第7話 キメラはライオンに羽が生えた姿してました



------回想(6ヶ月前)------




今朝は電車一本乗り遅れてぎゅうぎゅうの満員電車に乗った。

朽田係長に昨日、理不尽なことを言われ、ショックで夜眠れなくて、遅くまで"キング"を、やってたから寝坊して電車に乗り遅れたのもあるけど。。。


会社に着き、部署に入るとザワザワしている

みんなが、ヒソヒソと話しているのが聞こえてくる


「これ、係長の事だよね?」

「やっぱそうだよね?みんな噂してるよ」

「これ書いたのって誰だよ」

「大ごとにして巻き込まないでくれー」


??何??


自分の席に着くと一枚の紙がおかれていた。

他のみんなの席にも一枚づつ同じ紙が置いてありそれをみてザワザワしてるようだけど。。。


「おはよーロミちゃーん。これ見て!みんな噂してる」

「桜子さんおはようございますー。なになにー、、、」



『とある部署の女性上司の理不尽な要求、不適切な言葉の暴力により、心を害され、出社する事ができなくなりました。これ以上被害者が増えないよう、その女性上司の退任を要求します。パワハラは犯罪です。パワハラ女上司は人の上に立つ資格はない。。。(以下略)』


「うっわ、怖っ」

「だよねぇ怖いよねぇ」


ここに書かれてる女性上司って朽田係長の事なの?

昨日初めてキツイこと言われたけど、、、



「おい、きたぞ!!」



ザワザワしていた部屋の空気が一瞬で凍り付くのがわかった


上城部長と朽田係長が一緒に入ってきて、

部長が話し始めた


「もうみんな知ってると思うけど、机におかれていた、用紙に書かれていることは、現在調査中です!他の部署にも同じものが配布されていて、どこの部署を指しているのかわからないので、イタズラの可能性もあるので、憶測で名前を出したりしないようにお願いします!用紙は回収して破棄するので」


周りはザワつきながらも、用紙を隣の席に回していく。

回収し終わると、

「じゃ、仕事を始めてください」

用紙を持って部長達はどこかへ行った








-----現在-----






「モンスターが目を覚ましたぞ!離れろ!!!」


冒険者達は一斉に距離を取る



なんで、急にあんな事思い出したのだろう。。。

私がまだ係長からのパワハラを受ける前の記憶だ。



私は魔法陣を何重にも重ねて、祭壇の中央に向け攻撃を放地続けていた




キメラ 残りHP 15000

首枷 残りHP 2800

足枷 残り HP 900

祭壇 残り HP 3500



私が攻撃を加えた祭壇以外は、あまりHPは減っていなか。。。

私と同じくらいのレベルの冒険者はいないのかな、


「ロミちゃん!前衛の冒険者達だけにでも魔力援護貰えないかな!この数だとシールド貼るのに精一杯で」

「そうか!その手があったね!了解!」


魔法のリストっと、魔力付与系の魔法は確かリストをカスタムした時に支援系魔法はこの列の5番目にしたっけ?




"capacity Improvement"



この範囲魔法は私のいる場所を中心に魔法陣の中にいる味方の攻撃力、防御力などの様々なステータスを一時的にアップさせるボスの時にとても重宝する魔法である。


この魔法が使えるのは、支援魔法をある程度極めたものにしか習得できないので、レベルで言うとLv90くらいの時に、ある条件をクリアしていれば行ける専用クエストやイベントをいくつかクリアしないと習得できない魔法だった気がする。

桜子さんも以前は覚えてたけど、セカンドアカウントで、プレイし直していたので今は使えない。

もちろん、効果の低い魔法ならもっと序盤に覚えることも可能だ。


上城さんは桜子さんの魔力アップ支援が付与された状態のため、私の支援により+Lv30くらいの効果が見込める。


これで、トドメを上城さんに撃たせレベルアップしてもらおうと言う魂胆です




ガシャン!

足枷が破壊された!


キメラは動きが俊敏になり、冒険者達に襲いかかる


私もすかさず回復魔法を使った!


広域範囲の冒険者に癒しの雨を降らせ傷を癒す


''healing rain"




キメラ 残りHP 13000

首枷 残りHP 1500

祭壇 残り HP 550



キメラが冒険者達を手にかける


「近づき過ぎよ!下がって!これじゃ回復が間に合わないわ!」


冒険者達が焦り出し、何人かが無理にキメラに突っ込んでは、返り討ちにあっている!!!


「ばかっ!回復の意味がないじゃんか!何やってんの!」

さすがに私も焦り始めていた

このままでは、犠牲者が増えてしまう!


無謀な冒険者をいちいち守っている余裕はない!!!



残り10分を切ったその時、大きな地震が起き祭壇一部が崩れ始めた



ゴゴゴゴゴゴオォォォォォォォ



人々の悲鳴と地面が崩れる音、揺れていてその場にとどまるので精一杯だった





崩れた祭壇の中央あたりに大きなクリスタルが現れた!!


クリスタルからは禍々しい魔力が溢れ出していて、そこに繋がれた鎖からキメラに流れているのが目視できるほどになっていた


本体のお出ましと言ったところだろうか、

強力な魔力を放っていて近付こうとした冒険者は吹き飛ばされている!!



祭壇の中央にいた数人を残し、大地は地滑りを起こし祭壇だけが辛うじて残っている状態で、祭壇の外側にいたもの達は崖崩れに巻き込まれていた



かなりの数の冒険者が減ったんじゃないかな。。。

私がもっと早く気がついていれば!!



「無理に戦闘する必要ないから!下がってください!回復しますから!」

「そんなこと言って!報酬を独り占めするつもりだろ!」


桜子さんが下がるように促すと、ある冒険者が、食ってかかってきた


「報酬のことより命の方が大事でしょ!?」

「うるせぇ!俺がこいつを倒して報酬と経験値をもらうんだ!!!」


そう言い残しキメラに一人突っ込んでいった男は、呆気なくキメラに踏み潰された



「あ"ぁぁぁあ!!!」


グチャッという音とともに血があたりに飛び散る私の足に男の血がかかった


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」


誰かの叫び声が響き渡る中、キメラの足元で私は、満身創痍だ


心が追いつけない。短時間で何人死んだ???

死ぬ瞬間を何回見た???




我先に我先にと報酬目当てで、死に急ぎたいやつばっかり!!

動けなくなった人達から所持品を奪う者

他人を盾にしてまで生き残ろうとする者


どれも、ゲームの中では普通にできることかもしれない、でもこれは現実、血もでるし、痛みだってある!!!



みんなイかれてる!めちゃくちゃだ!

早く終わらせなきゃ!

足の引っ張り合いはごめんだ!



「俺がトドメをさしてやる!」


また別の冒険者がキメラに向かってきた






「死にたきゃ勝手に死ねばいいっ!!!」


私が叫び、杖をキメラに向かい降ると、祭壇全体に魔法陣が広がり、あたりは光につつまれた


近くにいた冒険者たちは吹き飛ばされ祭壇の外へ追いやられた


もういい!

自分だけが生き残ろうと他者を蹴落としてまで進む奴等はみんな死ねばいい!


みんな死ね!死ね!死ね!死ね!











"ス ベ テ ヲ コ ワ セ"




頭の中に声が聞こえた気がしけど

無我夢中で、私はキメラへ連続攻撃すりる。


突然ドックン!と脈打つように目に激痛が走り油断した隙にキメラの鉤爪が襲いかかった時、魔法陣の光はさらに大きくなり、柱のように空へ伸び、キメラと私を包み込んだ。




「ロミーさん!!!」

「ロミちゃん!!!」

二人の声は私には届いてなかった




ヒュゥゥゥゥゥゥン


ビュゥゥゥゥゥゥン


嵐のような風が吹き荒れる















フワフワするまるで夢の中みたいな。。。

暖かい。。。


光の中で私の身体は宙に浮き、頭がボーとしていた




魔法陣の光はキメラにまとっていた禍々しい魔力を打ち消し、首輪や鎖をも消し去っていた。

浄化???

祭壇の中央に現れたクリスタルの黒いオーラが少しずつ消えていくのも見える

私はキメラのほうにもう一度目をやると

キメラの身体から魔力が抜け、どんどん小さくなっていくのがわかった、

キメラの目が悲しそうに見え死を悟ったのだろうか。。。


キメラの瞳からは涙がポロポロとこぼれ、宙に舞った


とっさに私は小さくなったキメラに手を伸ばし、その身体を抱き寄せた。


何故だろう、"助けてあげたい。"そう思った。









ビュュュュュュュューーーーーー


光の柱の周りでは風が吹き荒れていて、お互いの声がかき消されるほどだった


「中でなにが!?」

「わ私にもわからないわ!」

「でもあの魔法陣、ロミーさんがだしたよね!?」

「そうみえたけど、でも恐らく、暴走しているんだと思うわっ」

「ぼ、暴走!?どうにか出来ないのっ!?」

「あの魔法陣の中はロミちゃんが作り出した"絶対領域"だとすると、治るまで待つしかないの!」




ヒュュューーーーーーーーー




光が収束し風がおさまると、祭壇が姿を現した。


「三日月!あそこ!」


上城さんと桜子さんがグチャグチャになった地形を進み駆け寄り私に問いかける


「ロミちゃん!ロミちゃん!!!!、、、大丈夫気を失っているだけ見たい!」

「よかった。。。」


「う、うぅん」

「ロミーさん!気がついた!?一体何があったの!?」

「め、目が、、、」

「目?大丈夫???」

「待って!?ロミちゃんその抱えてるのって、まさかっ!?」


腕の間からヒョコッと顔を出した小さくなったキメラは猫の姿をしていた。


「さっきのキメラ!?」

「え?この猫がさっきのモンスター!?


驚いた上城さんが尻餅をついて、後ずさりをする


私は、その場で腕を大きく広げ大の字になった


「目があけられないや。。。眩しすぎて激痛だよ。」


「目になんらかの負荷がかかったのかもね、回復するわ!何か目を覆えるもの持ってない?」

「鞄にネックウォーマーなら入ってるわぁ。。。いっつー」

「ま、待ってなんで、二人ともそんなに落ち着いてられるの!?」


まさに心身ともに疲労困憊の私は動けなかった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る