#20 量産型の剣


 製錬所で剣の量産方法を思い付いたハヤトとエルラーはアプレルの町に戻ってきた。

 素でエルラーを置いて帰ってしまったので後で怒られたのだが、気づくと居場所が分からなくなるので仕方がないだろう。


■■■


 アダムスへの報告を終え鍛冶場に戻ってきたハヤトとエルラーはさっそく作業に取り掛かる。


「まずはどうする?」


「とりあえずは只の鉄で作ってみようか」


 ということで出来上がったのはいかにも安上がりな剣だ。


「やっぱりこのままだと駄目だな」


「もう少し鍛え上げればマシにはなるがそれだと意味無いしな……やっぱり何か混ぜて強度をあげる必要があるか」


「ちなみにこの剣のランクってどうなんだ?」


 鑑定スキルを持っていれば、品質がどうなのかが見るだけで分かるのだ。


「ランクはFで、流石に売り物にはならないランクだな」


「まぁそうだよな。なら何を混ぜていけばいい?」


「基本的には炭素を混ぜて鋼を作るのが一般的な強化方法だな。それに焼き入れ方法や焼きなまし方法も工夫すれば何とか……」


 エルラーがぶつぶつと専門的なことも含めて呟いているが、鍛冶は本当に科学的で理路整然としている。


 何となくで作っても上手くはいかないし、素材を活かした作製方法を模索していく必要がある。


 まだ素材を扱いきれていないハヤトは、ここはエルラーに任せることにした。


■■■


 ひたすら普通に剣を作製しながらエルラーが型取りで作る剣に適した鋼の作製を終えるのを待った。


 作られた鋼をハヤトがとりあえず剣の形にするとランクEの剣は出来るようになったのだが、なかなかエルラーが納得いく出来映えのものが出来ない。


 せめてランクDの品質はなければ売り物にはならないそうで、まともに使ってもらいたいのであればランクCまでは品質を向上させたいらしい。


 一回試すのにどうしても時間が掛かるので数週間という期間をかけて調整していった。


 その間にハヤトは剣をひたすら作ったので、作製に掛かる時間も減少しかなり熟練していった。


■■■


「どうだエルラー、今度は上手くいきそうか?」


「それなりには何とかな。だけどこれだと悪い品質の剣も出来ちゃうんだよな」


 平均してランクCの剣を作れるようになって、稀にランクBも作製できるが、どうしてもランクDやEも多く出来てしまうのだ。


「ならベースはこれで、表面を硬い金属でコーティングしてみてはどうかな?」


 ベースは安定してもどうしても安定しない切れ味なら、どうせならメッキしてしまえばという発想だ。


 金属どうしで焼き固めるのでそう簡単には剥がれないし、薄くメッキするだけなので高い金属を使う量も少なく済む。


「それいいな! よし早速やってみよう。どうせならアダマンタイトを使ってみるか」


「ちょっ大丈夫なのか? それかなり高いんじゃないか?」


「どうせなら上を目指したいだろ? まずは成功することを試したいんだよ」


「それもそうだな」


 ということで鋼で出来たベースにアダマンタイトをコーティングして鍛錬して剣を仕上げる。


「出来た……どうだエルラー、鑑定してくれ」


 まだ武器の鑑定スキルを習得出来ていないので、品質がどうなのかはエルラーに確認して貰わなければ分からない。


「こ、これは……いやまずは試し切りをしてみないことには」


「どうしたんだ?」


「いやたぶん間違いだと思うんだよ、俺の鑑定スキルのランクは低いし。だから一回試しに使ってみて確かめようかなと」


「分かった」


 ということで試しに丸太を切ってみると、エルラーがガラクタと言っていた剣と同じかそれ以上の切れ味で一刀両断した。


「ちょっ、これヤバくないか!?」


『凄い!』


「やっぱり見間違いじゃないのか……」


「一体この剣のランクはどれくらいだったんだ?」


「ランクAだ、その辺の剣より遥かに上だ」


「Aって、アダマンタイトだけで作ってそれぐらいなんじゃないのか?」


 エルラーがガラクタのように放置している剣、と言っても素材は一級品の剣はランクBであるからその質の高さが分かる。


「表面がアダマンタイトだからしっかりと鑑定スキルが働いていない可能性もある」


「ちょっとこれはもう少し試してみないと駄目だな」


「そうだな、これがたまたまな可能性もあるし」


 ということでひたすらとアダマンタイトでメッキした鋼の剣を量産していった。


■■■


 100本作った結果としてランクAの剣は稀で、平均してランクBそして悪くてもランクCという出来だった。


「これはいけるんじゃないか!?」


「ああ、製品としては間違いない。だけど値段が汎用品てしては高めになるからアダムスが何というか」


「話は聞きましたよ」


「うわっ! ってヒソネさんいつの間に!」


「結構前からいましたよ、試し切りした時には感想も言ったのに……」


「あれ、そうだったんですか? 全然気づかなかった……」


「まぁ貴方達が報告しにいかないから私がアダムスさんに報告してたんですけど、これなら多分大丈夫ですからきちんと自分達で報告してきてください」


「そうだったんですね、ありがとうございます!」


 ということでアダムスに報告すると、この製法を悪用されると粗悪品が出回る可能性があるからまずはギルド本部に新しい武器として登録して貰うことになった。


 ギルドのアーカイブに登録されることで、鑑定スキルを用いて鑑定すると正確な情報を得られるようになるので粗悪品かどうか見分けることが出来るようになるのだ。


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[鋼の剣(+アダマンタイト):ランクB]

状態:良 効果:攻撃上+

鋼をアダマンタイトでコーティングした剣。

耐久性は劣るが切れ味はアダマンタイトの剣に匹敵する。

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 ギルドに登録を終え数週間がたった頃にアダムスに売れ行きを聞く。


「アダムスさん、剣の売れ行きはどうですか?」


「素晴らしいですね。金貨5枚というBランクの剣としては破格の値段もあって、初心者冒険者が背伸びしても買える値段だから幅広いお客に売れてますよ! これはもっと量産体制を整えなければ」


「それは良かったですがやはり上のランクの人たちには買って貰えないのですか?」


「まぁ高ランクの冒険者からしてらメインの武器にするには心許ないですからね。練習用に買っていってくれる人もいますがほとんど見向きもされないんだ」


「そうですか……」


「ふむ、軟膏タイプも増やした回復薬の売れ行きと合わせて、業績がかなり改善して余裕が出来たから作ってもいいぞ」


「えっ、何をですか?」


「いや何、ある程度お金に余裕が出来たから、高ランクの冒険者に向けた武器も作ってみても良いぞ。ただしあまり無駄遣いはするなよ?」


「はい!」


 ということで量産型の剣は大成功を収め、回復薬の収支と合わせてお金に余裕が出来たということで、高ランクの冒険者に向けた質の高い剣を作ることになった。



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表―――――――――――――――――――

名前:[サトウハヤト]

ランク:[G]

称号:[初心者冒険者]

所属:[リンクス]

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裏―――――――――――――――――――

ステータス

状態:[異常無し]

能力:[体力E][魔力―]

スキル:[職人の心得EX][解体B][加工B][錬金B][薬草鑑定E][鍛冶B]

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