下着をつけてなかったのか!?
若干のトラブル?を回避しなんとか冒険者登録を終え、アークウィッチの職業プレートをうれしそうに眺めているユキノを見ていると苦労したかいもあったものだと思う。
イクスに見せびらかしながら今日のところは一時退散しようと東棟を出ようとしたときだった。
複数の冒険者が俺たちが出るのを防ごうと立ちふさがっている。
荒くれぽい集団に、女性が多めの集団だがけばそうな化粧臭さが鼻につく、他にも3組ほどが獲物を狙うような鋭い目を俺に向けていた。
「待ちなよ、俺たちにその子を渡せ。てめえなんぞじゃ使いこなせえに決まってる」
「女同士仲良くやりましょうよ、私たちのパーティにこない?たんまり稼がせてあげるわ」
「こいつらみたいなパーティーじゃなく、俺たちが鍛えてやるってば!」
お察しの通り、アークウィッチという上級魔法職に偽装ではあるが二属性使い ディメントと判明したユキノへの猛烈なスカウト合戦であった。
「いや、レイジと一緒がいい」うんうん、うれしいこと言ってくれるじゃないかユキノ。
「はぁ?てめえの職はなんだ!?こっちは剣士やプリーストが揃ってんだぞ?」
「俺は無適正だ」
「「「はぁ??」」」・・・・『『『ぎゃははははははは!!ヴァイスだってよぉ!!本当にいたのかよおお!!!』』』
案の定バカ騒ぎが始まり、いらっとしたイクスとユキノが彼らを押しのけて通ろうとするが絶対に通さないとばかりに道を塞ぐ。
「こんな無能より俺たちといたほうがいいに決まってんだろうが!?」
「ヴァイスなんて無能といたらあなたにまで無能がうつっちゃうわよぉ」
あっまずい・・・・ユキノの気配が妙なことになってきている。
「あんたら・・・・レイジがどんだけ私のために命がけで戦ってくれたかも知りもしないで勝手なことをペラペラペラペラって、うざい!!きもい!それにくさいのよ!!」
おお~!!感動!パパ感動しちゃったよ!!
パパじゃないけど泣いちゃいそう!
「ああん?なんだこのクソガキ!?先輩に向かって舐めた口ききやがって」
「臭いですって?こいつらと一緒にしないでよ、ちょっとかわいいからって調子にのっちゃってさあ」
「これ以上揉め事が大きくなる前にこちらへ渡せ、さもないとヴァイスなんぞこの場で捻りつぶしてやるぞ」
”マスター、全自動射撃にて制圧準備完了”「おい待てイクス!それにユキノも少し落ち着け」
「無能は黙ってろ!!!」
東棟の入り口が騒然となってきている。女性職員たちも何事かと関わりたくないオーラを出しまくっていたが・・・・・
「なんだいこの騒ぎは?中に入れないんでどいてくれないかな?」
よっと外からかき分けるようにやってきたのは・・・・・
「あれ?レイジくんじゃないか! それに愛しのイクスさんってあれこの騒ぎはまさか君たち?」
「違うっての、つーかなんでファルベリオスが?ってそうか揉め事解決人の仕事できたんだな?」
「ちょっと待って。なんだいその不名誉な称号は・・・・君たち、邪魔だから早く解散解散」
「おい、あいつはBクラスのルーンナイト、ファルベリオスだぜ?なんであんな野郎がここにいやがるんだ!」
こそこそっと大方の事情を話すと、やれやれと呆れながらファルベリオスは彼らに向き合った。
「何よりそこのユキノちゃんがレイジくんたちと一緒にいたいって意思表示をはっきりしているじゃないか。この状態で無理やりユキノちゃんを連れていったら君らギルド規約違反で衛兵に引き渡されるけどいいの?」
「「「「・・・・・・」」」」
さすがだ!
「さすがは揉め事解決人!」
「ねえそれって褒めてないから・・・・ってあらあら解散するのかい?気を付けるんだよ」
まったく動じる気配のないファルベリオスにユキノはぺこりと頭を下げていた。
「レイジ君のお仲間はイクスさんといい、このユキノちゃんといい素敵で優秀な人ばかりだなあ。まあレイジ君の凄さを考えたら当然かもしれないがね」
「まあ助かったよ、ありがとうな、じゃあさようなら揉め事解決人ファルベリオス」
「おいおいつれないじゃないかぁ、せっかく場を収めたというのに」
「それならレディーを待たせるあなたのほうこそつれないんじゃなくてぇ?」
「げげ!サファイアお前だったのか!」
「そんなに照れなくてもいいじゃないの、いけずぅ」
今のうちだと耳打ちした俺たちはそそくさ東棟を抜け出し広場まで逃げてきた。
途中あの冒険者連中から舌打ちをされたが、相手をする必要もない。
「ユキノ、後で詳しく説明してもらうぞ」
「げげ~、わ、わかったよう」
「レイジ様、現状このまま街に出ると面倒なのであいつらに滞在先を知られないことが優先されると進言します。ですが邪魔ということであれば即刻射殺してまいりますが」
「待て待て待て、どうしてお前はそういっつも射殺すんだ。ここでそんなことしたらもっと大きな騒ぎに巻き込まれるんだぞ?分かったか?」
「データ修正・・・・対応をより平和的に対応するよう行動プログラムに修正を加えました」
なんだか冒険者登録だけでやたら疲れてしまった。
本当ならユキノの装備を見繕っておきたかったが、バーミリオン商会でおすすめの店を聞いてから出直すとするか。
イクスに尾行を警戒させながら俺とユキノはせっかくなので食材や生活用品などを買いそろえることにする。
不足気味だった下着類を買うときになり、ユキノが多めに金をくれと言ってきた。
「そうか材質悪いと大変だもんな」
「えっと、そういうのもあるんだけどね・・・・そのイクスがね」
もじもじとしながらはっきりしない。
「ん?どうした?」
「えっとね、イクスが下着をつけないんで私としてもそのせめて下着はつけようって説得はしてるんだけどね」
おい、今イクスは下着つけてないのか!!?
あのプロポーションでノー・・・・・いや待て、彼女の場合はアンドロイドだからそういうのは?
「何興奮してんの?レイジきもい」「し、してねえし!って分からないからこれな、これで好きなの買ってきなさい!」
1万レーネほど渡してユキノはイクスを連れて女性下着ショップに入っていく。
こういうときの男子の待ち時間って異様に長いよね。
って童貞だから分かるわけあるかあああ!!!
っと、近くの商店で目についたのは様々な香辛料や調味料の数々。これは!!
そろえておいて損はないと思ったので、イクスに通信を入れておく。
ナツメグ系にシナモン系、ガラムマサラぽい風味のものまである。
ようし、ここはペッパー系や岩塩なんかも多めに仕入れておこう。
ユキノが喜ぶところも見たいしな・・・・イクスが味を楽しめればもっとよかったのに。
ふと感傷に浸るも、パン用の発酵菌がついた木の実の入った瓶や少し高いが砂糖も仕入れてみる。
後でメアリーに甘いお菓子でも作ってあげたいと思ったからだ。
”マスター、ただいま買い物が終わり店から出るところです”
するとユキノが大きな袋を抱えてにんまりとしている。
「ねえ、これ魔・・・・・なんでもない」
きっと魔法の袋に入れてくれと頼もうとしたのだろう。だがしまうのは部屋に戻ってからという約束をしたのを思い出したのだろう。
「一度部屋に戻ってからケインさんにでもユキノ装備がそろいそうな店を紹介してもらおうか」
「うん」
「それが良いでしょう」
◇
部屋に戻った後、ユキノがイクスに無理やり下着を身につけさせていたからきっとあのスリットの下は・・・・・だったのだ。
買ってきた果実水を俺とユキノが飲みながら、どういうことかを問いただすモードに移行する。
「さてつけたのかつけてなかったのか!!!じゃなくて説明してもらおうかユキノ」
「ちょっと怖いからやめてよ・・・・って忘れてただけなの」
「あのエレメントボードをチェックしましたが、当初は破損などしていませんでした。つまり、ユキノは六属性使いヘキサメントということで間違いありませんね?」
「う、うん・・・・実はそうだったみたい・・・えへへ」
「えへへ、じゃねえぞ。というかさ、それがどれだけすごいことなのか、俺は良く知らないんだよ」
”
データベースを照合の結果、属性持ちという一つの基準についての記載がありましたのでここに紹介いたします。
相性の良い属性、つまりその属性適正を所持していると、該当属性の呪文効果が通常の2,5倍以上の効果を得られるという研究結果があるようです。
効果範囲が拡大されることはもちろんのこと、破壊系呪文であればその効果はさらに上がるようです。ユキノの魔法力でヘキサメントスペルであれば取り合いに発展してもおかしくはありません。
また消費魔力も軽減されるというデータも少なからずあるようです。
属性保有率については母数算出に疑問があるため、信用性の高いデータではありませんが魔法使い10人中、単体属性持ちモノメントの発生確率は一人ないし二人です。
さらに二属性持ちになると発生確率は魔法使い1000人中 3,4人ほどになるでしょう。
”
◇
翌日、デュランシルトから徒歩30分。
多種多様な低級モンスターが出るため、バランスの取れたパーティー構成を求められるという微妙なダンジョンに俺たちは向かった。
ゲルミアダンジョン。
三層まで行けば研磨剤の材料になるカリマ石という白色石が採れるが重く持ち運びも難しく、しかも魔法職が必須というクソ設定のため不人気ここに極まるといったダンジョンになっている。
イクスが仕入れてきたダンジョンガイドvol3342号を参考に、俺はここが当たりだと判断した。
3人での戦闘フォーメーションを確認し戦える体制を整えておきたいという気持ちもあったからだ。
ダンジョントライは、入り口の番兵に登山計画書のようなものを提出する。パーティー構成と帰宅予定時間と救出保険の有無などだ。
当日帰還で保険なし、そして通行料を一人300レーネ支払う。
しばらく階段を下ると、アーチ状のホールに出る。苔や蔦が絡み天上や壁からは明かりがいらない程度の光が出ている?
「デュランシルト周辺のダンジョンでは、壁や天井などに発光する建材が使われていることが多く、照明器具を必要としないダンジョンが多いようです」
「へぇうちのお城もこんな感じだったかも」
「そうかお前のパパ、王様だもんな」
ユキノは先日買った初級用の魔導杖と魔法防御力が強化された白とピンク地のローブを着込んでいる。気に入っているようで汚れるのが嫌だと気にしてばかりいる。
「ユキノ、洗浄魔法を覚えれば汚れてもすぐに洗えますからがんばって魔導書を買えるようにお金を貯めましょう」
「それいいね!」
フェイクで背負ってきたリュックを魔法のバッグにしまうと、俺たちはゆっくりと歩き続ける。目標は三層の研磨剤採集だ。
「イクス、警戒任せっきりで悪いな、一応俺たちもさぼらず気配を読む訓練をするぞユキノ」
「うん、魔力とオルナの流れは見逃さないようにしてる」
「100m先左方向」
いつも思うがカーナビ見たいだな。
慎重に進み始めると、イクスの指定した方向からうねうねとした植物が現れる。
「イビルプラントです。酸性の消化液を吐きかけるので注意を」
「ここは私の出番でいいわねレイジ?」
「フォローはする、思い切りやってみろ」
すっと前に出たユキノは距離にして30mほど先にいるイビルプラント4匹へターゲットを定める。
「インペリアルマジック! フレイムアロー!!」
シュシュシュとユキノの周囲に出現した灼熱の炎で構成された矢がぱっと見で10本ほど!?
「シュート!!」
それはまさにオーバーキル。
一本目が奇怪に消化液を滴らせる花弁に命中したとたん、蒸発し吹き飛んでしまっている。
それが10数本・・・4匹のイビルプラントを炭化するまで焼き尽くし周囲の壁を真っ黒に焼け焦がしたのだった。
「・・・・・」
「計測データの分析に入ります」
「あれ?この杖もうひびが入っちゃってる?だから呪文がうまく発動しなかったのかな」
「おい、今うまく発動しなかったって言った?ねえ?」
こくりと頷くとまるで不思議そうに呟くのだ。
「いつもなら15本は出てもっと矢が収束するんだけど、この杖相性が悪いのかな?」
「分析結果を報告します。ユキノが詠唱省略による超高速呪文発動に杖が対応できず破損したものと推測されます」
「・・・・・・杖なしでもいい?」
「うん、そのほうが楽」
「あ、はい、すいませんそのお願いします」
「まかせて~」
とんでもない娘を預かってしまったかもしれない。
だが、そのとんでもないはまた別の意味で俺たちを悩ませることになっていた。
・
・
・
新たに出現した動く魔法の呪物、ストーンパペットが数体現れた時だった。
「インペリアルユニオンマジック! ウォーターショット!」
恐らく圧縮した水の弾丸がストーンパペットという少林寺の木人を石にしたような魔物を弾き砕くのだと想像していた。
だが、属性持ちが後先考えずに呪文を放つとどうなるのかを目の当たりにした瞬間だった。
ダムの放水にも似た高水圧の放水によりストーンパペットは壁に激突し粉々になるが、その余波による水流で俺とイクス、そして術者本人すら巻き込まれてしまう。
かろうじてイクスがワイヤーを射出し俺とユキノを救出してくれたからよかったものの、一歩間違えば大怪我どころではすまなかったレベルだ。
「ユキノ、あなたの魔力放出量は過剰すぎるようです。コントロールはできませんか?」
「・・・・お城では、魔法は威力があってなんぼ!って教わってたから・・・・」
おいおい、さすがは魔族の王族だな、教育方針がぶっ飛んでやがる。
この後も、インペリアルユニオンという特殊な呪文強化が当たり前になっていたのでこれを中止させ、通常での呪文を撃たせようとしても威力が高すぎてパーティーメンバーを巻き込んでしまうほどだ。
「これって低位呪文なんだよな?」
「うん、各属性の基本攻撃呪文だよ」
「・・・・イクス、ユキノが呪文威力をコントロールするための方法を探してくれ」
「イエス、マイマスター、これよりマルチタスクによる分析作業に入ります」
「あのね、私の魔法ってそんなにやばいかな」
「そうだな、いろいろな意味でやばい」
「げげ~やばいのかぁ!?」
しょんぼりと肩を落とすユキノにタオルをかけてやると、頭を拭きながら考え込んでいる。
「まず第一の理由。仲間を巻き込んでしまうようじゃパーティーを組んでいる意味がないからな」
「うぅ~たしかに」
「第二の理由は、お前の戦闘スタイルが単体で大勢を打ち払うことに特化しているというよりそれ以外を想定していないためだ」
「ああ!そうかも!」
「王族がそういう戦いをするのが伝統なのかもしれないが、お前は一人で戦うつもりか?仲間と一緒に戦うならその時その状況で最も適切な呪文と威力をコントロールする術を身に着ける必要がある」
「難しそう」
頭を撫でながらイクスの分析に期待しようと声をかける。
「嫌な気配がする、これはアンデッドかもしれないぞ。少し離れて見ていろユキノ」
「え?私戦わなくていいの?」
「ああ、世の中にはこういう変わった戦い方をする奴がいるってことを見ておくのも勉強になるぞ。イクスもだ」
「イエスマイマスター!」
正面通路から姿を現したのは、朽ちた死体ゾンビが10数体に武器を手にしたスケルトンと半透明の戦士であるゴースト、それにひと際大きな体をした死霊騎士が数体。
一般的なEランク冒険者なら逃走を決めこむ敵戦力だろうし、このダンジョンにおいてもイレギュラーな強敵になるはずだ。
「ナウマク サンマンダボダナン バヤベイ ソワカ! 風天神 風刃破!」
印を結び風天神の真言を唱えると、圧縮された空気が刃となって前方を埋め尽くしているゾンビたちを切り裂いてく。
手足を、胴体を切断されたゾンビが崩れ落ちる中、それを乗り越えてくるスケルトンたちを迎え打とうと俺は全身の気を練って奴らへと放つ。
「金剛式発勁・・・破っ!!!」
練り上げた気が密集していたスケルトンに直撃し、数体まとめて吹き飛ばす。バラバラに砕け折れた骨片がカラカラと天上や床に転がっていく。
さらには半透明のゴーストたちがそのアストラルボディーを活かしすり抜けながら俺の生気を吸い尽くそうと突進してくる。
「オン キリキリバザラバジリホラ マンダマンダ ウンハッタ!」
両手を蝶のように交差させながら唱えた真言が目の前で発動する。
「レイジ危ない!」
呪文発動をしようとしたユキノをイクスが制止する。
「見ていなさい、マスターなら大丈夫です」
半透明のゴーストたちは俺の目の前に生じた淡い黄金色の結界の前に阻まれ、呻きと憎悪の叫びを漏らしている。
奥には死霊騎士が様子を伺い、黒紫色の目を不気味に光らせている。
「臨 兵 闘 者 皆 陣 烈 在 前!」
結界越しに暴れまわっていたゴーストに九字方陣が炸裂する。
光によって浄化し塵となって消えていくゴーストたちだがその余波でまだ動きのあったゾンビたちも蒸発していく。
この動きを見て、死霊騎士たちが錆びた剣を抜き襲い掛かってくる。
「レイジって呪文が使えるの!?」
ユキノは次々と繰り出される俺の術に戸惑い気味だが、そんなことを知る由もない俺は目の前の死霊騎士相手に愛刀を抜く。
騎士は3体。
片手剣と盾やバスタードソード、細いレイピアを構え俺を取り囲もうとしている。
じりじりと取り囲もうとした死霊騎士たちの擦れる鎧の不協和音が耳に残る。
ガシャン!3体がタイミングをずらし斬りかかってきた。
これが生前彼らが得意としていた攻撃方法なのだろう。
レイピアの突き、バスタードソードの横なぎ、片手剣の右袈裟切りが 繰り出されるであろう流れだったはず。
だがレイピアは切り折られ、バスタードソードは返す刀で頭から両断され、素早く足さばきでぐるりと回りこむと右袈裟を放ったがら空きの背中から胴を両断する。
剣を失った死霊騎士がタックルを仕掛けてくるが、その時にはもう奴は頭から股座までを真っ二つにされ崩れ落ちていた。
すっと後方に下がると、奴らの殲滅をイクスから聞きようやく刀を収める。
「・・・・レイジって呪文も剣も使えるんだ!?すごい!」
「ユキノ、俺はすごいと言ってほしくてこういう戦いをしたんじゃないのは分かるな?」
「えっと・・・・」
「イクス、説明してやってくれ。自分じゃちょっと恥ずかしい」
「よいですかユキノ。マスターは後方のあなたや私に被害が出ないよう、狭い空間で効果を発揮する風の刃を使い、結界で足止めしつつ確実に敵を葬りました。しかも攻撃範囲が恐ろしいまでに限定されているのです」
「ほんとうだ!! レイジすごい!」
やばい自分で説明するより恥ずかしい・・・・
「マスター・・・・」
どこかイクスがぼーっとしているようにも見えるが、きっとマルチタスクで負荷がかかっているんだろうな。
「ユキノ、効果を限定し威力を絞ることができれば臨機応変に対応できる事案が増えてくる。例えば乱戦になったときにさっきの水呪文ぶちかましたらどうなる?」
「あっ!!!」
ことの意味が分かり、ひどくしょげてしまったユキノの頭を撫でる。
「威力が強いというのは誇っていいお前の長所だ。だが大切な人をパパやママ、姉たちを守りたいなら針の穴を通すような制御を身に着けてみろ。いいか?力は誰かを傷つけるために使うもんじゃない、誰かを守るために使うべきものなんだ」
「・・・・!!!」
この日から、ユキノは魔法という才能を改めて磨きなおすことを決意したのだった。
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