第5章 出逢い

#26 拡大する商会


 相変わらずのスキル外スキル[何もない所で転ける]という、『男のドジって誰得だよ!』と突っ込みたいこともありながら初めて魔物を討伐したハヤト。


 これまでの実績の積み上げでお金に余裕が出来たので、いよいよこだわりの剣をと行きたいところだが、まずは量産型の剣のリサイクル化計画を進める。


■■■


 まずはアダムスに話を通すべきだということで尋ねたのだが、既にヒソネが報告していて準備は着々と進んでいた。


「仕事が早いですね」


「それはお金の匂いがすることですし、他の人が考え出さないとも限らないですからな。ほらこれがその内容だ」


 時は金なり、善は急げといった所だが何とも手際が良い。既に細部まで詰めているとは。


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ラーカス商会製、量産剣の修復


我々ラーカス商会が販売している[鋼の剣(+アダマンタイト)]の修復を受け付けます。


金貨1枚でお持ちの剣をその場で新品同然の剣と取り換えます!

(申し出があれば、ご自身の量産剣を修復し返却します。その場合は数日かかる場合があります)


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「金貨1枚で良いんですか? 元が金貨5枚なのに金貨1枚で新品同然にしてたら流石に利益が出ないのではないですか?」


「そうかも知れんな」


「なら……」


「いやこれは宣伝と信頼を得るためのモノとして捉えれば全く問題ないのだよ」


「どういうことですか?」


「量産型の剣はあくまで初心者から中級そして上級への架け橋になる剣という位置付けだ。そして我々が最も売りたいのは利益率が高い上級者向けの剣だ。だが上級者向けの剣は高く、安い買い物ではないから我々のような地方の商会の剣を進んで買おうとはしてもらえないんだ」


「つまり量産型の剣で信用を得て、ラーカス商会のリピーターを獲得し、将来的に上級の剣を買って貰えるようにしたいということですね」


「ああ、だからこそ金貨1枚というのはほとんど経費だけなのだが、宣伝効果を考えると全く問題ないのだ」


 まぁ確かに子供の時から使い続けているメーカーの道具を使い続けるスポーツ選手は多いし、刷り込みと慣れというのは重要だろう。


「でもこれ以上売れても内の商会だけでは人手が足りないでしょう?」


「それは大丈夫だ。エギルさんの所の製錬所に掛け合って鍛冶場を隣接させてもらったから準備は出来てる」


「おお、ついにそこまで投資出来るように!」


「ええ、お陰様で回復薬の増産も決まってるよ。それに今のままでは人手が足りなさすぎて、コスタが呪文のようにスリスリスリスリ言ってるのを聞いたらな」


「あー、それは是非とも早くなんとかしてあげてください」


 売れているということはそれだけスリスリしなければいけないということで、作製方法にスリスリが必要なら仕方がない。


 ソーラスが手伝うようになったとは言っても、スリスリの量が倍増以上に増えたのだからひたすらスリスリしている。


 たまに手伝うこともあるのだが、その量が以前とは比べ物にならなかったので自分は一日で音を上げてしまったぐらいだ。


■■■


 徐々に規模が拡大していく商会にギルドや中央の教会そして聖騎士団が目をつけない訳はないのだがそれはもう少し後の話である。

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