第8章 武器(剣2)
#41アトゥムスとの話
マーレ迷宮では巨大なサメ型の魔物であるメガロドンとの戦闘を終えて、無事に素材そして魔石を回収することができた。今回の目的は迷宮の攻略ではなく魔石集めであり、これで目的を達成したので帰路についた。
ライナは聖都市でお別れし、ハヤトとアトゥムスは魔剣作製の為にアプレルの町に戻った。
■■■
魔石を魔結晶に加工する作業はハヤトには出来ないのでヒソネとエルラーのアドバイスの元、魔力の扱いに一番長けているアトゥムスにも協力してもらう。
作業の間に、どういった剣を作るかイメージを固めるためにアトゥムスに質問をしていく。
「アトゥムスさんはどんな剣が欲しいのですか?」
「そうだね……幾つもあるけど、強い剣というのは絶対だね。私の力に負けてしまうようなものなら使い物にならないから」
「そうだライナに聞いたのですが、アトゥムスさんは聖龍騎士だそうですけど聖龍騎士って何なんですか?」
「そうだね……君は龍人のことをどれぐらい知っているかな?」
「全く知りません」
思わぬ答えを即答したからか、アトゥムスが驚く。
「あれ? そうなんだ……有名なお伽噺があるんだけど知らないの?」
この世界では誰でも知っているような物語であるので、不審に思われる。嘘をつくのは苦手というのもあるが、アトゥムスは信頼出来そうなので正直に打ち明けることにする。
「すみません、実は僕は異世界から召喚されたんです」
「またまた……それは冗談だよね?」
「いえ、本当です」
「…………」
思ってもいなかったことだからなのか、考え事をするようにアトゥムスは『それはあり得るのか……いやだが……』と、しばらく呟き何やら答えを導きだす。
「戦闘中に頭を打った?」
憐れみの表情でこちらを見てくる。
「なんでそうなるの! 証拠は無いですが本当ですから。ヒソネやエルラーに聞いてみても良いですからね!」
「ごめんごめん、冗談だよ。そうだったら良いなって思ったから。ということは君が勇者なの?」
「そう……と言いたいところなんですが、そう名乗るのは相応しくないと嫌というほど身に染みています」
「まぁそうなのかな……でもこの事は他の人には言わないようにしないと駄目だよ」
「やはり広まると面倒事に巻き込まれますかね?」
「そうだね、最悪良くて殺されるだろうね」
「良くてころ……冗談ですよね?」
「うーん半分本気で半分冗談だけど、誰に狙われるか分からないから気を付けた方が良いよ」
「分かりました、気を付けます」
勇者を狙うような者がどんな人物なのかは分からないが気を付けなければいけない。
「話を戻しますけど龍人とは何なんですか?」
龍に関する亜人であることは分かるが、詳細までは分からない。それにお伽噺の内容も気になる。
「そうだったね……それならお伽噺を聞いてもらった方がいいかも知れないね」
ということでお伽噺の内容を教えてもらった。
■■■
お伽噺の内容は龍そして龍人と人の関わりの経緯、そして国教の成り立ちについてだった。
「龍人は人に戦う術を教え、神の使いとされているんですね」
「そうだけどお伽噺にあるように人との交流は一切無くなって、今の教皇など一部の人しか龍、そして龍人と会うことが出来なかったんだよ」
「出来なかったということは今は出来るんですか?」
「物語の続きになる訳ではないけど、その後先代の勇者であるユウキが龍の里にやって来たことがあってね。龍人の抱えていた課題の解決策を教えてくれただけでなく、龍にとっても脅威になっていた前の魔王をユウキが倒してくれたんだ。だから龍王はユウキとの約束を守るべく龍人と人の交流を復活させたんだよ」
「まるでそれを見てきたかのように話してますが、もしかして……」
「そうだよ、私はその龍人だ。当時はまだ子供だったけど勇者ユウキにも会ったこもがあるよ」
安易だが龍人で聖騎士なので聖龍騎士なのだろう。
「そうだったんですね、確かに話に聞くユウキと比べられたら自分は勇者に相応しくないですよね……」
勇者すら殺す魔王を倒した勇者と比べられるとガッカリされるのも仕方がない。
「まぁ、人も個性があるからね。君にはユウキには無い発想と知恵が有るじゃないか。君の作り出すアイテムはユウキには作り出せないものだよ」
「そう言って頂けると嬉しいです。なら期待に答えられるように良いものを作らないといけないですね」
「期待しているよ」
こうして会話をしつつアトゥムスにつくる剣のイメージを固め、魔結晶の作製を続けていった。
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