#39 マーレ迷宮
ひたすらに魔物と戦った後、メイの町で体力を回復させマーレ迷宮に向かうことになった。
倒した魔物から得た魔石以外の素材は全て村で売却し、かわりに普通の回復薬いわゆるポーションを購入しておいた。
■■■
マーレ迷宮は最初のエリアはただの洞窟なのだが、暫く進むと潮の香りが漂う。ここは海が支配する迷宮のようだ。幸いにも足場は水で満たされている訳ではないので移動するのに負担は少ないが、滑りやすくなっているので既に何度も転けてしまった。
「ちょっ、もう少しゆっくり歩きませんか?」
「駄目だよ、それだと直ぐに魔物に気付かれかねないからね。こうして魔物の警戒範囲を避けるように移動しないと戦闘になるよ」
アトゥムスが持っている索敵スキル[気配察知]や[聞き耳]で事前に魔物の位置を把握して、戦闘を避けながら移動していることは分かるが、このままではたんこぶが無限に増えてしまう。
「せめて一回休憩出来ないですか?」
ゲームなどでは安全地帯があるので、何処かにあるのではないか期待して問う。
「あのねぇ、休憩するには何処かに拠点を作って仲間が休んでいる内は他の人が見張りをしないと駄目なんだよ。私たちにそんな余裕があると思う?」
「……無いですね」
僅か3人で迷宮に来ているのでそんな余裕は流石に無さそうだ。アトゥムスが一人で見張りをしてくれれば何とかなりそうだが、流石に自らそれを口にだして迷惑を掛ける訳にはいかない。
「まぁもう少し進んだら冒険者ギルドが迷宮内に作った拠点があるから、そこで休ませて貰おう」
「そんな所があるんですか! なら早くそこに行きましょう!」
休憩出来ると分かると自然と足取りが軽くなる。
到着した冒険者ギルドの拠点は洞穴の中に作られているみたいなのだが、中に入るには金貨5枚が必要だと言われる。流石に予想外の値段なので入ることを躊躇い引き返す。
「ちょっと高すぎませんか? ただ休憩するだけなんですよね?」
「まぁこんな場所で不通はゆっくり休めることは無いからね。それに警戒し続けながらここを維持するには冒険者を雇い続けないといけないから仕方ないよ」
「でもこんな値段をポンと払える人なんてあんまりいないでしょ?」
「そうでも無いかな。この迷宮でそれ以上の収入を得られるから村に戻らず効率良く狩りをする為に使う人は多いみたいだよ」
流石に金貨5枚を所持していないしアトゥムスに払ってもらうのも悪いので、仕方なく先に進むことにした。
■■■
時折アトゥムスの索敵範囲から漏れた魔物と戦闘になるも、アトゥムスが一撃のもとに屠るのでほとんど立ち止まることなく進んでいく。
現れる魔物は水辺に生息する魔物類でキラークラブやアンフィシャーク、そしてマザーパグラスなど様々だったが、どれもCランク以下なのでアトゥムスの相手にならない。
マザーパグラスは様々な魔物を近くに引き寄せるヤドカリ型の魔物なので、見つけたら先手必勝で倒した。見つかったのに気付かずに進んでいたらモンスタートレインになってしまうからだ。
そうしてさしたる障害もなく、目的のAランクの魔物がいるというエリアにやって来た。
そこは一面に水が張った場所で、中央に大きな穴がある。そのまわりも所々が水深の深い穴が開いていて、底で繋がっていると思われる。
「ここにAランクの魔物がいるんですか?」
「そうそう、聖騎士団に上がってきている報告書によればここにメガロドンが生息しているみたいだ」
「メガロドンってどんな魔物なんですか?」
「んー、一言で言えば巨大なアンフィシャークだね。あと回りをケルピーが守っているという報告もあるから気を付けてね」
足が生えたサメが巨大になった感じらしい。
「気を付けろって言われても……」
アトゥムスと会話をしながら奥に進んでいくと、まわりからケルピーをはじめ水生物の魔物が現れる。
「たぶんこいつらは斥候みたいやものだから倒したらメガロドンが出てくるぞ! ライナ警戒してくれ」
「はい! ハヤトさん、私から離れないで下さいね」
「わ、わかった」
数が多いのでどうしてもアトゥムス一人で対処しきるには時間が掛かる。なので溢れた魔物がこちらにやって来る。
それでも特訓の成果でライナが守りきれずに襲ってきた魔物の攻撃もしっかりと盾で防ぎ、その魔物をライナがすかさず倒す。
こちらの様子を伺いながら戦っていたアトゥムスは、問題なさそうということを確認して気にせずに戦うようになり直ぐに残りの魔物を倒しきる。
「ライナ、ハヤト! 大丈夫か?」
「はい大丈夫です」
中央の大きな穴を挟んで無事を確認する。
「直ぐにメガロドンが現れるから警戒を続けてくれ!」
アトゥムスがそう言った直後に中央の部分の水面が徐々にせりあがりメガロドンが姿を表す。
「でっ、でかすぎるでしょ!」
想像よりもはるかに大きく、穴のなかにたっているのに天井に余裕で達していて20メートルは優に達していそうだ。
こんな化け物を相手にアトゥムスは本当に一人で倒せるのだろうか……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます