきます!!!!!」」


もぐもぐぱくぱく、しばらく私達は無言で食べた


「おいロミー俺にも何かくれ」

「このチーズのかかったやつ!グラタンみたい!これ美味しいよ!!!バニラこれ食べてみる?」


小皿に移してベンチの上に置いてあげた。


はむはむはむ!

美味しそうに食べるバニラの姿が愛おしい。









「ぷはぁーだいぶ落ち着いたー(o´罒`o)♡美味しい!!!ありがとうございました!!!」



お腹いっぱいになった私は辺りを見渡してみた。

昼間は太陽が眩しすぎて目が開けられなかったけど、夜はランプの優しい灯りだけなら何とか開けていられる。

ちょっと安心した。


バニラの姿もちゃんと確認すると、


「本当に猫なんだね、バニラって」

「はむはむっ!んぁ?はむはむ!あたりまえだ!はむはむはむ」

「よーしよし。たーんとお食べ♡」


必死にご飯を食べるバニラを頭から尻尾の付け根まで往復で撫でる。


「先に来てた人達は疲れて寝ちゃったみたいですね」

「あぁ、みんなここまで本当に大変だったしね」

「上城さん飲まないんですか?」

「うん、あまり強くないから。ロミーさんは?」

「私もあまり飲めないんです」



ガシャン!

「ロミちゃん!クエスト行くわよ!」


「わっ、びっくりしたぁ寝言でまで、ゲームしてるよ桜子さん」

「だね」

「「ははは」」




「どうだい、満足したかい?」

「キースさん、ありがとうございました!」

「ちょうど、ここで、今夜はキャンプする事になってよかったよ。上で、あのキメラを倒したんだって?大変だったろう」

「えぇ、まぁ。。。」

「よく、そんな装備で生き残れたな?うちのキャラバンの商品で整えていくか?駆け出しの冒険者には安くしておくぜ!」


この人達は色々な町や村を回っている行商の一行だ。

詳しく話を聞くチャンスだ。



この世界に飛ばされてきた経緯をキースさんに話すと、初めは驚いてた様子だったけど、すぐに、理解してくれて色々教えてくれた。



まず、この世界の通貨は『GOLD』薬草一つで20G、ポーションは200G、ハイポーションは2000G。


武器はキースさんの目利きによると、上城さんの持つ銃は250〜500Gくらいの駆け出しの冒険者が良く持っている初心者向けのものらしい。

私の杖は。。。


「姉ちゃん!あんた本当に駆け出し冒険者なのかい?こんな凄い代物初めてみたよ。俺らみたいな行商人じゃランクが高すぎて出回らないよ。恐らく50万G以上するぞ。こんなレアアイテム普通は売り買いするものではないからな。」


「!?50万って大金だよね???。。これ、手に取った瞬間に光り出して、この形になったんです」

「ほぉ、信じられないが、恐らく"覚醒"だなそれ。詳しくは、専門家じゃないとわからないが、"ごく稀に、限界を突破した者が持つとさらに強い武器へと生まれ変わる。"って話は聞いたことがあるからな」


やっぱり、覚醒だったんだ、この杖。


「モンスターを倒して手に入れたアイテムってどこに収納されるんですか???」

「それぞれの武器や防御などの装備品には武器ランクに応じて収納領域があるんだ。でも普通のアイテムBOXと違い、収納量に限りがある。戦闘用アイテムを主に収納しておくのさ。

だから、収納アイテムを別で身につけるんだ。よっと、これだよ」


ごとん。机に置かれたアイテムは、指輪やネックレス、イヤリングなどの装飾アイテムだった。


「魔石はドロップしたかい?」

「はい!メチャクチャたくさんゲットしました」

「通常、宝石と呼ばれる石と魔石を鍛冶屋に依頼して作ってもらうんだ、魔石の純度の高いものほど、高ランクアイテムが作れる。そうしたアイテムの一部が、このアクセサリー。これを身につければ、武器も収納できて、使いたいときにだせる。便利な代物だ」


「キースさん、クリスタルをドロップしたんですが、これは何に使うんです!?」


キースの顔が一瞬固まった


「な、兄ちゃん達、クリスタルなんてもってるのか!?高クラスのボスモンスターが守っているって噂で中々出回らないんだ!良かったら売ってくれないか!!!」


「これが、そんなに珍しいんですか。。いいですよ。私が手に入れたクリスタルは30個くらいあります」

「いや、待て待て、待ってくれ!!そんなにあるのか!?俺のキャラバンではそんなに買取れない!金が足りないんだ!」

「え?そうなの???」

「ならキースさん、クリスタル一個の相場は?」


上城さんが代わりに交渉を始めた


「僕たちはこれから本格的に旅に出なくてはいけなりません、装備などしっかり揃えたいんです」


真剣な眼差しに団長のキースさんが立ち上がった


「兄ちゃん達、クリスタルをそんなに持っていることを言いふらさないほうがいい。狙われるぞ」

「、、、えぇ、わかりました。肝に命じておきます」

「、、、その時によって変動はあるが最低でも20万G〜50万Gはくだらない」


「ねーねー、キースさん、ヒクッ、この美味しいお酒一杯いくらなの?」

「さ、桜子さん起きたの!?」


寝ていた桜子さんが突然割って入ってきた


「酒場で大体、一杯450Gだな。この食事は、パーティ並の量だからそうだな、店で出すとしたら一人、3000〜4000Gってところだな」

「普通呑み会でそれくらいしますしね。だいたい、私たちのいた世界と同じくらいなのかなぁ」


ってことはクリスタル一個でお給料数ヶ月分!?


「一つ買い取ってもらえませんか?それで、装備を僕たちに売ってください。」

「あぁ!いいだろう!今日はくらいから明日、朝いろいろ見せてやる。冒険者なら、こういう、キャンプになった時の寝袋なんかも必要だぞ。とりあえず、今日はこの寝袋とテントを使えアイテムBOXに一度収納してから取り出せば、テントは組み立てた状態で出し入れできる。やってみな。」


「私もやるわ!」


桜子さんはイヤリングタイプの物を装備した

上城さんは指輪タイプのアイテムを紐に通し首からかていたのを見て私も同じように真似をして装備した。


アイテムを装備後に、テントを見てみると、テントの目の前に『大型テント』と言うかカーソルが現れた。


カーソルを選択すると『手に入れる』『なにもしない』のさらに二つの項目が表示されており、『手に入れる』を選択するとアイテムの中へ吸い込まれていった。

同じように寝袋も収納する



「おぉーリアルだぁ」


そして、少し離れた場所に移動をし今度は『テントを使用する』を選ぶと、立派なテントが目の前に現れた。


桜子さんと上城さんも同じようにテントを取り出した。


「あれ?ロミーさんは大きなテントだね。僕のは二人から3人用かな?」

「えぇぇぇぇ!私のは一人用テントだよぉ!やだーーーさみしいよぉ!ロミーちゃん一緒に寝よーよー!笑」

「ってもう先にテント入ってるし!」

「はは」

「上城さんも、このテント使ってください」

「え??い、いいの?同じテントで」

「はい。その方が安心じゃないですか。どうせもう疲れて直ぐに寝ちゃうだろうし、気にしないでください」

「ありがとう、ちょっと一人で寝るの心細かったんだよね」


「おう、どうだ?テントは気に入ったか?いちお、うちのキャラバンで扱ってるのは今はこの種類しかないが、町に戻ればうちの店と倉庫があるから他のもあるんだが、これで我慢してくれ」

「全然平気です!これで十分ですよ!」

「明日の朝起こしにくるからゆっくり休め」

「「ありがとうございます」」









テントへ入り、爆睡する桜子さんをそっとテントの奥へ押し込み、寝袋を取り出す。


こんな立派なテントで寝られるなんて、ラッキーだー


「一つテント用のランプ、欲しいですね」

「そうだね、テントの中暗いからね」


キャラバンの灯りが一つ、また一つと消えていく。みんな眠る時間かな


ほかのテントに灯りがともり出す。


無数のテントが暗闇の中にポツン、ポツンと現れる

私は膝を抱えて座って丸くなった。



「なんか、いいな。ランプの灯りって落ち着きますねぇ」

「うん。そうだね。電気が無い生活って考えられなかったけど、ランプの灯り一つでこんなにしみじみするなんて思わなかったよ」


ほかのテントからの話し声が漏れてくる。


「こっちの世界にも人が居ましたね」

「うん。僕たちと特に変わらないようで安心した」



会話の感覚も徐々に開いていく。



「ロミーさん、まだおきてる?」

「はい、おきてますよー」



「ご、ごめん、手を繋いでもいいかな」


!?


上城さんの方をみると暗くて表情が見えなかったけど、突然、天眼のスキルが役立った!

今にも泣きそうな顔???


私はびっくりしたけど、上城さんの方へ手を伸ばした。

パシッと力強く私の手を握りしめて胸の方へグッと引き寄せられた



、、、あぁ、そっか、そうだよね。。。。怖い、よね。。。。


小刻みに震えているのがわかった。


今日1日の事を思い出しすと、私も恐怖から、また心臓がばくばくしちゃう。。。。

私も怖かった。桜子さんと上城さんの存在があったから乗り越えられた。


私の左手をしっかりと両手で握りしめたまま、安心したのか上城さんの寝息が聞こえた







テントのてっぺんを見つめ私はボーーーーットとしながら、桜子さんと上城さんのステータスを確認した。

結構レベル上がったなぁ

うん。、これなら大丈夫かな。


でもこの先、どうなるのだろう。。。




頭の上にバニラがいることに気がついた。

私のおデコに鼻先をつけ、


「安心して眠れ」












意識がすーーーーっと落ちた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る