#32 思案する
今のままでは聖騎士団長が要求した期限までに指定の数量を納めることが出来ないということで、ハヤトは新たな回復薬の作製方法を思案することになった。
今回はお金を自由に使えるということなので、ヒソネと共に色々と試してみることにした。
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まず試したのは素材の変更だ。
今まで使用してきた薬草に変えて種類、品質を変えていく。
スリスリ作業員は確保されているので同時進行で進めていくことで、なるべく時間をかけずに試した結果、ランクの高い薬草を使うことで錬金スキルが低くてもある程度の品質は確保することが出来た。
これで錬金スキルがCでも安定した品質の丸薬型の回復薬を作ることが出来るようになったので、アダムスに報告し作製量を増やして貰うがこれだけではまだ目標の数量を確保するには至らないし、赤字が膨らむことになる。
最優先すべきことはまず数量を確保することだが、それだけでは商会の負担になるので別の手段も見つけ出さなければいけない。
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「何かいいアイデアはないかな?」
「そうですね、とびっきり大きな鍋を用意して一度に煮詰めてしまうのはどうです?」
「それは考えたんだけど、鍋の中が均一にならないから中々上手くいかないんだよ。上手く混ぜられないからばらつきがが出来てしまうというか成分が偏るんだよな」
この世界に撹拌機が有るわけではないので、量を多くすればそれだけ手が届かない部分が出てきて品質がばらついてしまう。
「そこは魔法というか魔道具で何とかしましょうよ」
「えっ?」
「だから、鍋のなかで撹拌できるような魔道具を取り付けておけば可能なのでは無いですか?」
「そうか! この世界には魔法があった!」
知恵や工夫だけで何とかしようと考えていたが、機械は無くともチート技術があることを忘れていた。自分が使えないということもあるが。
「なら善は急げだ! 俺はエルラーに大きな鍋を作って貰うよう言ってくるから、ヒソネは魔石の準備をしてくれ!」
「分かりました! なるべく多くの魔石を探してきます!」
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「エルラー!」
「おおハヤト! 回復薬は順調か?」
「いやそれなんだが、ま……」
エルラーに大きな鍋を作ってもらおうと伝える前に横やりが入り、手を掴まれる。
「ハヤト君! これは面白いね!」
どうやらアトゥムスが魔剣に感動したらしく、目が輝いている。
「ちょっと待ってください! こっちが急ぎの用件なので!」
「団長が話していた回復薬のことかい? そんなのはほっとけばいいじゃないか。それよりこの魔剣を自分用に作ってくれないかい?」
「分かりましたから、その話は後にしてください。こっちは商会の今後が掛かっているんですから!」
アトゥムスに勢いで約束をさせられるもハヤトはそれどころではないので、かなり重要な話なのだが深くは考えていない。
「分かった、約束したからね。用事が終わったら呼んでくれよ」
「話を戻すがエルラーに急いで作ってもらいたい物があるんだ!」
ということで大量に一度に制作すること、鍋の中に魔道具を設置して撹拌させるアイデアを伝える。
「わかった、直ぐに仕上げる。だけどそんなに大きかったら抽出した薬草を入れ換えたり、回復薬を取り出すのが大変じゃないか?」
「そうだな……それなら大きさは中ぐらいにして抽出回数分の段差を作り、下にどんどん排出しながらつくれるようにしたらどうだろうか? それなら次の作業に移っている間に前の鍋は準備できるから効率が良くなるだろ?」
「なら複数の鍋がいるな、それに排出するための機構か……分かった直ぐに作るから魔道具の準備を頼む!」
「ああ、よろしく頼むよ!」
■■■
ヒソネがギルドから大量の魔石を仕入れてきたので、魔結晶化を進める。
魔石の魔結晶化は魔力を扱えなければ出来ないので、ハヤトは出来上がった魔結晶に同時進行で陣と文字を魔結晶刻んでいく。
魔道具は難しい魔方陣はつくれないため、商会にいる人たちの知識で作製出来るもので、とりあえずは渦を生み出し鍋の中の液体を撹拌できるものをつくる。
後は上手くいくことを願って、皆の準備が揃うまでひたすら己の準備を進めるのであった。
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