#40 メガロドン


 マーレ迷宮の中でメガロドンと対峙しているのだが、想像しているより遥かにデカい魔物だったので面を食らったハヤトだが、アトゥムスは無事に倒せるのだろうか?


■■■


「アトゥムスさん! 大丈夫ですなのですか!?」


「うーん、分かんない!」


「ええ!」


 会話をしているとメガロドンの突進攻撃がアトゥムスを襲うが、メガロドンの体で隠れてどうなったか分からない。


 どうしようかと思っているとライナが声を掛けてくる。


「戦ったことない相手なんだから倒せるかどうか分からなくて当然でしょ。ほら私たちは邪魔にならないように離れておくわよ」


「わ、分かった」


 後ろを振り向いて距離をとろうとした瞬間にメガロドンの声が響き渡る。


「ギュアアアアア!!!」


 アトゥムスの攻撃がメガロドンにダメージを与えたのだ。


「ほら! ぼさっとしてないで離れるよ!」


 ライナに再度促されて距離をとる。すると元いた場所の地形がすぐに原形を留めないぐらいに破壊される。


「や、ヤバかったな」


「そんなこと言ってる場合じゃないわよ!」


 気付くと周りが再び水生の魔物で囲まれている。先程の鳴き声はどうやら仲間を呼び寄せるものだったみたいだ。


 アトゥムスは今、こちらを気にしている余裕が無いので自分達で何とかするしかない。


「ハヤト、私からあんまり離れないでね!」


 年下の女の子に守られるなんて、ホントに召喚された最初の頃の意気込みが凄く恥ずかしい。だが背に腹は変えられない。


「分かった!」


 ライナが気付かない攻撃も必死に盾で防ぎながら必死に戦う。


 ライナだけに任せているとどうしても手数が足らないので、ハヤトも剣を抜き必死に魔物を倒す。


 ハヤトにとっては、『これぞまさに死闘』と思う戦いで命からがらに戦っているつもりなのだが、ライナはアトゥムスが心配で横目で確認しながら戦っている。だからこそ隙が出来てそれをハヤトが守っているのだが、それにも気付かないぐらい集中力が散漫になっている。


 遂には前からの攻撃にすら気付いていないので、ハヤトが前に出て守る。


「ライナ危ない! ちゃんと前を見て!」


「すみません。まさかハヤトさんに救われるとは思っていませんでした……」


「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ。まずは目の前の魔物を倒すことに集中して! でないとアトゥムスも戦いに集中できないよ」


「そうでした。では早く倒してしまいましょう」


 アトゥムスが心配だというの半分、戦いを見たいというのが半分なのだろう。ライナは焦っているというよりソワソワしている感じだ。


「なら背中は任せて、前に集中してくれ! さぁ次がくるよ!」


 アトゥムスの戦闘が気になる所ではあるが余裕があるわけではないので、まずはひたすら目の前の魔物を倒していく。


■■■


 何とか目の前の魔物を倒しきった所でアトゥムスの方を見ると、既に戦いは終わりを迎えようとしていた。


 見ていない内に何があったのかは分からないが、圧倒的な力が振るわれたのだと思われるほどメガロドンがボロボロになっている。


「ライ……」


 ライナに話しかけようとするも、アトゥムスの一挙手一投足を見逃すまいと真剣な眼差しで見つめているので話し掛けるのを躊躇われる。


 その間にもメガロドンはどんどんと削られ、ボロボロになっていく。


「本当に凄い……」


「当たり前です、アトゥムスさんはたった一人の聖龍騎士なのですから」


「聖龍騎士とは何ですか?」


「それは……あっ! ほらそろそろ終わりますからこの話は後にしましょう」


 話の途中だったが、目の前でゆっくりとメガロドンが倒れていくので、アトゥムスに近づいていき合流した。


■■■


「アトゥムスさん、お疲れ様です!」


「ああライナとハヤトも無事だったんだね。良かった」


 流石のアトゥムスもこちらの様子を伺いながら戦う余裕はなかったみたいだ。


「それにしても本当に一人で倒してしまうなんて凄いですね」


「まぁ何とかね。余裕は無かったさ。それにしても君も頑張ったみたいだね」


 傷だらけになった防具と盾を見て、労をねぎらってくれる。


「そうね。私の思っていたより活躍してくれたわ」


「そう言ってくれると、努力が報われる気がしますね」


「まぁでも君の仕事の本番はここからなんだけどね」


「あっ!」


 魔物の解体作業を一人で行わなければいけない事を忘れていた。


「ほら、簡単なことは手伝うから早く終わらせてしまうよ」


「はい……」



 こうしてメガロドンとの戦闘を終えた3人は解体作業を始め、ハヤトもくたくたで傷だらけの体に鞭を打って何とか作業を完遂し、魔石を回収することに成功したのであった。

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