第4章 ギルド依頼

#21緊急クエスト


 商人としてというより生産職として実績を積み利益を生み出したので、ある程度であれば自分にお金を投資してくれることになった。


 ということでまずは量産型の剣ではなく、こだわりを詰め込んだ逸品を完成させたいのだが……。


■■■


「アダムスさんは居ますか!?」


 突然商会の扉が開き、大声が響き渡る。


 一番近くにいるのが自分だということでハヤトが応対をする。


「えっとすみません、どなたですか?」


「失礼しました、私はギルド[リンクス]の職員のヒヨスといいます。急ぎラーカス商会様にお願いしたいことがあるのですがアダムスさんはどちらにいらっしゃいますでしょうか?」


 内のどこにいるか分からない商会長ではなくアダムスを指名してくるあたり、この町ではラーカス商会の実質的なトップがアダムスだと知られているのだろう。


「案内しますので着いてきてください。それにしても何があったのですか?」


「実はワーウルフが大量発生しまして……。詳しくはアダムスさんにお会いしてから話させていただきます」


■■■


 ということで説明してもらった話によると、近くの森にワーウルフが大量に発生し隣接する町への通行が出来なくなっているそうだ。


 そこで大規模な討伐依頼を町で発行したのだが、武器と回復薬の需要が急増し供給が追い付かなくなっているらしい。


 そこで新商品で勢いにのっていて、二つとも量産できるラーカス商会を頼りにしに来たらしい。


「アダムスさん、是非とも協力しましょう!」


 勇者として活躍できないが、こういう場面で少しでも力にはなりたい。


「ええもちろんです。直ぐに準備を進めましょう」


「ありがとうございます! 因みにそちらの方はどなたなのでしょうか? 以前こちらの商会を尋ねた時にはお見掛けしませんでしたが?」


「あー、僕は……」


 召喚された者ですと言って良いものかどうなのか分からないのでアダムスの方に視線を送る。


「彼は他の町の取引先から預かってきた知り合いの子供ですよ」


「ええ、そうです。つい最近この商会で働かせていただくことになった隼人といいます」


 変な軋轢を生みかねないからかアダムスが誤魔化す選択をとったので、それに乗っかることにした。


「そうだったのですね。ハヤトさんですか、ギルドにはもう登録されているのですか?」


「ええまだ依頼を受けたことがないのでGランクなのですがね」


「では今回の緊急クエストを受けてみませんか?」


「でも……」


 戦うことは苦手だということが始めてのワーウルフとの戦闘で嫌と言うほど分かったし、仕事を放っておいて良いのか分からない。


「いいんじゃないかな。たまには現場に出て商品が使われているのを見ることも仕事の内だ」


「ほら、アダムスさんもこう言ってることだし」


「そうですね、ではお願いします。ですがアダムスさん、一人では不安なのでエルラーを連れていっても良いですか?」


「そうだな、きちんと働くのであれば構わん。ヒソネも付いていかせるから」


 ということで始めてのギルドの依頼を受注、それもワーウルフの討伐依頼というリベンジマッチをすることになった。



―――――――――――――――――――――――――――

ギルド依頼:[ワーウルフ]の討伐

[ランク:C][期限:緊急]


[ワーウルフ]が大量発生し近隣の町への移動が危険に晒されているので、討伐をお願いしたい。


ワーウルフは集団で行動するので、ソロで戦う場合は背後に気を付けること。


[ワーウルフの魔石]の数で討伐数を計算するので必ず持ち帰って下さい。


討伐制限無し。

魔石、ワーウルフの素材は割増での買い取りを行います。


―――――――――――――――――――――――――――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る